使われていない現存するキハ183系
キハ183系 - 2019年07月22日 (月)
ここ最近、一部車両で移動があったようですが、苗穂駅前には、長らくキハ183系が7両留置されていました。

留置されていた車両は、元々函館運輸所(函ハコ)に所属していた400番台や500番台の先頭車などです。いずれも長らく営業列車に入ることなく、留置されたままの状態が続いていました。
記憶にある限りでは、これらの車両は昨年7月1日から(一部は6月30日から)営業運転に入っていないと思われます。昨年の7月といえば、札幌・旭川~網走間の「オホーツク」・「大雪」の編成変更が実施されたときでした。
キロハ182形0番台の老朽化に伴い、その代替として旧「北斗」用の車両を転用し、大半の車両も方向転換したうえで指定席や自由席の位置をほかの特急列車と極力合わせ、且つ旭川駅で接続する「ライラック」とも座席の位置を極力合わせることになりました。


その後、昨年度に発表されていた「安全投資と修繕に関する5年間の計画」では、特急気動車17両の老朽取替を実施する予定でした。実際に老朽取替によって廃車になった車両はなく、長らく苗穂駅前に留置されているこれらキハ183系も2019年4月時点で保留車とはなっていません。
しかし、これらの車両は運行上制約を抱えている車両でもあるのです。
キハ183系を組成する際にルールがあり、そのルールとは主に、編成全体のサービス電源を確保することです。サービス電源がなければ、車内における冷暖房機器、照明などが機能しなくなるわけです。このサービス電源を確保するために先頭車の存在が非常に重要になってくるわけです。キハ183系の先頭車の床下には最大4両分の給電能力を有する電源機関を搭載しています。
サービス電源を確保する電源機関はキハ183系の先頭車に搭載されます。残存する中間車については搭載する車両はありません。かつてキハ184形0番台も搭載されていましたが、既に全廃となっています。
しかし例外があり、先頭車でありながら、電源機関を搭載しない車両も存在します。


それがキハ183形500番台・400番台がそれに該当します。400番台は500番台から改番された車両で波動用として活用すべく、出力適正化(パワーダウン)を図り、最高運転速度も110km/hに下げられました。500番台からの改番のため、こちらも電源機関を搭載していません。
特急列車の短編成化に伴い、中間電源車のキハ184形0番台の余剰を回避すべく製造されたのがキハ183形500番台です。キハ184形0番台と共に使用することで既存の電源車を有効活用する策がとられました。電源機関を搭載しない代わりに、トイレ・洗面所を設置し、大出力エンジンも合わせて搭載しました。この大出力エンジンとは、「北斗」として高速化に貢献した同型のエンジンであり、後に一時的な使用休止を余儀なくされます。
キハ184形0番台と編成内で連結して先頭車として活躍することが多かったですが、相方のキハ184形0番台が先に引退してしまったことにより、電源機関をもたない500番台・400番台の先頭車は本来の先頭車としての機能を果たすことが難しい状況になり、かつての「サロベツ」や現在の「オホーツク」・「大雪」で増結用の車両として活躍の場が限られてしまいました。
2017年3月ダイヤ改正までキハ183系苗穂車の車両繰りに大変苦慮した過去があります。当時の「オホーツク」・「サロベツ」がそれに該当し、中間車は0番台が豊富に用意されているものの、先頭車両が不足する事態に陥りました。鹿との接触やそれの衝突を回避すべく、急ブレーキをかけてできる車輪の傷の影響により、列車が運休となった際はたとえ1本の編成が使えなくなったとしても致命的な痛手を負うほどの事態にまで陥りました。
その際に、仮に現状で電源機関を持たない400番台や500番台が電源機関を搭載して先頭車両として使用できるような状況であれば、あのときのように車両繰りは苦慮しなかったことでしょう。


