「保存か、解体かーー。」ニセコエクスプレスのクラウドファンディング終了まで24時間を切る!!
その他あれこれ - 2019年05月26日 (日)
ニセコエクスプレスの保存を実現するクラウドファンディング『ニセコエクスプレスの、里帰り。キハ183-5001号を守り抜く!』の期限が迫っています!
タイムリミットは明日の午後11時。そう、ついに保存と解体の命運を分ける期限まで24時間を切りました!
これまで北海道では、クラウドファンディングで711系や24系、そしてまもなく「道の駅あびらD51ステーション」で展示されるキハ183系スラントノーズ車を含め、これら3件で車両の展示・保存が実現しています。
それでは、4例目となるニセコエクスプレスは・・・

5月26日22時現在、支援額は第一目標達成金額の82%にあたる¥7,113,000です。記事作成中も支援額が上昇しています。クラウドファンディングの締切が明日5月27日(月)の午後11時です。
もし目標金額が達成されなければ、ニセコエクスプレスの保存が実現せずに解体されてしまいます。このままだとクラウドファンディングの目標金額に達成されずに解体されてしまう可能性も出てきたわけです。
上述に「第一目標達成金額」と記載させていただきましたが、この第一目標達成金額である860万円を達成すると、先頭部分を7メートルのみ切断して里帰りとなります。1両まるまる保存するためには、第二目標達成金額である950万円になります。
第一目標達成金額と第二目標達成金額で差額は90万円です。差額が決して大きいわけではありません。これには理由があり、車体の一部を切断して保存するとなると、冬季に除雪をする際、窓ガラスの破損を伴う場合があり、これを防ぐために車庫を建設する予定です。この車庫建設の費用に充てられるため、目標金額の差があまり大きくないというわけです。
第二目標金額達成の場合、車体を1両まるまる保存することができるため、車体切断によって車体強度が落ちることはありません。しかし、専用の車庫を建設するには莫大な費用がかかることから、車庫の建設費用については、第二目標金額の支援から捻出されないようです。1両まるまる保存する場合は、冬季の管理を考慮して有島記念公園の敷地内に保存する計画です。
まだ目標金額に到達していませんが、昨年10月に先に解体された2両の車内外部品の一部を保守部品としてJR北海道から既に譲渡されています。あとは目標金額達成のみが待たれ、保存活動の土台は既に完成しつつあります。
第一目標達成金額と第二目標達成金額の使用用途はそれぞれ以下のとおりです。
【第一目標金額:860万円】
車体購入費の一部+輸送費・路盤整備費の一部+車庫建設費の一部=650万円
返礼品費用+Readyfor手数料=210万円
【第二目標金額:950万円】
車体購入費の一部+輸送費・路盤整備費の一部=700万円
返礼品費用+Readyfor手数料=250万円
ここで、苗穂工場敷地内に留置され続けている最近の「キハ183-5001」の様子を写真で紹介します。



ここでニセコエクスプレスについて紹介します。
ニセコエクスプレスは1988年12月に団体・臨時列車用として新千歳空港からニセコ方面へアクセスする列車として北海道で4番目のジョイフルトレインとして誕生しました。
それまでのアルファコンチネンタルエクスプレス、フラノエクスプレス、トマムサホロエクスプレスが既存の車両の一部を活用した改造車だったのに対し、ニセコエクスプレスはJR北海道の苗穂工場で新製された完全自社製造車両です。「おおぞら」や「北斗」など、道内各地で活躍していた特急気動車と同様、形式はキハ183系とし、新たに5000番台を名乗りました。
全国的にも、ジョイフルトレインの車両は従来の余剰車両を活用した改造車が大半を占めましたが、車両を一から新製するという当時では珍しい導入例です。その後、クリスタルエクスプレス トマム&サホロやノースレインボーエクスプレスもJR北海道が自社製造しました。
