23年の歴史に幕を下ろした「スーパーおおぞら」
特急列車 - 2020年03月18日 (水)
今回は「スーパーおおぞら」とキハ283系についてです。愛称が急に「おおぞら」となると、使用する車両は同じですが、なんだか寂しくなりますね。


ヘッドマークはカッコよかったです。
登場当時は管理者は衝撃を受けたものです。
ヘッドマークが動く!?
日本語から英語に代わる!?
先に登場したキハ281系の「スーパー北斗」とはまた違った衝撃を受けました。
1997年3月ダイヤ改正で、従来の「おおぞら」の一部を置き換える形でキハ283系が営業運転を開始し、愛称も新たに「スーパーおおぞら」としてデビューしました。
2001年7月のダイヤ改正で、キハ283系の5次車(最終増備車)が出そろい、札幌~釧路間の昼行特急列車は「スーパーおおぞら」に統一されました。夜行列車については、キハ183系のまま残されましたが、愛称が従来の「おおぞら」から「まりも」として独立しました。
以来、札幌~釧路間を結ぶ定期特急列車は、キハ283系による「スーパーおおぞら」でしたが、23年目となる今年の3月ダイヤ改正で、愛称名を20年ぶりに「おおぞら」へ戻し、「スーパーおおぞら」は廃止となりました。
車両については、6往復中3往復にキハ261系1000番台を投入しました。従来から使用しているキハ283系の充当列車は半減し、確認できる機会が減ってしまいましたね。

キハ283系は、やはりカーブを通過するシーンが一番迫力があり、カッコいいです。車体の傾斜角度は日本国内における振り子式車両が5°に対し、キハ283系のみ6°としています。この記録はいまだ破られていません。キハ285系が登場していれば、振り子式と車体傾斜装置を組み合わせて最大8°車体を傾斜させる予定だったので、同車が登場していたら破られていましたね。
同車による札幌~釧路間の歴代最速レコードは、3時間32分です。新札幌駅停車拡大となる直前のダイヤで見られました。減速運転を実施する直前までは3時間35分となり、減速後は3時間58分、現行ダイヤでは特急「おおぞら12号」の3時間59分となっています。
どの列車もこのような速達ダイヤが組まれるわけではありません。130km/h時代は平均すると3時間40~50分台、減速後は4時間10分前後程度でした。
同車のデビュー時は、まだ道東道の未完成部分が多く、マイカーや高速バスを利用する際は今以上に所要時間がかかっていました。これも「スーパーおおぞら」の利用を後押しする理由の1つになったでしょう。
一部でキハ183系が残存していましたが、キハ283系の増備が終わると、石勝線特急の黄金期を迎えます。速達性が高く、利用は年々右肩上がりになり、「スーパーおおぞら」は所定が6両編成にも関わらず、通常期でも増結が常態化しました。
その後、2007年にはキハ261系1000番台を投入し、「スーパーとかち」で営業運転を開始しました。同列車については、途中の信号場での待避が多くなった関係で全体的に劇的な所要時間短縮は実現しませんでしたが、キハ183系と比較すると、平均所要時間は短縮され、道央と道東がますます近くなりました。キハ261系を新たに投入したことで、従来「スーパーとかち」で使用していた車両を「スーパーおおぞら」に回せるようになりました。札幌~帯広間の列車を1往復延長させる形で「スーパーおおぞら」を1往復増発しました。この2007年10月から2011年5月までが「スーパーおおぞら」が最も本数が増えた時期でした。
しかし、高速道路の延伸とともに、無料化実験の影響でマイカー需要が急増し、絶対的地位を築き上げていた石勝線特急も所定編成の減車を余儀なくされる事態となりました。
そのような右肩下がりの時期に起こったのが9年前。忘れもしない石勝線特急列車脱線火災事故です。
