クラウドファンディングで保存された711系の今
その他あれこれ - 2019年04月13日 (土)
先日、711系が保存されている「大地のテラス」に行ってきました。

まずはレストランの写真から。隣接して地元の農産物や711系のグッズを販売している直売店もあります。
住所は、岩見沢市栗沢町上磯2203です。

1枚目の写真にもちょこっと写っていますが、店舗の裏に赤電車711系が保存されています。
実は昨年も来ましたが、記事にするタイミングを逃してしまったことと、どんよりとした曇り空だったので、紹介を見送っていました。
そして今回、ようやく紹介することができました。


北海道鉄道観光資源研究会では、4年前の2015年3月25日から『みんなに愛された「赤い電車」を残そう!プロジェクト』を実施しました。
JRなどと交渉したところ、車両2両分を購入することが決まり、運搬に約500万円がかかる見通しでした。その約半分は同研究会のメンバーなどで負担することになりましたが、残りの約230万円(234万円)の目途が立たず、鉄道ファンなどに協力を求め、ネットを通じて資金調達を実施しました。
まもなく安平町にオープンする道の駅「あびらD51ステーション」に保存するキハ183系スラントノーズ車と同様、クラウドファンディングで資金を募り、見事に保存に成功しました。クラウドファンディングで車両の保存が成功したのは、北海道ではこの711系のプロジェクトがまさに原点となります。
募集期間が21日間で同年4月14日がタイムリミットでした。キハ183系スラントノーズ車や現在実施されているニセコエクスプレスのクラウドファンディングに比べて日数が圧倒的に少ない中で始まりましたが、3日目にして早くも目標金額に達成し、最終的には412.9万円が集まりました。追加支援分については、車両の維持管理費に充てる予定としていました。
ということで、現在はどのようになっているかというと・・・




残念ながら車両のメンテナンスは行き届いておらず、無惨な姿になっています。
例えば現役の頃、苗穂工場出場時は真っ赤な綺麗な状態となりますが、苗穂工場入場直前など、車体は色褪せてしまい、赤電車にも関わらず、ピンク色のように見えてしまう場合がありました。保存先は屋根など風雪から少しでも守る建屋は設置されず、保存車両は365日間北海道のときには厳しい気候に耐えながら第二の人生を歩んでいます。当然、車両の状態を綺麗に維持していくためには、メンテナンス費用も多くかかります。
保存が達成された時点でのメンテナンス費用はおよそ180万円でした。しかし、711系は鋼製車体で、721系のようなステンレス製の車体に比べて車体の劣化速度が早いです。例えば北海道の場合、風雪や走行中(営業列車)に塗装面が傷つきます。そして割れた塗装面の隙間に入り込んだ細かい雪が水となり、やがて気温が下がることで凍結し、膨張することで塗装面破損という状況が起こります。現役の車両では、キハ40形気動車やキハ183系でもみられます。綺麗に保管、または車両を維持していくためには、その分手間も必要になります。
苗穂工場で移送前のキハ183系スラントノーズ車については、冬季は厳冬期の風雪から守るため、車体をブルーシートで被う冬囲い措置を行っています。
理由は美しく再度国鉄色に再塗装・復元されたキハ183系を安平町の道の駅「あびらD51ステーション」に綺麗な状態で保存するためです。仮にブルーシートで冬囲いしないまま放置してしまうと、果てには711系のように車体が劣化した無惨な姿になっていることでしょう。

修繕中とのことですが、一部では劣化した車両表面の上から再塗装している状況も確認でき、劣化した車体表面から塗装を上塗りする修繕作業で手一杯のようです。
4年前に掲載した記事で記載したことをそのまま当記事でも記載しますが、「車両を保存」することは、車両が引き渡されて設置場所に設置されて終わりではなく、地域のシンボル・財産として状態を維持し続けて初めて「保存」ではないでしょうか?
残念ながら、岩見沢市の「大地のテラス」に保存している711系では、修繕が行き届いていない無惨な姿のまま放置されています。
今後、道の駅「あびらD51ステーション」に保存するキハ183系では、ぜひとも綺麗な状態を維持し続けてほしいです。こちらは道の駅の敷地内に保存され、「大地のテラス」よりも人の往来が多いことでしょう。やはり保存して終わりというわけではなく、末永く綺麗な状態で維持してほしいというのが、支援をいただいた方々からの少なからずの願いではないでしょうか。保存をすると決めたからには、綺麗な状態で維持し続けてほしいと思います。
これから保存されるキハ183系がブルーシートで昨冬から冬囲いしたということは、711系の車体劣化の教訓が少なからず生かされているのではないでしょうか?車体を綺麗に維持していくという意味では、例えば特に車体の劣化が激しくなる冬季はブルーシートで覆う措置も検討すべきではないでしょうか?
北海道では711系や24系客車(北斗星)の前例があるので、それらを踏まえたうえで、末永く綺麗な状態を維持していくための方法を模索してほしいと思います。
しかし、北海道では鉄道車両の保存そのものが難しい状況にあります。本州のように室内で保存することができる大規模な鉄道博物館のような施設はありません。なので、貴重な車両が引退しても、こうして保存する動きがなければ、呆気なく廃車・解体されてしまいます。711系もキハ183系スラントノーズ車も保存に向けて北海道鉄道観光資源研究会が動き出さなかったら、間違いなく後世に語り継がれることのないまま、これらの車両は完全に消滅していたことでしょう。
711系についてはメンテナンスが行き届いていないという大変な残念な状況になっていますが、北海道鉄道観光資源研究会の活動の功績に感謝する次第です。今後も北海道で活躍した名車両が完全に本線から引退ということになれば、車両の保存へ動き出すかもしれませんね。
キハ281系の引退も迫り、同車も北海道で初めての振り子式車両であり、北海道の鉄道における高速化に大きく貢献したという意味では、ぜひとも保存されるべき車両です。先頭部は鋼製ですが、車体はステンレス製なので、711系やキハ183系に比べて車両を綺麗に維持していくためのメンテナンスはしやすくなるはずです。
そして、撮影した残りの写真も紹介していきましょう。