他のリゾート気動車がハイデッカー構造をメインとしているのに対し、ニセコ方面という山岳路線の使用を想定し、床面はフラットな構造とされました。そのため、床面の嵩上げはJR東海のキハ85系と同程度の200mmに抑えられています。床面はフラットな構造でありながら、一般車両よりも床が嵩上げされている分、客室窓が721系などよりも低く感じられ、その分、北海道の雄大な車窓を堪能することができました。
床が嵩上げされていますが、その分屋根が高いため、室内空間は犠牲にされることなく、そのまま広い空間が維持されていました。
引退した編成を含むその他5編成を含め、完全にフラットな構造を採用した編成はニセコエクスプレスのみでした。アルファコンチネンタルエクスプレスなどの一部のリゾート気動車は先頭車の先頭部分の一部がハイデッカー構造になっていましたね。
ニセコ方面での活躍を中心に、シーズン以外は函館地区(リゾート大沼号)や日高方面(優駿浪漫号)、富良野方面(フラノラベンダーエクスプレス)、留萌方面(増毛エクスプレス)など、道内全域で活躍するオールマイティさも兼ね備え、北海道のリゾート気動車として29年弱にわたって活躍しました。
しかし、時代とともに団体需要や多客臨需要が少なくなり、多客臨の運行休止とともに稼働する機会を徐々に減らしていきました。ニセコエクスプレスを主に使用していた「ニセコスキーエクスプレス」や「フラノラベンダーエクスプレス」(1往復減便)、「フラノ紅葉エクスプレス」も設定されなくなり、晩年は1年で本線上を走行する機会も数回程度にまで落ち込んでいました。
特に近年では、3両という短い編成が観光シーズン中の需要に対応することができず、過去に同車の代わりに「フラノラベンダーエクスプレス」をキハ183系一般車が代走したという例もありました。ほかにも過去に、1編成あたりの定員数が多いキハ183系旭山動物園号が使用されたり、一昨年の秋に運行された特急「ニセコ号」もキハ183系一般車が使用されるなど、もはやどの方面においても活躍できる場が失われつつありました。
さらに追い打ちをかけるかのように、3年前の8月下旬から9月上旬にかけて同車によって特急「ニセコ号」が設定された際、初日に旭川方先頭車である「キハ183-5002」で冷房機器が故障した影響により、キハ183系一般車で代走となりました。 ここから、ニセコエクスプレスを使用した列車がさらに極端に減ってしまいました。
おそらくこの冷房機器の故障が、引退に追い込んだ最大の理由と思われます。
製造時期が好景気ということもあり、冷房装置を床置き式にしたり、プラグドアを採用したり、各座席にモニターつきのAV機器を装備するなど、デザインや設備優先で斬新な構造とされましたが、昨今の経営難という状況では、その構造が仇となり、部品がなくなり、修理が困難になってしまいました。
故障した冷房機器も特殊構造ゆえ、他の車両と共用することができない特殊な部品を使用するようで、この部品の調達が困難になり、修理そのものができない事態に陥りました。仮に修理や冷房機器の載せ替え(新品に交換など)を検討しても、臨時列車の削減という昨今の稼働状況を含め、最終的に引退という判断がされたと思います。
北海道という一年を通じて厳しい気候条件下で29年弱にわたって活躍してきたわけですが、車齢の割には、それに見合う走行距離には達していないと思われます。特に晩年は所属先の苗穂運転所で遊休状態となっており、年数回程度まで稼働する機会が減っていました。引退した直接の理由が老朽化ではなく、一部搭載機器の故障で修繕が困難になるという、鉄道車両としては過去にあまり例のない引退ではないでしょうか。
そして、保存に向けて動き出している「キハ183-5001」についてですが、稼働されなくなって厳冬期を2回越しました。写真のように
車体は汚れ、ほかの廃車となった車両と同じスペースに置かれています。
