【コラム】減速・減便措置施行から5年
コラム - 2018年11月01日 (木)
2013年11月1日。ちょうど5年前の出来事です。
車両トラブルが後を絶たないJR北海道が車両への負荷を減らし、メンテナンス体制強化に向けたダイヤ変更を実施しました。いわゆる減速・減便措置です。
これ以降、特急列車を中心に最高運転速度を従来よりも落として運行し、札幌から各方面へ向かう特急列車は所要時間が延びてしまいました。
減速・減便措置施行以前は、他の公共交通機関を所要時間面で圧倒し、札幌~函館間を最速3時間ジャスト、札幌~釧路間を3時間35分、札幌~旭川間を1時間20分で結びました。
しかし、最高運転速度が120km/hに抑えられた(スーパーおおぞらは110km/h)ことにより、施行開始当初は札幌~函館間は最速3時間26分(現在は3時間27分)、札幌~釧路間は3時間59分(現在は3時間58分)、札幌~旭川間は1時間25分~29分となり、他の交通機関との優位性も薄れました。
この時点で、130km/h運転を実施していた全列車が対象とはならず、ダイヤの関係や使用する車両が比較的に新しいことを理由に、快速「エアポート」、「スーパーとかち」、「スーパー宗谷」は減速運転が先送りされました。
「スーパーとかち」については、「スーパーおおぞら」の運行時刻変更によって一部列車の時刻が変更され、所要時間が短縮された列車もありました。最高運転速度を20km/hも落とした結果、速達タイプよりも都市間輸送タイプの方が速いという逆転現象も一時的に見られましたね。


運行車両で減速・減便措置施行前後で最も変化があったのは、キハ283系の運用でした。製造両数が比較的多かったことや、キハ261系が登場するまで、北海道の主力特急気動車としてメインの「スーパーおおぞら」のほかに、「スーパー北斗」や「スーパーとかち」でも使用されていました。2011年5月に発生した石勝線での脱線火災事故以降、車両トラブルが多発するようになり、メンテナンス体制を強化すべく、徹底した対策がとられることになりました。
キハ283系は減速・減便以降は「スーパーおおぞら」のみの使用とし、「スーパー北斗」と「スーパーとかち」での使用を取り止めました。減便による運用変更も実施され、札幌運転所(札サウ)と釧路運輸車両所(釧クシ)合わせた1日6運用から「スーパーおおぞら」のみの4運用となり、過酷な運用が施行前に比べて少なくなりました。繁忙期の増結も抑制されるようになり、過去に9両編成や10両編成への増結が確認されていましたが、現在ではそれも実施されなくなっています。1日に使用する車両数を少なくすることで予備車両の確保や車両メンテナンスを優先した形となりました。

一方、サービスの面で減速・減便措置の影響を最も受けたのは札幌~函館間でした。減速・減便が施行される以前、同年7月6日に函館本線の八雲~鷲ノ巣間走行中に床下から出火が確認され、翌日から同型のエンジンを搭載する車両について使用停止となり、キハ183系による「北斗」5往復が当面の間運休となりました。この時点で定期列車は7往復となりましたが、減速減便措置施行により、キハ283系が戦力から外れたことで同年11月から定期列車が5往復となりました。毎日運転の臨時「北斗」を2往復設定するも、限られた車両で定期列車よりも短い編成を組まなければならず、結果的に輸送力不足に陥りました。
繁忙期では、他の交通機関への利用も検討することがアナウンスされ、車内混雑による遅延も初めて確認することができました。車両メンテナンス強化のため、繁忙期でも増結ができない状態が続き、始発駅の時点で混乱が生じていました。

