来年度以降、H100形電気式気動車を40両投入へ
気動車 - 2018年12月07日 (金)
一時、資金調達が困難で量産化が見送られていたH100形電気式気動車ですが、ようやく量産化にGOサインが出たようです。
12月5日付の交通新聞によると、来年度から5年間でH100形を40両投入し、老朽化した車両を置き換えるとしています。

改めて、H100形電気式気動車について紹介したいと思います。
同車は今年の2月に本州から甲種輸送で北海道入りした新型一般気動車の試作車です。愛称名は「DECMO」です。込められた意味は、「Diesel Electric Car with MOtors」の略です。モーターで走行する電気式ディーゼルカーであることを表現しています。
JR北海道が過去に開発したキハ285系とは仕組みが異なり、ディーゼルエンジンの動力で発電した電力によりモーターで走行します。
老朽化したキハ40形気動車の置き換え用として投入する計画で、JR東日本初の電気式気動車GV-E400系をベースに、北海道での使用を前提とした極寒対策を実施した車両になります。エクステリアは733系などといった北海道で活躍するほかの車両似たデザインとはならず、基本仕様を合わせたGV-E400系に似たエクステリアとなります。
エクステリアの配色は、新しさ・北海道らしさを表現し、シャープでエッジ感のある先頭形状とします。キハ261系1000番台と同様、車両全面には警戒色として黒と黄の前面配色を採用し、車体側面はグリーンとホワイトのラインで自然との調和を表現しています。
インテリアは、北海道の自然を表現したブルーやグリーンを中心としたデザインとされ、事前資料によるイメージでは仕切なども設けられていることから、外からの冷気を少しでもシャットアウトするような構造とし、このあたりは733系のノウハウがフィードバックされていることでしょう。半自動扉機能も有していると思われます。また、床の高さを従来のキハ40形気動車よりも9cm低くした115cmとし、身体の不自由な方でも乗り降りしやすい構造としています。
1両あたりの製造費用がおよそ2億円からということで意外と高額な車両です。試作車投入分で単純に4億円になります。一般型気動車にしては高額な製造費用です。
以前まで、今後走行試験を通じて二冬期の検証を行ったうえで、2019年度以降の量産車製作を予定し、数年かけて70両を更新する予定でしたが、製造費用が高額であり、国に30年度まで年300億円の支援を求めたものの、認められなかったため、資金確保の見通しが立たず、車両の更新は一旦見送られていました。
実は、先日特急気動車17両と721系24両を置き換えるという内容の記事で使用した資料「安全投資と修繕に関する5年間の計画」にも記載されていましたね。


今年度にH100形電気式気動車の新製が明記されています。おそらく今年度はもう北海道入りすることは厳しいでしょうが、車両の発注や会計処理等の関係で18年度の記載となっているのではないでしょうか。
5年間の計画では両数までは明記されていないものの、先日の報道で40両が今後5年間で新製されるようです。当初は既存の老朽化した一般気動車を70両置き換える予定でしたが、資金繰りが厳しいため、一旦更新を見送った後、新製計画が更新されたと予想しています。
将来的に、北海道新幹線の札幌延伸による函館本線の一部区間の経営分離、不採算路線の整理とともに、車両を共通化することで車両メンテナンス向上を図るとともに、車両の全体の保有数を減らす目的があります。40両を新たに投入することに対して、おそらく40両以下がそのまま置き換えられることは考えにくく、老朽・劣化の激しい50両程度をまず置き換えるのではないでしょうか。
昨今、単独で維持することが困難な道内の8区間に対し、路線維持に向けて国に地方財政措置を要求したものの、調整が難航して見送られることになりました。これにより、これら8区間の財政支援は道からの数億円規模に縮小する見通しです。
この問題と絡めて、H100形の新製にリスクを抱いている書き込み等が散見されますが、この地方財政措置と車両の新製は全くの別問題です。
上述のとおり、今回報道された今後5年間におけるH100形の新製は「安全投資と修繕に関する5年間の計画」に基づいて実施されます。
この5年間の計画の基本的な考え方は、安全投資と修繕を最優先としたうえで計画を推進することです。当計画実施期間は、2014年度から2018年度の5年間です。
当計画における資金の確保について、2011年度以降に措置された国からの600億円の設備投資支援を前倒しして活用するとともに、経営安定基金の評価益の一部実現化や保有する資産の売却等を行い、最大限の努力によって確保します。