写真はキハ183系で運行されていた末期の特急「サロベツ」です。写真のように、電源機関を持たない先頭車は中間車の、しかも増結用としての使用に限られていました。
近年で先頭車として使用された例は、不定期ながら札幌運転所(札サウ)への車輪削正のための回送列車と、一度末期のキハ183系特急「サロベツ」でも稚内から札幌へ向かう際に1回設定されたことがあったと思います。先頭車は4両分の電源を供給することができるようですが、実際に営業運転や本線上で使用する際は3両までがほとんどのようです。
これらの車両は、旧「北斗」用の機関換装車が充当された場合も同じ編成で組成することができず、引き続き制約を抱えたままです。さらに400番台については、残存するキハ183系で唯一最高運転速度が110km/h対応であり、「宗谷」・「サロベツ」の代走ではもう使えない状態です。
では廃車にせず、残しておく必要が一体あるのでしょうか?
車両は使われなくなっても部品取りとしての役割はまだ残されています。
なぜ部品取りとしての役割が重要かというと、機関換装を実施したキハ183系について、この機関換装を実施した理由というのが、出火事故を起因するためのものではなく、あくまで様々な部品が生産中止となり、メンテナンス体制に苦慮していることでした。機関換装前は、500番台・400番台と同型のエンジンを搭載しており(一部車両)、その同型のエンジンを搭載する車両は現在も「オホーツク」・「大雪」で使用されています。その現役車両に対し、万が一の故障などに備えて使われなくなった車両をあえて残しているのではないでしょうか。
キハ183系の場合は製造時期が番台区分によって異なり、性能や仕様も大きく異なります。しかし、こうした車両別の特殊な構造や改造は後に欠点を生み、昨今のように全く使われない言わば鉄くずと同じような状態になってしまいます。
今後はキハ183系を含め、既存の特急気動車は全てキハ261系に置き換える計画です。キハ261系で置き換えていくためには、
①計画的な車両の老朽取替計画の実施
②方面別・列車別の専用改造は実施しない
③性能を統一
以上の3点を維持しながら製造していくべきです。
車両の老朽取替計画の実施は言うまでもありません。晩年のキハ183系初期車は老朽・劣化が著しく進行し、車両メンテナンスに大変苦慮しました。その影響でときには連日編成変更を余儀なくされたときもありました。それまでの高速化や収益を見込める路線や列車を最優先とした方針が招いた結果でした。
方面別・列車別に専用改造を実施すると、その列車で使われなくなった際、その後の車両繰りや使用方法に苦慮することになります。キハ183系の場合は「北斗」と「サロベツ」で、前者が130km/h対応化改造、後者が車内販売を実施しない代わりに、移動販売機や洗面所を設置し、その代わりに定員数が削減された車両があります。
いざ転用して使用するとなると、他の車両と同じ編成で組むことができなかったり、定員数が少ないため、車両を増結するケースや、臨時用として重宝せざるを得ない状況になってしまいます。
これらの理由から、キハ261系を製造し続けるには、既存の車両と同一仕様で製造することが望ましいことは言うまでもありません。キハ183系のように、方面別・列車別の専用改造を実施すると、同じ失敗を繰り返すだけです。これだけは避けなければなりません。
これらの使われていない車両はたとえ最高運転速度が110km/hだろうと、電源機関を搭載していないだろうと、旭川~富良野間に設定されている「ふらの・びえい号」や、今年も運行される特急「ニセコ号」で使用できるはずです。片方の先頭車に電源機関を搭載する車両を連結すればいいだけですから、営業運転上全く使えない車両というわけではないのです。
それでも登板することがないということは、それ以外にも何らかの理由があり、営業運転上使用できない何らかの制約を抱えているということになります。これらの大半の車両は、函館運輸所(函ハコ)で少なくとも7年以上は波動輸送用として待機していた車両であり、定期営業列車として使用することはほとんどありませんでした。ほかの車両に比べて走行距離も少ないはずで、そのような車両は使えなくなっている現状は非常に残念でなりません。
キハ183系の活躍期間も残り少ないと思われますが、何らかの活用策が検討されることを期待しましょう。
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留置されていた車両は、元々函館運輸所(函ハコ)に所属していた400番台や500番台の先頭車などです。いずれも長らく営業列車に入ることなく、留置されたままの状態が続いていました。
記憶にある限りでは、これらの車両は昨年7月1日から(一部は6月30日から)営業運転に入っていないと思われます。昨年の7月といえば、札幌・旭川~網走間の「オホーツク」・「大雪」の編成変更が実施されたときでした。
キロハ182形0番台の老朽化に伴い、その代替として旧「北斗」用の車両を転用し、大半の車両も方向転換したうえで指定席や自由席の位置をほかの特急列車と極力合わせ、且つ旭川駅で接続する「ライラック」とも座席の位置を極力合わせることになりました。


