【コラム】キハ283系の最高運転速度が110km/hに制限されている理由
コラム - 2020年02月01日 (土)
今回はキハ283系について取り上げたいと思います。

キハ283系といえば、北海道の特急気動車において、最も高速化に貢献した車両といっても過言ではありません。先にキハ281系がデビューしていますが、キハ283系のデビューが控え、早々に製造が打ち切られ、製造数はキハ283系の1/2にも満たない両数です。
「スーパー北斗」の最速達列車はキハ281系でしたが、「スーパーおおぞら」や「スーパーとかち」の高速化に大いに貢献し、「スーパー北斗」にも一部列車で投入され、道内における主要気動車特急のそのほとんどに充当しました。
転機が訪れたのは、2011年5月27日です。石勝線の清風山信号場で当時の特急「スーパーおおぞら14号」で脱線火災事故が発生しました。それを機に、同車は車両トラブルが相次ぐようになります。
結果的に、キハ183系からも出火事故が発生し、車両繰りが窮地な状況となった2013年に車両メンテナンス体制強化、車両の負荷を減らすべく、11月1日に減速・減便ダイヤを施行するようになります。最高運転速度の抑制及び、運用を減らし、1日に稼働する車両数を減らすことで、車両のメンテナンス体制と時間を十分に確保することがねらいでした。
キハ283系については、「スーパー北斗」、「スーパーとかち」の定期列車から撤退、「スーパーおおぞら」の1往復減便などが実施され、最高運転速度がほかの列車が現状維持または120km/hまでしか落とされなかったのに対して、110km/hまで落とされました。キハ183系初期車と変わらない速度になってしまいました。
これを機に、相次ぐトラブルは解消されて現在に至りましたが、その間、特に繁忙期における輸送力不足に大きな問題として上げられ、繁忙期にも関わらず、十分な増結ができず、結果的に利用者の負担を余儀なくされました。特に函館方面に関しては、繁忙期のみならず、通常期でもそうした状況が見られました。
車両繰りも安定し、2016年3月の北海道新幹線開業のダイヤ改正を機に、函館方面では本数の増強や所定編成の増強を行い、それ以降は全道各地の特急列車で繁忙期増結も通常どおり実施されるようになりました。
さて、ここからが本題ですが、なぜキハ283系だけ最高運転速度が一気に110km/hまで落とされたのでしょうか?
これには、キハ283系だけが該当するさまざまな問題があります。
まず、110km/hまで落としている理由としては、車体強度(剛性)が他の車両と比較して不足しており、高速走行時において振動が他の車両よりも多く発生してしまうからです。利用者に対しては、さらに乗り心地も考慮しなければなりません。その振動が発生する許容範囲のレベルが最高運転速度110km/hになるわけです。
車体剛性が不足している理由としては、車体が軽量であることが上げられます。
自動車の領域でもそうですが、車体の剛性を上げ、且つ軽量化することは難しい項目でもあります。軽量化するということは、部品を減らしたり、ボディの板厚を少なくしたりすることが一般的です。本当にお金をかけて実施するのであれば、部品のアルミ化やミリグラム単位で部品を設計・開発を行い、それはレース活動を通じて行われるでしょう。
昨今ではスポーツタイプの自動車のみならず、普段の生活に使うレベルの自動車までもボディ剛性を重視する時代になりました。理由は、乗り心地や操縦安定性を高めるためです。ボディ剛性が不足すると、走行中に不快な揺れが発生したり、例えば一般道でマンホールや段差を踏んだ際にも不快な揺れや不安定になることがあります。特に高速道路でその違いがわかるでしょう。速度が高い状態で走っていると、少しの段差の衝撃でハンドルが取られるような症状が見られれば、ボディ剛性が不足している証拠です。
加えて、年々高まる衝突安全基準もクリアしなければならないため、年々自動車が進化するにつれ、車両の重量も重くなってしまいます。各メーカーは低重心化を図った最新のプラットフォームで乗り切っていますが、自動車の重量は増えるばかりです。
安全基準を高めたり、ボディ剛性を向上させれば、重量が増えるのが一般的です。良き例がJR西日本のキハ189系です。振り子式車両でもなく、北海道の特急気動車のように、先頭部分に鋼体の大きな固まりがあるわけでもないのに、自重が1両あたり50t弱あります。最新のキハ261系よりも自重が重いです。かつてJR西日本では、大規模な脱線事故を引き起こしており、運転士や乗客の安全性を最優先にするため、オフセット衝突対策や衝撃吸収構造を採用しています。おそらくこれが自重を増やしている一番の理由かと思いますが、最新の特急気動車らしく、且つボディ剛性も上げて徹底した乗り心地の改善が図られていると思いますよ。