3両編成でしたが、札幌駅基準で旭川方先頭車「キハ183-5002」と中間車「キハ182-5001」は既に解体されています。残るはニセコ方先頭車「キハ183-5001」のみになりますが、同車もクラウドファンディングによる車両の保存が実現しなければ、そのまま車両は解体となります。
本線走行が年に限られているリゾート気動車であり、その勇姿をカメラに収める方は多いでしょう。しかし、これまで支援金額の上昇の推移から判断すると、実際に車両を保存するとなれば、話は別のようです。
こうした臨時列車用の特殊な車両を保存するケースは、全国的にも珍しいと思います。車両の保存に際し、選ばれる車両といえば、それこそ原形に近い車両だったり、定期営業列車として毎日使用されたその末期の姿のものだったりと、日常的に我々一般人と何かしら接点のあった車両が選ばれている傾向があります。臨時列車用の車両は現役の頃は注目されるケースが多いものの、実際に保存までたどり着くケースはほとんどありません。
詳細な理由について不明ですが、その車両や鉄道の歴史を末永く伝え続ける、あるいは振り返るという点では、そうした特殊な車両というのは保存には不向きで、オリジナルの原形を留めた車両の方が後々鉄道における歴史的価値が高くなるという傾向があるのではないかとみています。
北海道では鉄道車両を保存する施設や場所の確保が難しいことから、711系の保存まで鉄道車両の保存には消極的だった背景もありますが、臨時列車用の車両としていち早く鉄道模型やプラレールで製品化されたフラノエクスプレスですら、全ての車両が解体されました。北海道の初代リゾートトレイン、アルファコンチネンタルエクスプレスも苗穂工場敷地内の鉄道技術館に車体の一部が展示・保存されていますが、個人へ売却されなければ、その切断した車体以外は全てスクラップされていたでしょう。
全国的にもこうした特殊な車両は保存する傾向・事例が少ないことから、今回のクラウドファンディングはある意味で凄い挑戦をしていますね。
今回の場合、同じキハ183系のスラントノーズ車の保存のケースと比較すると、期間は3カ月でほぼ同じですが、前回の場合は同じ3カ月でもスラントノーズ車2両の保存に成功しています。しかも1100万円以上の支援が集まったわけですから、今回のほぼ倍になります。
その理由については、いまだに見い出せていません。しかし、同じキハ183系スラントノーズ車と比較して、支援額の上昇が鈍いということは言うまでもありません。ということは、ニセコエクスプレスには何か足りないものがあったということになります。それは一体何でしょうか?カッコよさでしょうか?それとも何か別のものでしょうか?




当ブログで過去に複数コメントをいただき、その内容が今回のクラウドファンディングの支援額の上昇の鈍さにも少なからず結びついているのではないかと感じているのがコレです。
今年の4月に711系が保存されている岩見沢市内にある「大地のテラス」に行き、711系の現在の状況を確認しに行きました。
同車のクラウドファンディングは2015年に実施され、僅かな期間でありながら車両の保存に見事に成功しました。この際はちょうど岩見沢運転所に疎開されていた車両を活用し、輸送費用を抑えたことで目標達成金額も低くすることができました。
しかし、屋根もない場所で北海道の厳しい気候に耐えて4年。残念ながらそこにあったのは綺麗な状態で整備された赤電車ではなく、管理者の想像をはるかに超えた痛々しい無残な姿でした。
「非常に残念」といったコメントや、中には「金返せ」といった厳しいコメントもありました。確かに、北海道で鉄道車両という大きな鉄の塊を綺麗な状態で維持していくことはとても大変であり、且つお金もかかることです。しかし、保存すると決めて実行に移したのであれば、車両を保存して終わりではなく、しっかりその後のアフターメンテナンスまで実施すべきです。資金が不足しているのであれば、それこそクラウドファンディングで再度支援を募集することはできないものなのでしょうか?