その後、昨年度に発表されていた「安全投資と修繕に関する5年間の計画」では、特急気動車17両の老朽取替を実施する予定でした。実際に老朽取替によって廃車になった車両はなく、長らく苗穂駅前に留置されているこれらキハ183系も2019年4月時点で保留車とはなっていません。
しかし、これらの車両は運行上制約を抱えている車両でもあるのです。
キハ183系を組成する際にルールがあり、そのルールとは主に、編成全体のサービス電源を確保することです。サービス電源がなければ、車内における冷暖房機器、照明などが機能しなくなるわけです。このサービス電源を確保するために先頭車の存在が非常に重要になってくるわけです。キハ183系の先頭車の床下には最大4両分の給電能力を有する電源機関を搭載しています。
サービス電源を確保する電源機関はキハ183系の先頭車に搭載されます。残存する中間車については搭載する車両はありません。かつてキハ184形0番台も搭載されていましたが、既に全廃となっています。
しかし例外があり、先頭車でありながら、電源機関を搭載しない車両も存在します。


それがキハ183形500番台・400番台がそれに該当します。400番台は500番台から改番された車両で波動用として活用すべく、出力適正化(パワーダウン)を図り、最高運転速度も110km/hに下げられました。500番台からの改番のため、こちらも電源機関を搭載していません。
特急列車の短編成化に伴い、中間電源車のキハ184形0番台の余剰を回避すべく製造されたのがキハ183形500番台です。キハ184形0番台と共に使用することで既存の電源車を有効活用する策がとられました。電源機関を搭載しない代わりに、トイレ・洗面所を設置し、大出力エンジンも合わせて搭載しました。この大出力エンジンとは、「北斗」として高速化に貢献した同型のエンジンであり、後に一時的な使用休止を余儀なくされます。
キハ184形0番台と編成内で連結して先頭車として活躍することが多かったですが、相方のキハ184形0番台が先に引退してしまったことにより、電源機関をもたない500番台・400番台の先頭車は本来の先頭車としての機能を果たすことが難しい状況になり、かつての「サロベツ」や現在の「オホーツク」・「大雪」で増結用の車両として活躍の場が限られてしまいました。
2017年3月ダイヤ改正までキハ183系苗穂車の車両繰りに大変苦慮した過去があります。当時の「オホーツク」・「サロベツ」がそれに該当し、中間車は0番台が豊富に用意されているものの、先頭車両が不足する事態に陥りました。鹿との接触やそれの衝突を回避すべく、急ブレーキをかけてできる車輪の傷の影響により、列車が運休となった際はたとえ1本の編成が使えなくなったとしても致命的な痛手を負うほどの事態にまで陥りました。
その際に、仮に現状で電源機関を持たない400番台や500番台が電源機関を搭載して先頭車両として使用できるような状況であれば、あのときのように車両繰りは苦慮しなかったことでしょう。