ちゃんとオリジナルの駅名標もあります。「アグリ駅」です。ローマ字だとAguriと表され、意味は「農業の、農業関連の」という意味になります。Aguriculture(アグリカルチャー)という言葉を聞いたことがあると思いますが、こちらも「農業」という意味になり、「大地のテラス」が食文化と農文化の交流の役割を担うことと、且つ711系が保存されている周辺環境にふさわしい駅名になっています。

時間限定で車内に入ることもできます。2両中1両は車内がほぼそのまま現役時代の頃のままになっています。写真ではわかりづらいですが、避難用はしごが設置されているのも晩年ならではの光景です。
また、写真はありませんが、そのうちの1両は座席が完全に撤去され、会議スペースや交流場所として活用できるようになっていました。実際にどのように活用されているのかは不明です。

運転席にも入ることができます。

運転席の背の部分には行先表示の一覧があります。学園都市線でも一時期使用されていたので、石狩当別や北海道医療大学といった表示も用意されています。かつて快速「空港ライナー」から快速「エアポート」に変更された当初は、711系も定期的に乗り入れていましたが、それ以降は新千歳空港はほとんど使われたことがないと思います。
このような感じで711系は保存されています。
今週末は道央圏は天気もよいみたいなので、ぜひ「大地のテラス」に行き、711系の様子を確認しに行ってみてはいかがでしょうか?車体は綺麗に維持されていませんが、現役時代だった頃を思い出す懐かしい時間に包まれることでしょう。
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まずはレストランの写真から。隣接して地元の農産物や711系のグッズを販売している直売店もあります。
住所は、岩見沢市栗沢町上磯2203です。

1枚目の写真にもちょこっと写っていますが、店舗の裏に赤電車711系が保存されています。
実は昨年も来ましたが、記事にするタイミングを逃してしまったことと、どんよりとした曇り空だったので、紹介を見送っていました。
そして今回、ようやく紹介することができました。


北海道鉄道観光資源研究会では、4年前の2015年3月25日から『みんなに愛された「赤い電車」を残そう!プロジェクト』を実施しました。
JRなどと交渉したところ、車両2両分を購入することが決まり、運搬に約500万円がかかる見通しでした。その約半分は同研究会のメンバーなどで負担することになりましたが、残りの約230万円(234万円)の目途が立たず、鉄道ファンなどに協力を求め、ネットを通じて資金調達を実施しました。
まもなく安平町にオープンする道の駅「あびらD51ステーション」に保存するキハ183系スラントノーズ車と同様、クラウドファンディングで資金を募り、見事に保存に成功しました。クラウドファンディングで車両の保存が成功したのは、北海道ではこの711系のプロジェクトがまさに原点となります。
募集期間が21日間で同年4月14日がタイムリミットでした。キハ183系スラントノーズ車や現在実施されているニセコエクスプレスのクラウドファンディングに比べて日数が圧倒的に少ない中で始まりましたが、3日目にして早くも目標金額に達成し、最終的には412.9万円が集まりました。追加支援分については、車両の維持管理費に充てる予定としていました。
ということで、現在はどのようになっているかというと・・・