少なくとも、711系を保存するために支援した方々は、末永く綺麗に維持されることを願って支援に協力したことでしょう。写真のような痛々しい姿になるために保存に協力したわけではないでしょう。
ちょうど見学に行った時期がキハ183系スラントノーズ車の保存や「道の駅あびらD51ステーション」のオープンが目前に迫っていたこともあり、711系の修繕に手が回らなかったという理由もありますが、これが今後展示・保存されるキハ183系スラントノーズ車も数年後に711系と同じ状況になっていれば、さすがに管理者も疑ってしまいます。結局は展示して終わりだったのかと。
ニセコエクスプレスについても、1両まるまる保存となれば、車庫や屋根も設けず711系のような状態で保存されることになります。特にアフターメンテナンスについては大きく記載されておらず、目標達成金額以上の募集が仮にあった際の対応についても記載されていないことから、結局は展示・保存して終わりという先入観を持ってしまいます。
北海道には、鉄道車両を大切に保管できる屋内設備の整った大規模な鉄道博物館のような施設はありません。だからこそ、こうしてクラウドファンディングを通じて車両の保存に向けて動き出すわけですが、711系の痛々しい状態では必ずしもそれが正しい方法とは判断し難いです。
何事も場所が必要です。例えば、鉄道模型を走らせるにもレイアウトが必要ですし、そもそもそのレイアウトを展開できる場所・スペースが必要です。Amazonや楽天市場といったネット通販でも店舗は必要ありませんが、インターネットという場所・ネット環境がなければ、商売は成り立ちません。これと同じく、鉄道車両を保存するにもそれなりの場所が必要です。これまでのクラウドファンディングでも4件ともまず保存する場所が先に決まっています。保存する場所がなく、クラウドファンディングを実施しても意味ありません。
場所がないのであれば、広大な土地を確保し、こうしたクラウドファンディングを実施して支援を募集し、大型の北海道の鉄道関連施設を設けるという方法はどうでしょうか?そもそもまず、場所がなければ何も始まりませんよね。
今後も車両を保存する話はたくさん出てきます。管理者が想定し得る範囲内では、キハ281系とH5系は間違いなくこうした話が出てくるでしょう。前者は北海道の高速化に大いに貢献した立役者であり、北海道で最初の振り子式車両です。H5系については当分先の話になりますが、北海道新幹線開業時のデビュー車両です。どちらも北海道の鉄道の歴史を末永く伝え続ける、あるいは振り返るという点で大いに評価でき、且つ北海道の鉄道における歴史的価値が特に高い車両です。
そうすると、これらも展示・保存する場所が必要になります。これらの車両は道南の函館市内や北斗市内が妥当といったところでしょうか?
しかし、場所を確保できたとしても鉄道車両を複数の場所に点在させるべきなのでしょうか?管理者としてはこれは賛成できません。
北海道は広大な土地です。仮にニセコエクスプレスの保存が決まった(ニセコ町)として、将来的にキハ281系とH5系が函館市と北斗市にそれぞれ展示・保存されたとしましょう。そして、これまでクラウドファンディングで保存された711系(岩見沢市)、24系(北斗市)、キハ183系スラントノーズ車(安平町)と、移動しながら見物するには、大変な苦労を伴います。まして公共交通機関が発達していない箇所も少なからずありますから、自動車運転免許を所有していない方が保存車両を見物しに行くには難しい状況にあります。
このように、その地域で活躍した車両をそれぞれの場所で点在して車両を保存するのではなく、北海道の鉄道博物館(仮称)のような屋内施設に1カ所にまとめて保存し、且つそのような施設も鉄道の歴史とゆかりのある駅の付近に設置することで、自動車運転免許を所有の有無に関わらず、
「時間を選ばずに誰でも好きなときに綺麗な保存車両を見に行くことができる」
これが北海道で今後求められる鉄道車両の保存の在り方だと思います。
残念ながら、クラウドファンディングで実施している昨今のやり方では、場所を確保するだけで、その後のアフターメンテナンスやアクセス利便はほとんど考慮されていません。