キハ283系でも、以前から度々SNSなどで不快な揺れを体験するユーザーの投稿が見られました。おそらく、ボディ剛性が不足していると判断できる書き込みではないかと思います。
実際に車両の自重を調べてみると、先にデビューしたキハ281系と自重がほとんど変わらない車両・区分番台もあります。リンク式自己操舵台車の採用によって部品が増えたことや、液体式変速機の多段化・改良等、自重が重くなる要因があるにも関わらず、車両によってはほとんど差がなかったり、差が400kgしか増えていなかったりします。
では、どこでそれを軽くしているかというと、車体の可能性が非常に高くなるわけですね。


ボディ剛性が不足している影響からか、キハ283系の車体側面にはスポット溶接痕があります。このスポット溶接痕はキハ281系や789系といったほかの車両でも見られますが、ここまで露骨にスポット溶接痕が確認できるのはキハ283系だけです。
車体を確認していると、傾斜時に可動部分が多い車体下部でスポット溶接痕が多く見られます。おそらく、カーブ通過時にストレスが多くかかっている部分だと思います。そこに集中的にスポット溶接痕が見られますね。
乗り物でスポット溶接を実施する理由は、ボディ剛性の向上を図るためです。
同じ乗り物で例えるなら、スポーツタイプの自動車が途中でボディ剛性を上げるためにスポット溶接を実施したりします。ラリーやサーキットでは、ボディに大きな負荷がかかります。想定以上の負荷がボディにかかってしまうと、ボディがしなるように動いてしまい、結果的にサスペンションの効果を生かし切れなくなります。また、これによって、ボディが余計に動いてしまうため、上述のとおり、操縦性に影響が出たり、乗り心地も悪くなる原因にもなります。これを改善するためにスポット増しを実施することもあります。
ほかにも新車時で実施したりする例もあります。管理者の知っている範囲では、晩年のトヨタ・ヴィッツが該当します。今年からヤリスとして生まれ変わりますね。皆さんも知っている強面になった晩年のヴィッツです。
操縦性・乗り心地向上を図るため、従来のボディにスポット溶接の打ち増しを実施したことでボディ剛性を強化しました。その影響からか、販売数も従来よりも伸び、一般道で見かける機会が多くなっているのも事実です。台数が多く出ているということは、ユーザーから評価されている理由につながり、スポット増しによるボディ剛性向上が操縦性や乗り心地に大きく影響し、ユーザーを獲得した成功例と言えるでしょう。
話題は戻りますが、キハ283系の車体側面にここまでスポット溶接痕が確認されるということは、車体剛性が足りない証拠になり得るでしょう。
では次に、なぜ車体を軽量化しなければならなかったのか??
この問題を解決して、ようやくキハ283系の110km/h化が見えてくると思います。
その理由は、根室本線の特に池田~白糠間における急曲線に対応するために、重心を下げる必要があったと推測します。
なぜ重心を下げる必要があったかというと、急曲線時の乗り心地を維持するためです。一定の速度向上を図りながら、乗り心地も維持するといった方がいいかもしれませんね。
列車がカーブに進入する際、車両の重心を起点にして外側に遠心力が発生しています。遠心力は重量が重い車や車両ほど大きくなります。そのために、車体を軽量化し、それを打ち消すために車体を最大6°まで傾斜させて高速でカーブに進入しながらも、一定の乗り心地を維持しています。
例えば、普通自動車で100km/hでカーブに進入した場合と、高速バスで100km/hでカーブに進入した場合、乗り心地や安定性の差は一目瞭然ですよね。それと同じです。
また、車両の重心を起点にして外側に遠心力が発生するということは、軽量化だけしても重心が高ければ意味がないわけです。それも遠心力が多く働いてしまう理由になります。そこでキハ283系では・・・

先日の4両編成の写真です。真上から撮影したものですが、本来屋根上に設置される機器も全て床下に搭載されているのがキハ283系の特徴です。既に廃車されたキハ285系も屋根には一切機器がありませんでしたね。
車両上部を軽量化することで重心は下がります。自動車の分野においては、ボンネットやルーフ、トランク素材をアルミやカーボンに変えて軽量化することで低重心化を図っているスポーツタイプの自動車も存在します。軽量且つ重心が低ければカーブを通過する際も遠心力が少なくなり、高速走行且つ乗り心地に貢献できるというわけです。これは自動車でも同じですね。
