【コラム】将来的にキハ261系0番台のような運行体制はあってはならない
コラム - 2017年05月09日 (火)
久々のコラム記事です。ちょうど前回特急「宗谷」について取り上げたので掲載させていただきます。長々とお付き合いください。
今回はキハ261系0番台を取り上げます。3月のダイヤ改正を機に宗谷本線からキハ183系が撤退したことにより、宗谷本線の主力特急気動車としてより重要な役割を果たすようになりました。使用列車に”スーパー”はつかなくなりましたが、新たに「サロベツ」の運用を担うようになりました。運行体系の再編から2カ月が経過しました。
従来より、キハ183系の苗穂車は予備車両が少なく、車両繰りに苦慮していました。3月ダイヤ改正を機に特急「サロベツ」からキハ183系の撤退や石北特急も運行体系見直しによって1日に使用する車両数を減らしました。
結果、キハ183系における車両不足による影響はダイヤ改正以降は少なくなりましたが、代わりに、キハ261系0番台の負担が増えていることが新たな問題として挙げられます。
キハ261系0番台は全14両が苗穂運転所(札ナホ)に所属しています。全車両がJR北海道の管理下で使用されていますが、そのうち12両が第三セクター「北海道高速鉄道開発」が保有し、2001年に増備された2両のみJR北海道が保有しています。デビューからしばらくの間は、前者と後者で座席の形状が異なっていましたね。
今回の記事で取り上げたい部分はまさにこの点であり、キハ261系0番台の車両不足の根源に当たります。
改めて今回のダイヤ改正における特急列車の運行体制の見直しをみていると、キハ261系0番台のような車両の在り方や運行体制は、今後あってはならないものです。
固定式のヘッドマークや号車表示と設備表示を一体化したサボ式プレートなど、至るところにコストダウンをみてとれる箇所があります。ヘッドマークが固定式という考え方からも、宗谷本線の高速化事業によるキハ261系0番台の登場が「スーパー宗谷」専用車両として登場したことがわかります。
実際に宗谷本線の高速化事業は、JR北海道及び北海道のほか、沿線自治体が出資する第三セクター「北海道高速鉄道開発」が事業主体となっており、高速化事業に出資した沿線自治体の意見を反映させて登場している様子がヘッドマークが固定式という様子からも伝わってきます。
今までのJR北海道は、一年を通じて厳しい気候条件でありながら、その中でも他の交通機関に比べて特に速達性の面で優れていました。「速達性=利用客増加」という方程式が宗谷本線のみならず、どの計画段階からも出ていたことでしょう。
しかし、その方程式は今や過去のものとなり、高速道路の延伸やそれに伴う料金の安い高速バスの勢力拡大、モータリゼーションの進展などで鉄道利用が伸び悩む事態を招き、さらに、数々の車両トラブルによって減速・減便措置がそれらを後押ししました。
また、北海道内における人口減少により、鉄道そのものの利用客が減り続けたのも原因で、車両の老朽化を含め、キハ261系0番台は複数の列車を掛け持ちしなければいけなくなりました。これは、宗谷本線高速化事業を立ち上げた際は考えてもいなかったでしょう。
さらに、当時から資金繰りが困難なため、第三セクターが車両の保有をした結果、少ない車両数で運行することになり、それが高速化事業を実施後20年弱が経過してその問題が顕著に表れているのも事実です。さすがにデビュー当時の車両数が少なすぎたためか、2001年にJR北海道が2両を増備していますが、それでもまだまだ足りない状態です。昨年12月はほぼ連日全ての「スーパー宗谷」が代走運転となり、定期運用が壊滅した状態でした。
このことからも、将来的に特急列車の再編がまだまだ予想される北海道では、将来的な再編に備えた特急車両を開発段階や導入段階から想定していく必要があります。キハ261系0番台の場合、固定式ヘッドマークや半室グリーン車など、他線区での転用を想定しない宗谷本線に特化した設備が仇となり、他の線区で活躍する車両と共用することができず、加えて、同じキハ261系でありながら1000番台との併用ができないため、キハ261系を製造し続けても車両不足の問題が解消されることはありません。