ですが、札幌~函館間については、2016年3月に北海道新幹線が開業したこともあり、定期列車が3往復増発されて12往復体制となりました。これは、減速・減便措置以前よりも1往復多い設定です。
利用客増を見込み、一部を除いて定期列車の所定編成を7両編成以上とし、新たに加勢したキハ261系は設定当初は8両編成で運行されるようになりました。その後、今年3月のダイヤ改正でキハ183系による「北斗」が営業運転を終了し、キハ261系1000番台に順次置き換えられ、12往復全てが「スーパー北斗」になりました。通常時も含め、繁忙期における増結も頻繁に確認することができ、キハ261系では最大10両編成で運行され、迫力ある走行シーンを確認することができます。
高速化に集中投資し、ある意味で暴走していたJR北海道にメスが入った日、それが5年前の11月1日でした。
あれから5年が経過しました。減速・減便措置の効果は大きく、使用する車両を抑制していることやハードな運用を減らしたことで車両トラブルは大きく減りました。近年は新千歳空港への航空機の発着枠が増えたことで北海道を訪れる外国人が急増しています。これにより、インバウンド需要増加によって、ここ最近の繁忙期輸送は前年を上回っています。沿線人口減少等で利用が落ち込み、さらなる減収が見込まれる中、増収が見込まれる数少ない利用促進法です。
また昨今では、当初の車両メンテナンスだけの問題のみならず、北海道の鉄道そのものが危機的状況に陥っており、路線の存廃等の問題が新たな問題として取り上げられています。引き続き非常に厳しい状況の中で鉄道事業を展開していくことになります。特に沿線人口の減少やそれに伴う利用客の減少で、現在保有している全ての路線を単独で維持することが難しくなっています。
今のところ、単独で維持可能な区間は札幌圏を中心とした一部と室蘭方面と帯広方面、将来的に北海道新幹線が札幌まで延伸した際に経営分離される区間のみとなっており、それ以外はほぼ単独で維持することが困難な線区となっています。
利用の少ない路線の整理も今後はさらに実施されていくことになり、留萌本線の留萌~増毛間が2016年の12月で既に廃止されており、石勝線の夕張支線が2019年4月、正式に決定していないものの、札沼線の北海道医療大学~新十津川間も沿線自治体で廃止に向けた動きがみられ、後は正式な廃止日を待つばかりとなりました。
利用が少ない線区でも特急列車が運行している路線については重要幹線と位置づけていますが、果たしてそれでよいのでしょうか?
国からの支援があるとはいえ、いつまでもそれに頼るわけにはいきません。我々国民から集めた税金が無駄なところに投資されているわけです。その支援がどこでどのような形で使用していくのかは不明ですが、管理者からすれば、ドブに捨てているようにしか見えません。後日お伝えしようと思いますが、それでローカル気動車の新製に充てた方がよっぽど適しています。
高速化に集中投資をした結果、ローカル輸送が後回しにされました。定期的に整理をしていれば、昨今のような路線の存廃問題に揺れることはなかったでしょう。
このように、減速・減便措置が施行されて5年が経過し、次は新たな問題と直面しています。危機的状況にありながら、昨今は路線の存廃問題が今一歩進展せず、今後の動向が引き続き心配されます。
こうした内容を取り上げる度に、管理者も一道民として改めて身が引き締まる思いです。本当にのんびりしている場合ではないです。
利用が極端に少ない地域なら鉄道が消えても問題ないと思いますが、札幌のような大都市圏ならどうでしょう?果たして鉄道廃止分を他の公共交通機関、インフラがしっかりと整備されているのでしょうか?大都市圏で鉄道がなくなれば大混乱になりますよ。
課題が山積みのJR北海道ですが、必ずやその1つ1つを解決し、未来へつなげられることを期待します。
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車両トラブルが後を絶たないJR北海道が車両への負荷を減らし、メンテナンス体制強化に向けたダイヤ変更を実施しました。いわゆる減速・減便措置です。
これ以降、特急列車を中心に最高運転速度を従来よりも落として運行し、札幌から各方面へ向かう特急列車は所要時間が延びてしまいました。
減速・減便措置施行以前は、他の公共交通機関を所要時間面で圧倒し、札幌~函館間を最速3時間ジャスト、札幌~釧路間を3時間35分、札幌~旭川間を1時間20分で結びました。
しかし、最高運転速度が120km/hに抑えられた(スーパーおおぞらは110km/h)ことにより、施行開始当初は札幌~函館間は最速3時間26分(現在は3時間27分)、札幌~釧路間は3時間59分(現在は3時間58分)、札幌~旭川間は1時間25分~29分となり、他の交通機関との優位性も薄れました。
この時点で、130km/h運転を実施していた全列車が対象とはならず、ダイヤの関係や使用する車両が比較的に新しいことを理由に、快速「エアポート」、「スーパーとかち」、「スーパー宗谷」は減速運転が先送りされました。
「スーパーとかち」については、「スーパーおおぞら」の運行時刻変更によって一部列車の時刻が変更され、所要時間が短縮された列車もありました。最高運転速度を20km/hも落とした結果、速達タイプよりも都市間輸送タイプの方が速いという逆転現象も一時的に見られましたね。


運行車両で減速・減便措置施行前後で最も変化があったのは、キハ283系の運用でした。製造両数が比較的多かったことや、キハ261系が登場するまで、北海道の主力特急気動車としてメインの「スーパーおおぞら」のほかに、「スーパー北斗」や「スーパーとかち」でも使用されていました。2011年5月に発生した石勝線での脱線火災事故以降、車両トラブルが多発するようになり、メンテナンス体制を強化すべく、徹底した対策がとられることになりました。
キハ283系は減速・減便以降は「スーパーおおぞら」のみの使用とし、「スーパー北斗」と「スーパーとかち」での使用を取り止めました。減便による運用変更も実施され、札幌運転所(札サウ)と釧路運輸車両所(釧クシ)合わせた1日6運用から「スーパーおおぞら」のみの4運用となり、過酷な運用が施行前に比べて少なくなりました。繁忙期の増結も抑制されるようになり、過去に9両編成や10両編成への増結が確認されていましたが、現在ではそれも実施されなくなっています。1日に使用する車両数を少なくすることで予備車両の確保や車両メンテナンスを優先した形となりました。