こうしてみると、キハ283系の場合は、レーシングカーの技術も入っていたりしますね。鉄道界のコーナリングマシンといったところでしょうか。実際に過去に発売された鉄道雑誌では、コーナリングマシンと記載されていたこともありましたね。
ただ、それもいずれは限界がきます。ボディ剛性が極限まで高くても、ボディに想定以上の負荷をかけ続ければ、いずれは自動車と同様に乗り心地が悪くなったりします。それでも早急に置き換えることが困難な状況から、最高速度を落として使用せざるを得ないのです。それが現在のキハ283系です。
また、リンク式自己操舵台車の採用により、台車の構造は従来の車両からより複雑化しました。これによって部品が多くなったり、可動する部分が多くなったことで、下回りの老朽・劣化が早まったことも事実であり、これも最高運転速度を落とさざるを得ない理由の1つだと推測しています。
そのような車両を維持している中で、以前は方面別に車両が異なり、JR北海道も年々社員は減り、特に車両の保守整備を担う人材が不足していました。現在もなおその状況が続いているようです。収入はドライバー(運転士)の方が多く、数年を経過すれば、試験を経てドライバーになることができる仕組みもあり、それも人材が流出している原因の1つになりそうです。
人材が減る中で、車両のラインナップは増え続け、構造が複雑な車両も他の車両と同じく維持していかなければならない。さらに若手指導もしなければならない・・・。
このような状況では、手が回らなくなり、いろいろとトラブルが出て当たり前な状況です。火を吹いて当たり前です。
後継車両となるはずだったキハ285系も屋根上に機器はなく、おそらく、キハ283系のノウハウを詰め込んだ車両のはずです。量産化されて高速走行を続けていれば、キハ283系と同じ運命を辿っていたことでしょう。
管理者は自動車も好きなので、自動車の話題も含めながら、キハ283系について紹介させていただきました。110km/h運転という事実だけは把握していますが、なかなかその理由まで掴み取れていない方も多いはずです。管理者も当記事はあくまで予想に過ぎませんが、同じ乗り物の自動車を参考にする場合だと、こうした結論に至りました。当記事を作成しようと以前から計画していましたが、1年ほど時間が経過してしまいました。
至らない点や間違っている点もあるかもしれません。その際はコメントにて教えていただけると幸いです。
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キハ283系といえば、北海道の特急気動車において、最も高速化に貢献した車両といっても過言ではありません。先にキハ281系がデビューしていますが、キハ283系のデビューが控え、早々に製造が打ち切られ、製造数はキハ283系の1/2にも満たない両数です。
「スーパー北斗」の最速達列車はキハ281系でしたが、「スーパーおおぞら」や「スーパーとかち」の高速化に大いに貢献し、「スーパー北斗」にも一部列車で投入され、道内における主要気動車特急のそのほとんどに充当しました。
転機が訪れたのは、2011年5月27日です。石勝線の清風山信号場で当時の特急「スーパーおおぞら14号」で脱線火災事故が発生しました。それを機に、同車は車両トラブルが相次ぐようになります。
結果的に、キハ183系からも出火事故が発生し、車両繰りが窮地な状況となった2013年に車両メンテナンス体制強化、車両の負荷を減らすべく、11月1日に減速・減便ダイヤを施行するようになります。最高運転速度の抑制及び、運用を減らし、1日に稼働する車両数を減らすことで、車両のメンテナンス体制と時間を十分に確保することがねらいでした。
キハ283系については、「スーパー北斗」、「スーパーとかち」の定期列車から撤退、「スーパーおおぞら」の1往復減便などが実施され、最高運転速度がほかの列車が現状維持または120km/hまでしか落とされなかったのに対して、110km/hまで落とされました。キハ183系初期車と変わらない速度になってしまいました。
これを機に、相次ぐトラブルは解消されて現在に至りましたが、その間、特に繁忙期における輸送力不足に大きな問題として上げられ、繁忙期にも関わらず、十分な増結ができず、結果的に利用者の負担を余儀なくされました。特に函館方面に関しては、繁忙期のみならず、通常期でもそうした状況が見られました。
車両繰りも安定し、2016年3月の北海道新幹線開業のダイヤ改正を機に、函館方面では本数の増強や所定編成の増強を行い、それ以降は全道各地の特急列車で繁忙期増結も通常どおり実施されるようになりました。
さて、ここからが本題ですが、なぜキハ283系だけ最高運転速度が一気に110km/hまで落とされたのでしょうか?