トンネル内で緊急停車したことで、その影響が大きくなってしまいました。死者が出なかったのが不幸中の幸いでしたが、JR化以降で発生した鉄道事故の中では、上位に入るほどの大事故です。トンネル内で全焼したことで翌日以降にトンネルから出された車体は大きく歪み、原形をとどめない姿でした。全国ニュースにもなり、ここから最強気動車の地位そのものが揺らぎ始めます。
これを機に、キハ283系では車両トラブルが連続して発生するようになります。加えて、JR北海道の相次ぐ不祥事もあり、連日バッシング対象に。極めつけとなる出来事が、2013年7月に特急「スーパーおおぞら3号」走行中に発生した配電盤出火事故や特急「北斗14号」走行中に発生したスライジングブロック破損(エンジンブロー)による床下からの出火です。
これを機に、通常運行する車両の手配すらつかなくなり、定期営業列車の一部を運休せざるを得なくなりました。繁忙期は可能な限り動かせる車両で対応するものの、輸送力が圧倒的に足りず、途中駅や出発駅での積み残しが相次ぎました。その対応の悪さに、さらにバッシングを喰らい、その様子を伝えようと連日報道の嵐となり、加えて利用者の不平・不満も日に日に多くなっていくという最悪の無限ループに陥りました。
とりあえず、車両メンテナンス時間を確保すべく、同年11月から特急列車の減速・減便ダイヤを開始します。「スーパーおおぞら」はそれまでの2本減便で、最高運転速度が110km/hまで落とされ、所要時間は最速3時間35分から3時間59分となりました。1本を除いてこれまで守り抜いてきた3時間台を死守できなくなりました。
依然として函館方面では混乱は続きましたが、「スーパー北斗」減便でその車両を「スーパーおおぞら」に回したことで、減速・減便ダイヤ施行以降は運休は発生せず、先日のダイヤ改正まで6往復で運行してきました。
高速道路の延伸や高速バスの台頭もあり、依然として苦しい状況が続いていますが、訪日外国人観光客が急増していることで、冬季にトマム方面への需要が増加していることで、「スーパーおおぞら」も南千歳~トマム間で訪日外国人利用が多くなっており、新たな需要拡大に向けて引き続き活躍を期待したいです。
デビューから23年をまとめるとこのような感じです。キハ283系は最強気動車で、出力という点を除けば、日本一の性能を秘めています。いまだに同車の性能を超える特急気動車は登場していません。
昨日、函館に一部車両が回送されたようです。おそらく、キハ261系投入に伴う余剰廃車と思われ、先に登場したキハ281系よりも先に引退するという逆転現象が生まれています。
今年の2月にコラムで一度記事にしましたが、もう一度キハ283系について以下に同じ内容で記載しておきます。
先に引退する理由の前に、まず、なぜキハ283系だけ最高運転速度が一気に110km/hまで落とされたのでしょうか?この問題を解決しなければいけません。
これには、キハ283系だけが該当するさまざまな問題があります。
まず、110km/hまで落としている理由としては、車体強度(剛性)が他の車両と比較して不足しており、高速走行時において振動が他の車両よりも多く発生してしまうからです。利用者に対しては、さらに乗り心地も考慮しなければなりません。その振動が発生する許容範囲のレベルが最高運転速度110km/hになるわけです。
車体剛性が不足している理由としては、車体が軽量であることが上げられます。
自動車の領域でもそうですが、車体の剛性を上げ、且つ軽量化することは難しい項目でもあります。軽量化するということは、部品を減らしたり、ボディの板厚を少なくしたりすることが一般的です。本当にお金をかけて実施するのであれば、部品のアルミ化やミリグラム単位で部品を設計・開発を行い、それはレース活動を通じて行われるでしょう。
昨今ではスポーツタイプの自動車のみならず、普段の生活に使うレベルの自動車までもボディ剛性を重視する時代になりました。理由は、乗り心地や操縦安定性を高めるためです。ボディ剛性が不足すると、走行中に不快な揺れが発生したり、例えば一般道でマンホールや段差を踏んだ際にも不快な揺れや不安定になることがあります。特に高速道路でその違いがわかるでしょう。速度が高い状態で走っていると、少しの段差の衝撃でハンドルが取られるような症状が見られれば、ボディ剛性が不足している証拠です。