まずこれによって、国からの支援が1,400億円になり、さらに資産等の売却によって修繕や車両の更新等に使える額はこれよりも増えているはずです。
この1,400億円は安全投資に全て使われるわけですが、ここから車両の老朽対策として老朽・劣化の激しい車両の更新、軌道強化や管理の見直し等に充てられます。
さらに、「安全投資と修繕に関する5年間の計画」を実施するにあたり、最大限努力してもなお資金が不足することから、2016年度から2019年度にかけてさらに1,200億円の追加支援措置が講じられます。この1,200億円の内訳は、設備投資への支援が600億円、修繕費への支援が600億円です。
ここでお詫びですが、先日掲載した記事で、この追加支援分の1,200億円を「安全投資と修繕に関する5年間の計画」の支援金額と勘違いしてしまいました。申し訳ありません。
これにより、総額2,600億円を車両の更新、軌道強化や管理の見直し等に充てられるとともに、設備投資や修繕費を追加支援分で補われることで、老朽・劣化の激しい車両の置き換え計画が当初見込んだ規模よりも大きく進展することでしょう。それが、キハ261系の新製継続であったり、今回のH100形の新製だったりします。後者について当初の製造計画よりは少ないものの、無事に量産化が進み、老朽・劣化の激しいキハ40形気動車の一部から置き換えていくことができそうです。
一般型気動車がようやく新製車両に置き換えられるわけですが、北海道で電気式気動車の採用例がなく、果たして北海道という厳しい条件下で末永く使用できるのか気になるところです。
JR東日本のGV-E400系がベースということで夏季は問題なさそうですが、冬季はこれに寒冷地仕様向けに対策を施しただけで通用する車両なのでしょうか。かつての485系1500番台のように、本州では通用しても北海道は通用しない車両だったら話になりません。
利点として燃料費を安く抑えられ、構造がシンプルでメンテナンス時の負担軽減が期待されています。しかしながら、北海道でこうした車両の前例がないため、車両の寿命は全くの未知数です。この先、少なくともしばらくの間は車両の更新がまともにできなくなるでしょう。そのような中、すぐに壊れるような車両を投入しては意味がありません。少なくとも老朽・劣化の激しいキハ40形気動車並みの年数を使用することを想定しなければ、新しいH100形も使いものになりません。
いくつかの不安要素はあるものの、とりあえず量産化にGOサインが出たことでローカル線の輸送改善は多少なりとも図られそうですね。
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12月5日付の交通新聞によると、来年度から5年間でH100形を40両投入し、老朽化した車両を置き換えるとしています。

改めて、H100形電気式気動車について紹介したいと思います。
同車は今年の2月に本州から甲種輸送で北海道入りした新型一般気動車の試作車です。愛称名は「DECMO」です。込められた意味は、「Diesel Electric Car with MOtors」の略です。モーターで走行する電気式ディーゼルカーであることを表現しています。
JR北海道が過去に開発したキハ285系とは仕組みが異なり、ディーゼルエンジンの動力で発電した電力によりモーターで走行します。
老朽化したキハ40形気動車の置き換え用として投入する計画で、JR東日本初の電気式気動車GV-E400系をベースに、北海道での使用を前提とした極寒対策を実施した車両になります。エクステリアは733系などといった北海道で活躍するほかの車両似たデザインとはならず、基本仕様を合わせたGV-E400系に似たエクステリアとなります。
エクステリアの配色は、新しさ・北海道らしさを表現し、シャープでエッジ感のある先頭形状とします。キハ261系1000番台と同様、車両全面には警戒色として黒と黄の前面配色を採用し、車体側面はグリーンとホワイトのラインで自然との調和を表現しています。
インテリアは、北海道の自然を表現したブルーやグリーンを中心としたデザインとされ、事前資料によるイメージでは仕切なども設けられていることから、外からの冷気を少しでもシャットアウトするような構造とし、このあたりは733系のノウハウがフィードバックされていることでしょう。半自動扉機能も有していると思われます。また、床の高さを従来のキハ40形気動車よりも9cm低くした115cmとし、身体の不自由な方でも乗り降りしやすい構造としています。
1両あたりの製造費用がおよそ2億円からということで意外と高額な車両です。試作車投入分で単純に4億円になります。一般型気動車にしては高額な製造費用です。
以前まで、今後走行試験を通じて二冬期の検証を行ったうえで、2019年度以降の量産車製作を予定し、数年かけて70両を更新する予定でしたが、製造費用が高額であり、国に30年度まで年300億円の支援を求めたものの、認められなかったため、資金確保の見通しが立たず、車両の更新は一旦見送られていました。