鉄道車両の保存を優先すべきか、先に場所を確保し、車両を末永く綺麗に維持することを優先すべきか。
711系の状態を確認した後は、優先順位として後者が先という考えを持つようになりました。万が一、大型の室内型鉄道関連施設を設けるのであれば、一定期間の車両の保存は難しいかもしれません。しかし、後々のことを考慮すれば、それは決して無駄ではないと思っています。
ニセコエクスプレスの話題から遠のいてしまいましたが、いずれにしても24時間後には保存されるのか、解体されるのかが決まります。
「支援しろ」とは言いません。本当に支援すべきなのか、それは個々人でよく考え、且つ財布の中身とよく相談したうえで支援しましょう。決してお金を出すだけが支援ではないです。応援するだけでもそれは支援に匹敵する立派なことですよ。
参考URL:『ニセコエクスプレスの、里帰り。キハ183-5001号を守り抜く!』プロジェクト
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これまで北海道では、クラウドファンディングで711系や24系、そしてまもなく「道の駅あびらD51ステーション」で展示されるキハ183系スラントノーズ車を含め、これら3件で車両の展示・保存が実現しています。
それでは、4例目となるニセコエクスプレスは・・・

5月26日22時現在、支援額は第一目標達成金額の82%にあたる¥7,113,000です。記事作成中も支援額が上昇しています。クラウドファンディングの締切が明日5月27日(月)の午後11時です。
もし目標金額が達成されなければ、ニセコエクスプレスの保存が実現せずに解体されてしまいます。このままだとクラウドファンディングの目標金額に達成されずに解体されてしまう可能性も出てきたわけです。
上述に「第一目標達成金額」と記載させていただきましたが、この第一目標達成金額である860万円を達成すると、先頭部分を7メートルのみ切断して里帰りとなります。1両まるまる保存するためには、第二目標達成金額である950万円になります。
第一目標達成金額と第二目標達成金額で差額は90万円です。差額が決して大きいわけではありません。これには理由があり、車体の一部を切断して保存するとなると、冬季に除雪をする際、窓ガラスの破損を伴う場合があり、これを防ぐために車庫を建設する予定です。この車庫建設の費用に充てられるため、目標金額の差があまり大きくないというわけです。
第二目標金額達成の場合、車体を1両まるまる保存することができるため、車体切断によって車体強度が落ちることはありません。しかし、専用の車庫を建設するには莫大な費用がかかることから、車庫の建設費用については、第二目標金額の支援から捻出されないようです。1両まるまる保存する場合は、冬季の管理を考慮して有島記念公園の敷地内に保存する計画です。
まだ目標金額に到達していませんが、昨年10月に先に解体された2両の車内外部品の一部を保守部品としてJR北海道から既に譲渡されています。あとは目標金額達成のみが待たれ、保存活動の土台は既に完成しつつあります。
第一目標達成金額と第二目標達成金額の使用用途はそれぞれ以下のとおりです。
【第一目標金額:860万円】
車体購入費の一部+輸送費・路盤整備費の一部+車庫建設費の一部=650万円
返礼品費用+Readyfor手数料=210万円
【第二目標金額:950万円】
車体購入費の一部+輸送費・路盤整備費の一部=700万円
返礼品費用+Readyfor手数料=250万円
ここで、苗穂工場敷地内に留置され続けている最近の「キハ183-5001」の様子を写真で紹介します。



ここでニセコエクスプレスについて紹介します。
ニセコエクスプレスは1988年12月に団体・臨時列車用として新千歳空港からニセコ方面へアクセスする列車として北海道で4番目のジョイフルトレインとして誕生しました。
それまでのアルファコンチネンタルエクスプレス、フラノエクスプレス、トマムサホロエクスプレスが既存の車両の一部を活用した改造車だったのに対し、ニセコエクスプレスはJR北海道の苗穂工場で新製された完全自社製造車両です。「おおぞら」や「北斗」など、道内各地で活躍していた特急気動車と同様、形式はキハ183系とし、新たに5000番台を名乗りました。