写真はキハ183系で運行されていた末期の特急「サロベツ」です。写真のように、電源機関を持たない先頭車は中間車の、しかも増結用としての使用に限られていました。
近年で先頭車として使用された例は、不定期ながら札幌運転所(札サウ)への車輪削正のための回送列車と、一度末期のキハ183系特急「サロベツ」でも稚内から札幌へ向かう際に1回設定されたことがあったと思います。先頭車は4両分の電源を供給することができるようですが、実際に営業運転や本線上で使用する際は3両までがほとんどのようです。
これらの車両は、旧「北斗」用の機関換装車が充当された場合も同じ編成で組成することができず、引き続き制約を抱えたままです。さらに400番台については、残存するキハ183系で唯一最高運転速度が110km/h対応であり、「宗谷」・「サロベツ」の代走ではもう使えない状態です。
では廃車にせず、残しておく必要が一体あるのでしょうか?
車両は使われなくなっても部品取りとしての役割はまだ残されています。
なぜ部品取りとしての役割が重要かというと、機関換装を実施したキハ183系について、この機関換装を実施した理由というのが、出火事故を起因するためのものではなく、あくまで様々な部品が生産中止となり、メンテナンス体制に苦慮していることでした。機関換装前は、500番台・400番台と同型のエンジンを搭載しており(一部車両)、その同型のエンジンを搭載する車両は現在も「オホーツク」・「大雪」で使用されています。その現役車両に対し、万が一の故障などに備えて使われなくなった車両をあえて残しているのではないでしょうか。
キハ183系の場合は製造時期が番台区分によって異なり、性能や仕様も大きく異なります。しかし、こうした車両別の特殊な構造や改造は後に欠点を生み、昨今のように全く使われない言わば鉄くずと同じような状態になってしまいます。
今後はキハ183系を含め、既存の特急気動車は全てキハ261系に置き換える計画です。キハ261系で置き換えていくためには、
①計画的な車両の老朽取替計画の実施
②方面別・列車別の専用改造は実施しない
③性能を統一
以上の3点を維持しながら製造していくべきです。
車両の老朽取替計画の実施は言うまでもありません。晩年のキハ183系初期車は老朽・劣化が著しく進行し、車両メンテナンスに大変苦慮しました。その影響でときには連日編成変更を余儀なくされたときもありました。それまでの高速化や収益を見込める路線や列車を最優先とした方針が招いた結果でした。
方面別・列車別に専用改造を実施すると、その列車で使われなくなった際、その後の車両繰りや使用方法に苦慮することになります。キハ183系の場合は「北斗」と「サロベツ」で、前者が130km/h対応化改造、後者が車内販売を実施しない代わりに、移動販売機や洗面所を設置し、その代わりに定員数が削減された車両があります。
いざ転用して使用するとなると、他の車両と同じ編成で組むことができなかったり、定員数が少ないため、車両を増結するケースや、臨時用として重宝せざるを得ない状況になってしまいます。
これらの理由から、キハ261系を製造し続けるには、既存の車両と同一仕様で製造することが望ましいことは言うまでもありません。キハ183系のように、方面別・列車別の専用改造を実施すると、同じ失敗を繰り返すだけです。これだけは避けなければなりません。
これらの使われていない車両はたとえ最高運転速度が110km/hだろうと、電源機関を搭載していないだろうと、旭川~富良野間に設定されている「ふらの・びえい号」や、今年も運行される特急「ニセコ号」で使用できるはずです。片方の先頭車に電源機関を搭載する車両を連結すればいいだけですから、営業運転上全く使えない車両というわけではないのです。
それでも登板することがないということは、それ以外にも何らかの理由があり、営業運転上使用できない何らかの制約を抱えているということになります。これらの大半の車両は、函館運輸所(函ハコ)で少なくとも7年以上は波動輸送用として待機していた車両であり、定期営業列車として使用することはほとんどありませんでした。ほかの車両に比べて走行距離も少ないはずで、そのような車両は使えなくなっている現状は非常に残念でなりません。
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