急激な人口変動や利用客の減少が特急の再編という結果になりましたが、今後製造する車両については、製造段階から他線区でも容易に転用することが可能な状態にしておかなければ、北海道における鉄道運営は厳しいです。
具体的な方策としては以下が挙げられます。
【ヘッドマークの固定化は避けるべき】
3月ダイヤ改正後は同一線区での活躍に抑えたこともあり、ヘッドマークへの影響を最小限に抑えていますが、今後も急な人口変動や利用客の変動を考慮すると、他線区でも使用することを想定した車両の投入が必須です。
その点においても、ヘッドマークの固定化は他線区転用には不利な状況であり、採用するにしても、将来的な他線区転用に備えて改造することが可能な状態にしておく必要があります。
【先頭車に特殊な構造は避けるべき(合造など)】
グリーン車設備でなくても、先頭車にさらに重要な設備を持たせてはなりません。
キハ261系0番台の場合、稚内方先頭車キロハ261形200番台がグリーン車と普通車指定席の合造車となっています。グリーン席も9席しかなく、例えば函館方面や帯広方面で使用するには無理があります。先頭車という役割がある以上、簡単に廃車とすることはできず、合造車の構造のまま使用し続けなくてはなりません。閑散路線で使用していくうえで合理化という面では有利ですが、北海道のような急な人口変動や利用客の変動によって特急列車の再編を余儀なくされる場合は、車両を転用する際は大きな欠点となるため、先頭車に特殊な構造を採用するのは避けるべきです。
ここで1つ目のヘッドマークについて取り上げていきたいと思います。
JR東日本やJR西日本のように、北海道は特急列車ごとに独特の形状をもった車両というのが少ない傾向にあります。たとえ、キハ283系とキハ261系の形状が違っていても「スーパー北斗」のように、同じ列車名でありながら異なる車両で運行されていたり、一般の利用客が間違えてしまうようなリスクはゼロではありません。
そのため、他の鉄道会社がヘッドマークの採用を取り止めていく中で、JR北海道は長年にわたってヘッドマークを採用し続けています。最新のJR四国の2600系も一つの車両で複数の列車に充当していく可能性から、ヘッドマークを採用していると思われます。
ローカル線区では乗り間違えはないかもしれませんが、「宗谷」と「サロベツ」のように、固定式の何もローマ字表記等もされていないヘッドマークでは、少なくとも判断がしにくい状況です。ヘッドマークだけで列車を見分ける手段として活用していくにはまだまだ不足した点もありますが、現段階では見分ける判断材料の1つとして重要な役割を果たしています。


写真は3月ダイヤ改正以降のキハ261系0番台のヘッドマークです。固定式でありながら車両は「宗谷」と「サロベツ」との共用のため、ヘッドマークは宗谷地方をイメージするイラストのみのシンプルなデザインとなりました。果たしてこれでよいのでしょうか??
キハ261系0番台は大半の車両が沿線自治体が出資する第三セクターが車両を保有するので、宗谷本線に特化した車両を製造する理由もわからなくもありませんが、今後一定の車両数を確保し、安定した輸送を図るためにも・・・
・JR北海道が一括して車両の保有を行う
・将来的な特急再編を見据えた車両の導入計画を立てる
この2点が重要になります。
昨今になってキハ261系1000番台の数がようやく増え、予備車両も豊富に確保することで車両繰りがしやすい状況になってきました。将来的には、現在4車種ある特急気動車をキハ261系に一本化していく計画があり、ますます車両繰りがしやすくなっていくと思われます。どの線区においても一定の高速化ができるオールマイティなキハ261系を全道線区に投入することで急な特急再編の機会においてもその対応がしやすくなります。加えて、JR北海道が一括して車両を保有することで線区別に特化した車両の製造をする必要がなくなることも強みの1つです。
今回の宗谷本線の特急列車の再編においても、将来的なビジョンを事業の立ち上げる段階、車両の開発及び導入段階からしっかりと検討していく必要性が改めて重要だと感じた次第です。
今回はお金という問題をほぼ抜きにして記事を作成しています。当記事に記載している内容では不足している点もありますが、製造から20年弱が経過して問題が顕著にあらわれている様子をみれば、将来的に複数の列車に使用できる準備を製造段階からしておかなければならないことは言うまでもありません。