一方、サービスの面で減速・減便措置の影響を最も受けたのは札幌~函館間でした。減速・減便が施行される以前、同年7月6日に函館本線の八雲~鷲ノ巣間走行中に床下から出火が確認され、翌日から同型のエンジンを搭載する車両について使用停止となり、キハ183系による「北斗」5往復が当面の間運休となりました。この時点で定期列車は7往復となりましたが、減速減便措置施行により、キハ283系が戦力から外れたことで同年11月から定期列車が5往復となりました。毎日運転の臨時「北斗」を2往復設定するも、限られた車両で定期列車よりも短い編成を組まなければならず、結果的に輸送力不足に陥りました。
繁忙期では、他の交通機関への利用も検討することがアナウンスされ、車内混雑による遅延も初めて確認することができました。車両メンテナンス強化のため、繁忙期でも増結ができない状態が続き、始発駅の時点で混乱が生じていました。

ですが、札幌~函館間については、2016年3月に北海道新幹線が開業したこともあり、定期列車が3往復増発されて12往復体制となりました。これは、減速・減便措置以前よりも1往復多い設定です。
利用客増を見込み、一部を除いて定期列車の所定編成を7両編成以上とし、新たに加勢したキハ261系は設定当初は8両編成で運行されるようになりました。その後、今年3月のダイヤ改正でキハ183系による「北斗」が営業運転を終了し、キハ261系1000番台に順次置き換えられ、12往復全てが「スーパー北斗」になりました。通常時も含め、繁忙期における増結も頻繁に確認することができ、キハ261系では最大10両編成で運行され、迫力ある走行シーンを確認することができます。
高速化に集中投資し、ある意味で暴走していたJR北海道にメスが入った日、それが5年前の11月1日でした。
あれから5年が経過しました。減速・減便措置の効果は大きく、使用する車両を抑制していることやハードな運用を減らしたことで車両トラブルは大きく減りました。近年は新千歳空港への航空機の発着枠が増えたことで北海道を訪れる外国人が急増しています。これにより、インバウンド需要増加によって、ここ最近の繁忙期輸送は前年を上回っています。沿線人口減少等で利用が落ち込み、さらなる減収が見込まれる中、増収が見込まれる数少ない利用促進法です。
また昨今では、当初の車両メンテナンスだけの問題のみならず、北海道の鉄道そのものが危機的状況に陥っており、路線の存廃等の問題が新たな問題として取り上げられています。引き続き非常に厳しい状況の中で鉄道事業を展開していくことになります。特に沿線人口の減少やそれに伴う利用客の減少で、現在保有している全ての路線を単独で維持することが難しくなっています。
今のところ、単独で維持可能な区間は札幌圏を中心とした一部と室蘭方面と帯広方面、将来的に北海道新幹線が札幌まで延伸した際に経営分離される区間のみとなっており、それ以外はほぼ単独で維持することが困難な線区となっています。
利用の少ない路線の整理も今後はさらに実施されていくことになり、留萌本線の留萌~増毛間が2016年の12月で既に廃止されており、石勝線の夕張支線が2019年4月、正式に決定していないものの、札沼線の北海道医療大学~新十津川間も沿線自治体で廃止に向けた動きがみられ、後は正式な廃止日を待つばかりとなりました。
利用が少ない線区でも特急列車が運行している路線については重要幹線と位置づけていますが、果たしてそれでよいのでしょうか?
国からの支援があるとはいえ、いつまでもそれに頼るわけにはいきません。我々国民から集めた税金が無駄なところに投資されているわけです。その支援がどこでどのような形で使用していくのかは不明ですが、管理者からすれば、ドブに捨てているようにしか見えません。後日お伝えしようと思いますが、それでローカル気動車の新製に充てた方がよっぽど適しています。
高速化に集中投資をした結果、ローカル輸送が後回しにされました。定期的に整理をしていれば、昨今のような路線の存廃問題に揺れることはなかったでしょう。
このように、減速・減便措置が施行されて5年が経過し、次は新たな問題と直面しています。危機的状況にありながら、昨今は路線の存廃問題が今一歩進展せず、今後の動向が引き続き心配されます。
こうした内容を取り上げる度に、管理者も一道民として改めて身が引き締まる思いです。本当にのんびりしている場合ではないです。
利用が極端に少ない地域なら鉄道が消えても問題ないと思いますが、札幌のような大都市圏ならどうでしょう?果たして鉄道廃止分を他の公共交通機関、インフラがしっかりと整備されているのでしょうか?大都市圏で鉄道がなくなれば大混乱になりますよ。
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