全国的にも、ジョイフルトレインの車両は従来の余剰車両を活用した改造車が大半を占めましたが、車両を一から新製するという当時では珍しい導入例です。その後、クリスタルエクスプレス トマム&サホロやノースレインボーエクスプレスもJR北海道が自社製造しました。
他のリゾート気動車がハイデッカー構造をメインとしているのに対し、ニセコ方面という山岳路線の使用を想定し、床面はフラットな構造とされました。そのため、床面の嵩上げはJR東海のキハ85系と同程度の200mmに抑えられています。床面はフラットな構造でありながら、一般車両よりも床が嵩上げされている分、客室窓が721系などよりも低く感じられ、その分、北海道の雄大な車窓を堪能することができました。
床が嵩上げされていますが、その分屋根が高いため、室内空間は犠牲にされることなく、そのまま広い空間が維持されていました。
引退した編成を含むその他5編成を含め、完全にフラットな構造を採用した編成はニセコエクスプレスのみでした。アルファコンチネンタルエクスプレスなどの一部のリゾート気動車は先頭車の先頭部分の一部がハイデッカー構造になっていましたね。
ニセコ方面での活躍を中心に、シーズン以外は函館地区(リゾート大沼号)や日高方面(優駿浪漫号)、富良野方面(フラノラベンダーエクスプレス)、留萌方面(増毛エクスプレス)など、道内全域で活躍するオールマイティさも兼ね備え、北海道のリゾート気動車として29年弱にわたって活躍しました。
しかし、時代とともに団体需要や多客臨需要が少なくなり、多客臨の運行休止とともに稼働する機会を徐々に減らしていきました。ニセコエクスプレスを主に使用していた「ニセコスキーエクスプレス」や「フラノラベンダーエクスプレス」(1往復減便)、「フラノ紅葉エクスプレス」も設定されなくなり、晩年は1年で本線上を走行する機会も数回程度にまで落ち込んでいました。
特に近年では、3両という短い編成が観光シーズン中の需要に対応することができず、過去に同車の代わりに「フラノラベンダーエクスプレス」をキハ183系一般車が代走したという例もありました。ほかにも過去に、1編成あたりの定員数が多いキハ183系旭山動物園号が使用されたり、一昨年の秋に運行された特急「ニセコ号」もキハ183系一般車が使用されるなど、もはやどの方面においても活躍できる場が失われつつありました。
さらに追い打ちをかけるかのように、3年前の8月下旬から9月上旬にかけて同車によって特急「ニセコ号」が設定された際、初日に旭川方先頭車である「キハ183-5002」で冷房機器が故障した影響により、キハ183系一般車で代走となりました。 ここから、ニセコエクスプレスを使用した列車がさらに極端に減ってしまいました。
おそらくこの冷房機器の故障が、引退に追い込んだ最大の理由と思われます。
製造時期が好景気ということもあり、冷房装置を床置き式にしたり、プラグドアを採用したり、各座席にモニターつきのAV機器を装備するなど、デザインや設備優先で斬新な構造とされましたが、昨今の経営難という状況では、その構造が仇となり、部品がなくなり、修理が困難になってしまいました。
故障した冷房機器も特殊構造ゆえ、他の車両と共用することができない特殊な部品を使用するようで、この部品の調達が困難になり、修理そのものができない事態に陥りました。仮に修理や冷房機器の載せ替え(新品に交換など)を検討しても、臨時列車の削減という昨今の稼働状況を含め、最終的に引退という判断がされたと思います。
北海道という一年を通じて厳しい気候条件下で29年弱にわたって活躍してきたわけですが、車齢の割には、それに見合う走行距離には達していないと思われます。特に晩年は所属先の苗穂運転所で遊休状態となっており、年数回程度まで稼働する機会が減っていました。引退した直接の理由が老朽化ではなく、一部搭載機器の故障で修繕が困難になるという、鉄道車両としては過去にあまり例のない引退ではないでしょうか。
そして、保存に向けて動き出している「キハ183-5001」についてですが、稼働されなくなって厳冬期を2回越しました。写真のように