加えて、年々高まる衝突安全基準もクリアしなければならないため、年々自動車が進化するにつれ、車両の重量も重くなってしまいます。各メーカーは低重心化を図った最新のプラットフォームで乗り切っていますが、自動車の重量は増えるばかりです。
安全基準を高めたり、ボディ剛性を向上させれば、重量が増えるのが一般的です。良き例がJR西日本のキハ189系です。振り子式車両でもなく、北海道の特急気動車のように、先頭部分に鋼体の大きな固まりがあるわけでもないのに、自重が1両あたり50t弱あります。最新のキハ261系よりも自重が重いです。かつてJR西日本では、大規模な脱線事故を引き起こしており、運転士や乗客の安全性を最優先にするため、オフセット衝突対策や衝撃吸収構造を採用しています。おそらくこれが自重を増やしている一番の理由かと思いますが、最新の特急気動車らしく、且つボディ剛性も上げて徹底した乗り心地の改善が図られていると思いますよ。
キハ283系でも、以前から度々SNSなどで不快な揺れを体験するユーザーの投稿が見られました。おそらく、ボディ剛性が不足していると判断できる書き込みではないかと思います。
実際に車両の自重を調べてみると、先にデビューしたキハ281系と自重がほとんど変わらない車両・区分番台もあります。リンク式自己操舵台車の採用によって部品が増えたことや、液体式変速機の多段化・改良等、自重が重くなる要因があるにも関わらず、車両によってはほとんど差がなかったり、差が400kgしか増えていなかったりします。
では、どこでそれを軽くしているかというと、車体の可能性が非常に高くなるわけですね。


ボディ剛性が不足している影響からか、キハ283系の車体側面にはスポット溶接痕があります。このスポット溶接痕はキハ281系や789系といったほかの車両でも見られますが、ここまで露骨にスポット溶接痕が確認できるのはキハ283系だけです。
車体を確認していると、傾斜時に可動部分が多い車体下部でスポット溶接痕が多く見られます。おそらく、カーブ通過時にストレスが多くかかっている部分だと思います。そこに集中的にスポット溶接痕が見られますね。
乗り物でスポット溶接を実施する理由は、ボディ剛性の向上を図るためです。
同じ乗り物で例えるなら、スポーツタイプの自動車が途中でボディ剛性を上げるためにスポット溶接を実施したりします。ラリーやサーキットでは、ボディに大きな負荷がかかります。想定以上の負荷がボディにかかってしまうと、ボディがしなるように動いてしまい、結果的にサスペンションの効果を生かし切れなくなります。また、これによって、ボディが余計に動いてしまうため、上述のとおり、操縦性に影響が出たり、乗り心地も悪くなる原因にもなります。これを改善するためにスポット増しを実施することもあります。
ほかにも新車時で実施したりする例もあります。管理者の知っている範囲では、晩年のトヨタ・ヴィッツが該当します。今年からヤリスとして生まれ変わりますね。皆さんも知っている強面になった晩年のヴィッツです。
操縦性・乗り心地向上を図るため、従来のボディにスポット溶接の打ち増しを実施したことでボディ剛性を強化しました。その影響からか、販売数も従来よりも伸び、一般道で見かける機会が多くなっているのも事実です。台数が多く出ているということは、ユーザーから評価されている理由につながり、スポット増しによるボディ剛性向上が操縦性や乗り心地に大きく影響し、ユーザーを獲得した成功例と言えるでしょう。
話題は戻りますが、キハ283系の車体側面にここまでスポット溶接痕が確認されるということは、車体剛性が足りない証拠になり得るでしょう。
では次に、なぜ車体を軽量化しなければならなかったのか??