実は、先日特急気動車17両と721系24両を置き換えるという内容の記事で使用した資料「安全投資と修繕に関する5年間の計画」にも記載されていましたね。


今年度にH100形電気式気動車の新製が明記されています。おそらく今年度はもう北海道入りすることは厳しいでしょうが、車両の発注や会計処理等の関係で18年度の記載となっているのではないでしょうか。
5年間の計画では両数までは明記されていないものの、先日の報道で40両が今後5年間で新製されるようです。当初は既存の老朽化した一般気動車を70両置き換える予定でしたが、資金繰りが厳しいため、一旦更新を見送った後、新製計画が更新されたと予想しています。
将来的に、北海道新幹線の札幌延伸による函館本線の一部区間の経営分離、不採算路線の整理とともに、車両を共通化することで車両メンテナンス向上を図るとともに、車両の全体の保有数を減らす目的があります。40両を新たに投入することに対して、おそらく40両以下がそのまま置き換えられることは考えにくく、老朽・劣化の激しい50両程度をまず置き換えるのではないでしょうか。
昨今、単独で維持することが困難な道内の8区間に対し、路線維持に向けて国に地方財政措置を要求したものの、調整が難航して見送られることになりました。これにより、これら8区間の財政支援は道からの数億円規模に縮小する見通しです。
この問題と絡めて、H100形の新製にリスクを抱いている書き込み等が散見されますが、この地方財政措置と車両の新製は全くの別問題です。
上述のとおり、今回報道された今後5年間におけるH100形の新製は「安全投資と修繕に関する5年間の計画」に基づいて実施されます。
この5年間の計画の基本的な考え方は、安全投資と修繕を最優先としたうえで計画を推進することです。当計画実施期間は、2014年度から2018年度の5年間です。
当計画における資金の確保について、2011年度以降に措置された国からの600億円の設備投資支援を前倒しして活用するとともに、経営安定基金の評価益の一部実現化や保有する資産の売却等を行い、最大限の努力によって確保します。
まずこれによって、国からの支援が1,400億円になり、さらに資産等の売却によって修繕や車両の更新等に使える額はこれよりも増えているはずです。
この1,400億円は安全投資に全て使われるわけですが、ここから車両の老朽対策として老朽・劣化の激しい車両の更新、軌道強化や管理の見直し等に充てられます。
さらに、「安全投資と修繕に関する5年間の計画」を実施するにあたり、最大限努力してもなお資金が不足することから、2016年度から2019年度にかけてさらに1,200億円の追加支援措置が講じられます。この1,200億円の内訳は、設備投資への支援が600億円、修繕費への支援が600億円です。
ここでお詫びですが、先日掲載した記事で、この追加支援分の1,200億円を「安全投資と修繕に関する5年間の計画」の支援金額と勘違いしてしまいました。申し訳ありません。
これにより、総額2,600億円を車両の更新、軌道強化や管理の見直し等に充てられるとともに、設備投資や修繕費を追加支援分で補われることで、老朽・劣化の激しい車両の置き換え計画が当初見込んだ規模よりも大きく進展することでしょう。それが、キハ261系の新製継続であったり、今回のH100形の新製だったりします。後者について当初の製造計画よりは少ないものの、無事に量産化が進み、老朽・劣化の激しいキハ40形気動車の一部から置き換えていくことができそうです。
一般型気動車がようやく新製車両に置き換えられるわけですが、北海道で電気式気動車の採用例がなく、果たして北海道という厳しい条件下で末永く使用できるのか気になるところです。
JR東日本のGV-E400系がベースということで夏季は問題なさそうですが、冬季はこれに寒冷地仕様向けに対策を施しただけで通用する車両なのでしょうか。かつての485系1500番台のように、本州では通用しても北海道は通用しない車両だったら話になりません。
利点として燃料費を安く抑えられ、構造がシンプルでメンテナンス時の負担軽減が期待されています。しかしながら、北海道でこうした車両の前例がないため、車両の寿命は全くの未知数です。この先、少なくともしばらくの間は車両の更新がまともにできなくなるでしょう。そのような中、すぐに壊れるような車両を投入しては意味がありません。少なくとも老朽・劣化の激しいキハ40形気動車並みの年数を使用することを想定しなければ、新しいH100形も使いものになりません。
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