車体は汚れ、ほかの廃車となった車両と同じスペースに置かれています。
3両編成でしたが、札幌駅基準で旭川方先頭車「キハ183-5002」と中間車「キハ182-5001」は既に解体されています。残るはニセコ方先頭車「キハ183-5001」のみになりますが、同車もクラウドファンディングによる車両の保存が実現しなければ、そのまま車両は解体となります。
本線走行が年に限られているリゾート気動車であり、その勇姿をカメラに収める方は多いでしょう。しかし、これまで支援金額の上昇の推移から判断すると、実際に車両を保存するとなれば、話は別のようです。
こうした臨時列車用の特殊な車両を保存するケースは、全国的にも珍しいと思います。車両の保存に際し、選ばれる車両といえば、それこそ原形に近い車両だったり、定期営業列車として毎日使用されたその末期の姿のものだったりと、日常的に我々一般人と何かしら接点のあった車両が選ばれている傾向があります。臨時列車用の車両は現役の頃は注目されるケースが多いものの、実際に保存までたどり着くケースはほとんどありません。
詳細な理由について不明ですが、その車両や鉄道の歴史を末永く伝え続ける、あるいは振り返るという点では、そうした特殊な車両というのは保存には不向きで、オリジナルの原形を留めた車両の方が後々鉄道における歴史的価値が高くなるという傾向があるのではないかとみています。
北海道では鉄道車両を保存する施設や場所の確保が難しいことから、711系の保存まで鉄道車両の保存には消極的だった背景もありますが、臨時列車用の車両としていち早く鉄道模型やプラレールで製品化されたフラノエクスプレスですら、全ての車両が解体されました。北海道の初代リゾートトレイン、アルファコンチネンタルエクスプレスも苗穂工場敷地内の鉄道技術館に車体の一部が展示・保存されていますが、個人へ売却されなければ、その切断した車体以外は全てスクラップされていたでしょう。
全国的にもこうした特殊な車両は保存する傾向・事例が少ないことから、今回のクラウドファンディングはある意味で凄い挑戦をしていますね。
今回の場合、同じキハ183系のスラントノーズ車の保存のケースと比較すると、期間は3カ月でほぼ同じですが、前回の場合は同じ3カ月でもスラントノーズ車2両の保存に成功しています。しかも1100万円以上の支援が集まったわけですから、今回のほぼ倍になります。
その理由については、いまだに見い出せていません。しかし、同じキハ183系スラントノーズ車と比較して、支援額の上昇が鈍いということは言うまでもありません。ということは、ニセコエクスプレスには何か足りないものがあったということになります。それは一体何でしょうか?カッコよさでしょうか?それとも何か別のものでしょうか?




当ブログで過去に複数コメントをいただき、その内容が今回のクラウドファンディングの支援額の上昇の鈍さにも少なからず結びついているのではないかと感じているのがコレです。
今年の4月に711系が保存されている岩見沢市内にある「大地のテラス」に行き、711系の現在の状況を確認しに行きました。
同車のクラウドファンディングは2015年に実施され、僅かな期間でありながら車両の保存に見事に成功しました。この際はちょうど岩見沢運転所に疎開されていた車両を活用し、輸送費用を抑えたことで目標達成金額も低くすることができました。
しかし、屋根もない場所で北海道の厳しい気候に耐えて4年。残念ながらそこにあったのは綺麗な状態で整備された赤電車ではなく、管理者の想像をはるかに超えた痛々しい無残な姿でした。
「非常に残念」といったコメントや、中には「金返せ」といった厳しいコメントもありました。確かに、北海道で鉄道車両という大きな鉄の塊を綺麗な状態で維持していくことはとても大変であり、且つお金もかかることです。しかし、保存すると決めて実行に移したのであれば、車両を保存して終わりではなく、しっかりその後のアフターメンテナンスまで実施すべきです。資金が不足しているのであれば、それこそクラウドファンディングで再度支援を募集することはできないものなのでしょうか?