これには、キハ283系だけが該当するさまざまな問題があります。
まず、110km/hまで落としている理由としては、車体強度(剛性)が他の車両と比較して不足しており、高速走行時において振動が他の車両よりも多く発生してしまうからです。利用者に対しては、さらに乗り心地も考慮しなければなりません。その振動が発生する許容範囲のレベルが最高運転速度110km/hになるわけです。
車体剛性が不足している理由としては、車体が軽量であることが上げられます。
自動車の領域でもそうですが、車体の剛性を上げ、且つ軽量化することは難しい項目でもあります。軽量化するということは、部品を減らしたり、ボディの板厚を少なくしたりすることが一般的です。本当にお金をかけて実施するのであれば、部品のアルミ化やミリグラム単位で部品を設計・開発を行い、それはレース活動を通じて行われるでしょう。
昨今ではスポーツタイプの自動車のみならず、普段の生活に使うレベルの自動車までもボディ剛性を重視する時代になりました。理由は、乗り心地や操縦安定性を高めるためです。ボディ剛性が不足すると、走行中に不快な揺れが発生したり、例えば一般道でマンホールや段差を踏んだ際にも不快な揺れや不安定になることがあります。特に高速道路でその違いがわかるでしょう。速度が高い状態で走っていると、少しの段差の衝撃でハンドルが取られるような症状が見られれば、ボディ剛性が不足している証拠です。
加えて、年々高まる衝突安全基準もクリアしなければならないため、年々自動車が進化するにつれ、車両の重量も重くなってしまいます。各メーカーは低重心化を図った最新のプラットフォームで乗り切っていますが、自動車の重量は増えるばかりです。
安全基準を高めたり、ボディ剛性を向上させれば、重量が増えるのが一般的です。良き例がJR西日本のキハ189系です。振り子式車両でもなく、北海道の特急気動車のように、先頭部分に鋼体の大きな固まりがあるわけでもないのに、自重が1両あたり50t弱あります。最新のキハ261系よりも自重が重いです。かつてJR西日本では、大規模な脱線事故を引き起こしており、運転士や乗客の安全性を最優先にするため、オフセット衝突対策や衝撃吸収構造を採用しています。おそらくこれが自重を増やしている一番の理由かと思いますが、最新の特急気動車らしく、且つボディ剛性も上げて徹底した乗り心地の改善が図られていると思いますよ。
キハ283系でも、以前から度々SNSなどで不快な揺れを体験するユーザーの投稿が見られました。おそらく、ボディ剛性が不足していると判断できる書き込みではないかと思います。
実際に車両の自重を調べてみると、先にデビューしたキハ281系と自重がほとんど変わらない車両・区分番台もあります。リンク式自己操舵台車の採用によって部品が増えたことや、液体式変速機の多段化・改良等、自重が重くなる要因があるにも関わらず、車両によってはほとんど差がなかったり、差が400kgしか増えていなかったりします。
では、どこでそれを軽くしているかというと、車体の可能性が非常に高くなるわけですね。


ボディ剛性が不足している影響からか、キハ283系の車体側面にはスポット溶接痕があります。このスポット溶接痕はキハ281系や789系といったほかの車両でも見られますが、ここまで露骨にスポット溶接痕が確認できるのはキハ283系だけです。
車体を確認していると、傾斜時に可動部分が多い車体下部でスポット溶接痕が多く見られます。おそらく、カーブ通過時にストレスが多くかかっている部分だと思います。そこに集中的にスポット溶接痕が見られますね。
乗り物でスポット溶接を実施する理由は、ボディ剛性の向上を図るためです。
同じ乗り物で例えるなら、スポーツタイプの自動車が途中でボディ剛性を上げるためにスポット溶接を実施したりします。ラリーやサーキットでは、ボディに大きな負荷がかかります。想定以上の負荷がボディにかかってしまうと、ボディがしなるように動いてしまい、結果的にサスペンションの効果を生かし切れなくなります。また、これによって、ボディが余計に動いてしまうため、上述のとおり、操縦性に影響が出たり、乗り心地も悪くなる原因にもなります。これを改善するためにスポット増しを実施することもあります。
ほかにも新車時で実施したりする例もあります。管理者の知っている範囲では、晩年のトヨタ・ヴィッツが該当します。今年からヤリスとして生まれ変わりますね。皆さんも知っている強面になった晩年のヴィッツです。
操縦性・乗り心地向上を図るため、従来のボディにスポット溶接の打ち増しを実施したことでボディ剛性を強化しました。その影響からか、販売数も従来よりも伸び、一般道で見かける機会が多くなっているのも事実です。台数が多く出ているということは、ユーザーから評価されている理由につながり、スポット増しによるボディ剛性向上が操縦性や乗り心地に大きく影響し、ユーザーを獲得した成功例と言えるでしょう。
話題は戻りますが、キハ283系の車体側面にここまでスポット溶接痕が確認されるということは、車体剛性が足りない証拠になり得るでしょう。
では次に、なぜ車体を軽量化しなければならなかったのか??