この問題を解決して、ようやくキハ283系の110km/h化が見えてくると思います。
その理由は、根室本線の特に池田~白糠間における急曲線に対応するために、重心を下げる必要があったと推測します。
なぜ重心を下げる必要があったかというと、急曲線時の乗り心地を維持するためです。一定の速度向上を図りながら、乗り心地も維持するといった方がいいかもしれませんね。
列車がカーブに進入する際、車両の重心を起点にして外側に遠心力が発生しています。遠心力は重量が重い車や車両ほど大きくなります。そのために、車体を軽量化し、それを打ち消すために車体を最大6°まで傾斜させて高速でカーブに進入しながらも、一定の乗り心地を維持しています。
例えば、普通自動車で100km/hでカーブに進入した場合と、高速バスで100km/hでカーブに進入した場合、乗り心地や安定性の差は一目瞭然ですよね。それと同じです。
また、車両の重心を起点にして外側に遠心力が発生するということは、軽量化だけしても重心が高ければ意味がないわけです。それも遠心力が多く働いてしまう理由になります。そこでキハ283系では・・・

1月の代走の4両編成の写真です。真上から撮影したものですが、本来屋根上に設置される機器も全て床下に搭載されているのがキハ283系の特徴です。既に廃車されたキハ285系も屋根には一切機器がありませんでしたね。
車両上部を軽量化することで重心は下がります。自動車の分野においては、ボンネットやルーフ、トランク素材をアルミやカーボンに変えて軽量化することで低重心化を図っているスポーツタイプの自動車も存在します。軽量且つ重心が低ければカーブを通過する際も遠心力が少なくなり、高速走行且つ乗り心地に貢献できるというわけです。これは自動車でも同じですね。
こうしてみると、キハ283系の場合は、レーシングカーの技術も入っていたりします。鉄道界のコーナリングマシンといったところでしょうか。実際に過去に発売された鉄道雑誌では、コーナリングマシンと記載されていたこともありましたね。
ただ、それもいずれは限界がきます。ボディ剛性が極限まで高くても、ボディに想定以上の負荷をかけ続ければ、いずれは自動車と同様に乗り心地が悪くなったりします。それでも早急に置き換えることが困難な状況から、最高速度を落として使用せざるを得ないのです。それが現在のキハ283系です。
また、リンク式自己操舵台車の採用により、台車の構造は従来の車両からより複雑化しました。これによって部品が多くなったり、可動する部分が多くなったことで、下回りの老朽・劣化が早まったことも事実であり、これも最高運転速度を落とさざるを得ない理由の1つだと推測しています。
一度は利用客から高評価を受け、性能も日本の特急気動車のトップまで君臨し、キハ283系、「スーパーおおぞら」にとって敵なし状態でしたが、それ以降は高速道路の延伸や過酷な使用環境の中で発生した仲間の焼失、車両不具合の連続、減速運転と波乱万丈の23年間だったと思います。一部車両はまだまだ現役ですが、キハ261系1000番台の置き換えが始まったとすれば、「スーパーおおぞら」として活躍したキハ283系もそう遠くないちかい将来、引退してしまうかもしれませんね。
愛称は「おおぞら」となってしまいましたが、所要時間はほぼ据え置かれています。確認できる機会は少なくなってしまいましたが、引き続き「おおぞら」として活躍を期待しましょう。
ちなみに・・・



「スーパーおおぞら」出発時に見られる行先表示器のイラストです。過去にキハ283系は「スーパー北斗」や「スーパーとかち」にも使用されていましたが、出発時はイラストは見られず、このイラストが見られるのは「スーパーおおぞら」運行時の特権でした。
数年前から一部車両のLEDが更新され、過去の「スーパー北斗」や「スーパーとかち」同様、発車時のこのイラストは見られなくなっています。LED未更新車については、ダイヤ改正を機に営業運転を外れるかと思いきや、一部車両は引き続き営業運転に入っており、名称が「おおぞら」になって以降も、このイラストが見られるようです。
このように、まだまだ「スーパーおおぞら」の名残りが残っている部分もあります。こうした記録は早めにしておいた方が良さそうです。
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ヘッドマークはカッコよかったです。
登場当時は管理者は衝撃を受けたものです。
ヘッドマークが動く!?