残念ながら車両のメンテナンスは行き届いておらず、無惨な姿になっています。
例えば現役の頃、苗穂工場出場時は真っ赤な綺麗な状態となりますが、苗穂工場入場直前など、車体は色褪せてしまい、赤電車にも関わらず、ピンク色のように見えてしまう場合がありました。保存先は屋根など風雪から少しでも守る建屋は設置されず、保存車両は365日間北海道のときには厳しい気候に耐えながら第二の人生を歩んでいます。当然、車両の状態を綺麗に維持していくためには、メンテナンス費用も多くかかります。
保存が達成された時点でのメンテナンス費用はおよそ180万円でした。しかし、711系は鋼製車体で、721系のようなステンレス製の車体に比べて車体の劣化速度が早いです。例えば北海道の場合、風雪や走行中(営業列車)に塗装面が傷つきます。そして割れた塗装面の隙間に入り込んだ細かい雪が水となり、やがて気温が下がることで凍結し、膨張することで塗装面破損という状況が起こります。現役の車両では、キハ40形気動車やキハ183系でもみられます。綺麗に保管、または車両を維持していくためには、その分手間も必要になります。
苗穂工場で移送前のキハ183系スラントノーズ車については、冬季は厳冬期の風雪から守るため、車体をブルーシートで被う冬囲い措置を行っています。
理由は美しく再度国鉄色に再塗装・復元されたキハ183系を安平町の道の駅「あびらD51ステーション」に綺麗な状態で保存するためです。仮にブルーシートで冬囲いしないまま放置してしまうと、果てには711系のように車体が劣化した無惨な姿になっていることでしょう。

修繕中とのことですが、一部では劣化した車両表面の上から再塗装している状況も確認でき、劣化した車体表面から塗装を上塗りする修繕作業で手一杯のようです。
4年前に掲載した記事で記載したことをそのまま当記事でも記載しますが、「車両を保存」することは、車両が引き渡されて設置場所に設置されて終わりではなく、地域のシンボル・財産として状態を維持し続けて初めて「保存」ではないでしょうか?
残念ながら、岩見沢市の「大地のテラス」に保存している711系では、修繕が行き届いていない無惨な姿のまま放置されています。
今後、道の駅「あびらD51ステーション」に保存するキハ183系では、ぜひとも綺麗な状態を維持し続けてほしいです。こちらは道の駅の敷地内に保存され、「大地のテラス」よりも人の往来が多いことでしょう。やはり保存して終わりというわけではなく、末永く綺麗な状態で維持してほしいというのが、支援をいただいた方々からの少なからずの願いではないでしょうか。保存をすると決めたからには、綺麗な状態で維持し続けてほしいと思います。
これから保存されるキハ183系がブルーシートで昨冬から冬囲いしたということは、711系の車体劣化の教訓が少なからず生かされているのではないでしょうか?車体を綺麗に維持していくという意味では、例えば特に車体の劣化が激しくなる冬季はブルーシートで覆う措置も検討すべきではないでしょうか?
北海道では711系や24系客車(北斗星)の前例があるので、それらを踏まえたうえで、末永く綺麗な状態を維持していくための方法を模索してほしいと思います。
しかし、北海道では鉄道車両の保存そのものが難しい状況にあります。本州のように室内で保存することができる大規模な鉄道博物館のような施設はありません。なので、貴重な車両が引退しても、こうして保存する動きがなければ、呆気なく廃車・解体されてしまいます。711系もキハ183系スラントノーズ車も保存に向けて北海道鉄道観光資源研究会が動き出さなかったら、間違いなく後世に語り継がれることのないまま、これらの車両は完全に消滅していたことでしょう。
711系についてはメンテナンスが行き届いていないという大変な残念な状況になっていますが、北海道鉄道観光資源研究会の活動の功績に感謝する次第です。今後も北海道で活躍した名車両が完全に本線から引退ということになれば、車両の保存へ動き出すかもしれませんね。
キハ281系の引退も迫り、同車も北海道で初めての振り子式車両であり、北海道の鉄道における高速化に大きく貢献したという意味では、ぜひとも保存されるべき車両です。先頭部は鋼製ですが、車体はステンレス製なので、711系やキハ183系に比べて車両を綺麗に維持していくためのメンテナンスはしやすくなるはずです。
そして、撮影した残りの写真も紹介していきましょう。

ちゃんとオリジナルの駅名標もあります。「アグリ駅」です。ローマ字だとAguriと表され、意味は「農業の、農業関連の」という意味になります。Aguriculture(アグリカルチャー)という言葉を聞いたことがあると思いますが、こちらも「農業」という意味になり、「大地のテラス」が食文化と農文化の交流の役割を担うことと、且つ711系が保存されている周辺環境にふさわしい駅名になっています。

時間限定で車内に入ることもできます。2両中1両は車内がほぼそのまま現役時代の頃のままになっています。写真ではわかりづらいですが、避難用はしごが設置されているのも晩年ならではの光景です。
また、写真はありませんが、そのうちの1両は座席が完全に撤去され、会議スペースや交流場所として活用できるようになっていました。実際にどのように活用されているのかは不明です。

運転席にも入ることができます。

運転席の背の部分には行先表示の一覧があります。学園都市線でも一時期使用されていたので、石狩当別や北海道医療大学といった表示も用意されています。かつて快速「空港ライナー」から快速「エアポート」に変更された当初は、711系も定期的に乗り入れていましたが、それ以降は新千歳空港はほとんど使われたことがないと思います。
このような感じで711系は保存されています。
今週末は道央圏は天気もよいみたいなので、ぜひ「大地のテラス」に行き、711系の様子を確認しに行ってみてはいかがでしょうか?車体は綺麗に維持されていませんが、現役時代だった頃を思い出す懐かしい時間に包まれることでしょう。
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