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今回はキハ261系0番台を取り上げます。3月のダイヤ改正を機に宗谷本線からキハ183系が撤退したことにより、宗谷本線の主力特急気動車としてより重要な役割を果たすようになりました。使用列車に”スーパー”はつかなくなりましたが、新たに「サロベツ」の運用を担うようになりました。運行体系の再編から2カ月が経過しました。
従来より、キハ183系の苗穂車は予備車両が少なく、車両繰りに苦慮していました。3月ダイヤ改正を機に特急「サロベツ」からキハ183系の撤退や石北特急も運行体系見直しによって1日に使用する車両数を減らしました。
結果、キハ183系における車両不足による影響はダイヤ改正以降は少なくなりましたが、代わりに、キハ261系0番台の負担が増えていることが新たな問題として挙げられます。
キハ261系0番台は全14両が苗穂運転所(札ナホ)に所属しています。全車両がJR北海道の管理下で使用されていますが、そのうち12両が第三セクター「北海道高速鉄道開発」が保有し、2001年に増備された2両のみJR北海道が保有しています。デビューからしばらくの間は、前者と後者で座席の形状が異なっていましたね。
今回の記事で取り上げたい部分はまさにこの点であり、キハ261系0番台の車両不足の根源に当たります。
改めて今回のダイヤ改正における特急列車の運行体制の見直しをみていると、キハ261系0番台のような車両の在り方や運行体制は、今後あってはならないものです。
固定式のヘッドマークや号車表示と設備表示を一体化したサボ式プレートなど、至るところにコストダウンをみてとれる箇所があります。ヘッドマークが固定式という考え方からも、宗谷本線の高速化事業によるキハ261系0番台の登場が「スーパー宗谷」専用車両として登場したことがわかります。
実際に宗谷本線の高速化事業は、JR北海道及び北海道のほか、沿線自治体が出資する第三セクター「北海道高速鉄道開発」が事業主体となっており、高速化事業に出資した沿線自治体の意見を反映させて登場している様子がヘッドマークが固定式という様子からも伝わってきます。
今までのJR北海道は、一年を通じて厳しい気候条件でありながら、その中でも他の交通機関に比べて特に速達性の面で優れていました。「速達性=利用客増加」という方程式が宗谷本線のみならず、どの計画段階からも出ていたことでしょう。
しかし、その方程式は今や過去のものとなり、高速道路の延伸やそれに伴う料金の安い高速バスの勢力拡大、モータリゼーションの進展などで鉄道利用が伸び悩む事態を招き、さらに、数々の車両トラブルによって減速・減便措置がそれらを後押ししました。
また、北海道内における人口減少により、鉄道そのものの利用客が減り続けたのも原因で、車両の老朽化を含め、キハ261系0番台は複数の列車を掛け持ちしなければいけなくなりました。これは、宗谷本線高速化事業を立ち上げた際は考えてもいなかったでしょう。
さらに、当時から資金繰りが困難なため、第三セクターが車両の保有をした結果、少ない車両数で運行することになり、それが高速化事業を実施後20年弱が経過してその問題が顕著に表れているのも事実です。さすがにデビュー当時の車両数が少なすぎたためか、2001年にJR北海道が2両を増備していますが、それでもまだまだ足りない状態です。昨年12月はほぼ連日全ての「スーパー宗谷」が代走運転となり、定期運用が壊滅した状態でした。
このことからも、将来的に特急列車の再編がまだまだ予想される北海道では、将来的な再編に備えた特急車両を開発段階や導入段階から想定していく必要があります。キハ261系0番台の場合、固定式ヘッドマークや半室グリーン車など、他線区での転用を想定しない宗谷本線に特化した設備が仇となり、他の線区で活躍する車両と共用することができず、加えて、同じキハ261系でありながら1000番台との併用ができないため、キハ261系を製造し続けても車両不足の問題が解消されることはありません。
急激な人口変動や利用客の減少が特急の再編という結果になりましたが、今後製造する車両については、製造段階から他線区でも容易に転用することが可能な状態にしておかなければ、北海道における鉄道運営は厳しいです。