少なくとも、711系を保存するために支援した方々は、末永く綺麗に維持されることを願って支援に協力したことでしょう。写真のような痛々しい姿になるために保存に協力したわけではないでしょう。
ちょうど見学に行った時期がキハ183系スラントノーズ車の保存や「道の駅あびらD51ステーション」のオープンが目前に迫っていたこともあり、711系の修繕に手が回らなかったという理由もありますが、これが今後展示・保存されるキハ183系スラントノーズ車も数年後に711系と同じ状況になっていれば、さすがに管理者も疑ってしまいます。結局は展示して終わりだったのかと。
ニセコエクスプレスについても、1両まるまる保存となれば、車庫や屋根も設けず711系のような状態で保存されることになります。特にアフターメンテナンスについては大きく記載されておらず、目標達成金額以上の募集が仮にあった際の対応についても記載されていないことから、結局は展示・保存して終わりという先入観を持ってしまいます。
北海道には、鉄道車両を大切に保管できる屋内設備の整った大規模な鉄道博物館のような施設はありません。だからこそ、こうしてクラウドファンディングを通じて車両の保存に向けて動き出すわけですが、711系の痛々しい状態では必ずしもそれが正しい方法とは判断し難いです。
何事も場所が必要です。例えば、鉄道模型を走らせるにもレイアウトが必要ですし、そもそもそのレイアウトを展開できる場所・スペースが必要です。Amazonや楽天市場といったネット通販でも店舗は必要ありませんが、インターネットという場所・ネット環境がなければ、商売は成り立ちません。これと同じく、鉄道車両を保存するにもそれなりの場所が必要です。これまでのクラウドファンディングでも4件ともまず保存する場所が先に決まっています。保存する場所がなく、クラウドファンディングを実施しても意味ありません。
場所がないのであれば、広大な土地を確保し、こうしたクラウドファンディングを実施して支援を募集し、大型の北海道の鉄道関連施設を設けるという方法はどうでしょうか?そもそもまず、場所がなければ何も始まりませんよね。
今後も車両を保存する話はたくさん出てきます。管理者が想定し得る範囲内では、キハ281系とH5系は間違いなくこうした話が出てくるでしょう。前者は北海道の高速化に大いに貢献した立役者であり、北海道で最初の振り子式車両です。H5系については当分先の話になりますが、北海道新幹線開業時のデビュー車両です。どちらも北海道の鉄道の歴史を末永く伝え続ける、あるいは振り返るという点で大いに評価でき、且つ北海道の鉄道における歴史的価値が特に高い車両です。
そうすると、これらも展示・保存する場所が必要になります。これらの車両は道南の函館市内や北斗市内が妥当といったところでしょうか?
しかし、場所を確保できたとしても鉄道車両を複数の場所に点在させるべきなのでしょうか?管理者としてはこれは賛成できません。
北海道は広大な土地です。仮にニセコエクスプレスの保存が決まった(ニセコ町)として、将来的にキハ281系とH5系が函館市と北斗市にそれぞれ展示・保存されたとしましょう。そして、これまでクラウドファンディングで保存された711系(岩見沢市)、24系(北斗市)、キハ183系スラントノーズ車(安平町)と、移動しながら見物するには、大変な苦労を伴います。まして公共交通機関が発達していない箇所も少なからずありますから、自動車運転免許を所有していない方が保存車両を見物しに行くには難しい状況にあります。
このように、その地域で活躍した車両をそれぞれの場所で点在して車両を保存するのではなく、北海道の鉄道博物館(仮称)のような屋内施設に1カ所にまとめて保存し、且つそのような施設も鉄道の歴史とゆかりのある駅の付近に設置することで、自動車運転免許を所有の有無に関わらず、
「時間を選ばずに誰でも好きなときに綺麗な保存車両を見に行くことができる」
これが北海道で今後求められる鉄道車両の保存の在り方だと思います。
残念ながら、クラウドファンディングで実施している昨今のやり方では、場所を確保するだけで、その後のアフターメンテナンスやアクセス利便はほとんど考慮されていません。
鉄道車両の保存を優先すべきか、先に場所を確保し、車両を末永く綺麗に維持することを優先すべきか。
711系の状態を確認した後は、優先順位として後者が先という考えを持つようになりました。万が一、大型の室内型鉄道関連施設を設けるのであれば、一定期間の車両の保存は難しいかもしれません。しかし、後々のことを考慮すれば、それは決して無駄ではないと思っています。
ニセコエクスプレスの話題から遠のいてしまいましたが、いずれにしても24時間後には保存されるのか、解体されるのかが決まります。
「支援しろ」とは言いません。本当に支援すべきなのか、それは個々人でよく考え、且つ財布の中身とよく相談したうえで支援しましょう。決してお金を出すだけが支援ではないです。応援するだけでもそれは支援に匹敵する立派なことですよ。
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令和初投稿です! 2019/05/10
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