この問題を解決して、ようやくキハ283系の110km/h化が見えてくると思います。
その理由は、根室本線の特に池田~白糠間における急曲線に対応するために、重心を下げる必要があったと推測します。
なぜ重心を下げる必要があったかというと、急曲線時の乗り心地を維持するためです。一定の速度向上を図りながら、乗り心地も維持するといった方がいいかもしれませんね。
列車がカーブに進入する際、車両の重心を起点にして外側に遠心力が発生しています。遠心力は重量が重い車や車両ほど大きくなります。そのために、車体を軽量化し、それを打ち消すために車体を最大6°まで傾斜させて高速でカーブに進入しながらも、一定の乗り心地を維持しています。
例えば、普通自動車で100km/hでカーブに進入した場合と、高速バスで100km/hでカーブに進入した場合、乗り心地や安定性の差は一目瞭然ですよね。それと同じです。
また、車両の重心を起点にして外側に遠心力が発生するということは、軽量化だけしても重心が高ければ意味がないわけです。それも遠心力が多く働いてしまう理由になります。そこでキハ283系では・・・

先日の4両編成の写真です。真上から撮影したものですが、本来屋根上に設置される機器も全て床下に搭載されているのがキハ283系の特徴です。既に廃車されたキハ285系も屋根には一切機器がありませんでしたね。
車両上部を軽量化することで重心は下がります。自動車の分野においては、ボンネットやルーフ、トランク素材をアルミやカーボンに変えて軽量化することで低重心化を図っているスポーツタイプの自動車も存在します。軽量且つ重心が低ければカーブを通過する際も遠心力が少なくなり、高速走行且つ乗り心地に貢献できるというわけです。これは自動車でも同じですね。
こうしてみると、キハ283系の場合は、レーシングカーの技術も入っていたりしますね。鉄道界のコーナリングマシンといったところでしょうか。実際に過去に発売された鉄道雑誌では、コーナリングマシンと記載されていたこともありましたね。
ただ、それもいずれは限界がきます。ボディ剛性が極限まで高くても、ボディに想定以上の負荷をかけ続ければ、いずれは自動車と同様に乗り心地が悪くなったりします。それでも早急に置き換えることが困難な状況から、最高速度を落として使用せざるを得ないのです。それが現在のキハ283系です。
また、リンク式自己操舵台車の採用により、台車の構造は従来の車両からより複雑化しました。これによって部品が多くなったり、可動する部分が多くなったことで、下回りの老朽・劣化が早まったことも事実であり、これも最高運転速度を落とさざるを得ない理由の1つだと推測しています。
そのような車両を維持している中で、以前は方面別に車両が異なり、JR北海道も年々社員は減り、特に車両の保守整備を担う人材が不足していました。現在もなおその状況が続いているようです。収入はドライバー(運転士)の方が多く、数年を経過すれば、試験を経てドライバーになることができる仕組みもあり、それも人材が流出している原因の1つになりそうです。
人材が減る中で、車両のラインナップは増え続け、構造が複雑な車両も他の車両と同じく維持していかなければならない。さらに若手指導もしなければならない・・・。
このような状況では、手が回らなくなり、いろいろとトラブルが出て当たり前な状況です。火を吹いて当たり前です。
後継車両となるはずだったキハ285系も屋根上に機器はなく、おそらく、キハ283系のノウハウを詰め込んだ車両のはずです。量産化されて高速走行を続けていれば、キハ283系と同じ運命を辿っていたことでしょう。
管理者は自動車も好きなので、自動車の話題も含めながら、キハ283系について紹介させていただきました。110km/h運転という事実だけは把握していますが、なかなかその理由まで掴み取れていない方も多いはずです。管理者も当記事はあくまで予想に過ぎませんが、同じ乗り物の自動車を参考にする場合だと、こうした結論に至りました。当記事を作成しようと以前から計画していましたが、1年ほど時間が経過してしまいました。
至らない点や間違っている点もあるかもしれません。その際はコメントにて教えていただけると幸いです。
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