具体的な方策としては以下が挙げられます。
【ヘッドマークの固定化は避けるべき】
3月ダイヤ改正後は同一線区での活躍に抑えたこともあり、ヘッドマークへの影響を最小限に抑えていますが、今後も急な人口変動や利用客の変動を考慮すると、他線区でも使用することを想定した車両の投入が必須です。
その点においても、ヘッドマークの固定化は他線区転用には不利な状況であり、採用するにしても、将来的な他線区転用に備えて改造することが可能な状態にしておく必要があります。
【先頭車に特殊な構造は避けるべき(合造など)】
グリーン車設備でなくても、先頭車にさらに重要な設備を持たせてはなりません。
キハ261系0番台の場合、稚内方先頭車キロハ261形200番台がグリーン車と普通車指定席の合造車となっています。グリーン席も9席しかなく、例えば函館方面や帯広方面で使用するには無理があります。先頭車という役割がある以上、簡単に廃車とすることはできず、合造車の構造のまま使用し続けなくてはなりません。閑散路線で使用していくうえで合理化という面では有利ですが、北海道のような急な人口変動や利用客の変動によって特急列車の再編を余儀なくされる場合は、車両を転用する際は大きな欠点となるため、先頭車に特殊な構造を採用するのは避けるべきです。
ここで1つ目のヘッドマークについて取り上げていきたいと思います。
JR東日本やJR西日本のように、北海道は特急列車ごとに独特の形状をもった車両というのが少ない傾向にあります。たとえ、キハ283系とキハ261系の形状が違っていても「スーパー北斗」のように、同じ列車名でありながら異なる車両で運行されていたり、一般の利用客が間違えてしまうようなリスクはゼロではありません。
そのため、他の鉄道会社がヘッドマークの採用を取り止めていく中で、JR北海道は長年にわたってヘッドマークを採用し続けています。最新のJR四国の2600系も一つの車両で複数の列車に充当していく可能性から、ヘッドマークを採用していると思われます。
ローカル線区では乗り間違えはないかもしれませんが、「宗谷」と「サロベツ」のように、固定式の何もローマ字表記等もされていないヘッドマークでは、少なくとも判断がしにくい状況です。ヘッドマークだけで列車を見分ける手段として活用していくにはまだまだ不足した点もありますが、現段階では見分ける判断材料の1つとして重要な役割を果たしています。


写真は3月ダイヤ改正以降のキハ261系0番台のヘッドマークです。固定式でありながら車両は「宗谷」と「サロベツ」との共用のため、ヘッドマークは宗谷地方をイメージするイラストのみのシンプルなデザインとなりました。果たしてこれでよいのでしょうか??
キハ261系0番台は大半の車両が沿線自治体が出資する第三セクターが車両を保有するので、宗谷本線に特化した車両を製造する理由もわからなくもありませんが、今後一定の車両数を確保し、安定した輸送を図るためにも・・・
・JR北海道が一括して車両の保有を行う
・将来的な特急再編を見据えた車両の導入計画を立てる
この2点が重要になります。
昨今になってキハ261系1000番台の数がようやく増え、予備車両も豊富に確保することで車両繰りがしやすい状況になってきました。将来的には、現在4車種ある特急気動車をキハ261系に一本化していく計画があり、ますます車両繰りがしやすくなっていくと思われます。どの線区においても一定の高速化ができるオールマイティなキハ261系を全道線区に投入することで急な特急再編の機会においてもその対応がしやすくなります。加えて、JR北海道が一括して車両を保有することで線区別に特化した車両の製造をする必要がなくなることも強みの1つです。
今回の宗谷本線の特急列車の再編においても、将来的なビジョンを事業の立ち上げる段階、車両の開発及び導入段階からしっかりと検討していく必要性が改めて重要だと感じた次第です。
今回はお金という問題をほぼ抜きにして記事を作成しています。当記事に記載している内容では不足している点もありますが、製造から20年弱が経過して問題が顕著にあらわれている様子をみれば、将来的に複数の列車に使用できる準備を製造段階からしておかなければならないことは言うまでもありません。
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