日本語から英語に代わる!?
先に登場したキハ281系の「スーパー北斗」とはまた違った衝撃を受けました。
1997年3月ダイヤ改正で、従来の「おおぞら」の一部を置き換える形でキハ283系が営業運転を開始し、愛称も新たに「スーパーおおぞら」としてデビューしました。
2001年7月のダイヤ改正で、キハ283系の5次車(最終増備車)が出そろい、札幌~釧路間の昼行特急列車は「スーパーおおぞら」に統一されました。夜行列車については、キハ183系のまま残されましたが、愛称が従来の「おおぞら」から「まりも」として独立しました。
以来、札幌~釧路間を結ぶ定期特急列車は、キハ283系による「スーパーおおぞら」でしたが、23年目となる今年の3月ダイヤ改正で、愛称名を20年ぶりに「おおぞら」へ戻し、「スーパーおおぞら」は廃止となりました。
車両については、6往復中3往復にキハ261系1000番台を投入しました。従来から使用しているキハ283系の充当列車は半減し、確認できる機会が減ってしまいましたね。

キハ283系は、やはりカーブを通過するシーンが一番迫力があり、カッコいいです。車体の傾斜角度は日本国内における振り子式車両が5°に対し、キハ283系のみ6°としています。この記録はいまだ破られていません。キハ285系が登場していれば、振り子式と車体傾斜装置を組み合わせて最大8°車体を傾斜させる予定だったので、同車が登場していたら破られていましたね。
同車による札幌~釧路間の歴代最速レコードは、3時間32分です。新札幌駅停車拡大となる直前のダイヤで見られました。減速運転を実施する直前までは3時間35分となり、減速後は3時間58分、現行ダイヤでは特急「おおぞら12号」の3時間59分となっています。
どの列車もこのような速達ダイヤが組まれるわけではありません。130km/h時代は平均すると3時間40~50分台、減速後は4時間10分前後程度でした。
同車のデビュー時は、まだ道東道の未完成部分が多く、マイカーや高速バスを利用する際は今以上に所要時間がかかっていました。これも「スーパーおおぞら」の利用を後押しする理由の1つになったでしょう。
一部でキハ183系が残存していましたが、キハ283系の増備が終わると、石勝線特急の黄金期を迎えます。速達性が高く、利用は年々右肩上がりになり、「スーパーおおぞら」は所定が6両編成にも関わらず、通常期でも増結が常態化しました。
その後、2007年にはキハ261系1000番台を投入し、「スーパーとかち」で営業運転を開始しました。同列車については、途中の信号場での待避が多くなった関係で全体的に劇的な所要時間短縮は実現しませんでしたが、キハ183系と比較すると、平均所要時間は短縮され、道央と道東がますます近くなりました。キハ261系を新たに投入したことで、従来「スーパーとかち」で使用していた車両を「スーパーおおぞら」に回せるようになりました。札幌~帯広間の列車を1往復延長させる形で「スーパーおおぞら」を1往復増発しました。この2007年10月から2011年5月までが「スーパーおおぞら」が最も本数が増えた時期でした。
しかし、高速道路の延伸とともに、無料化実験の影響でマイカー需要が急増し、絶対的地位を築き上げていた石勝線特急も所定編成の減車を余儀なくされる事態となりました。
そのような右肩下がりの時期に起こったのが9年前。忘れもしない石勝線特急列車脱線火災事故です。
トンネル内で緊急停車したことで、その影響が大きくなってしまいました。死者が出なかったのが不幸中の幸いでしたが、JR化以降で発生した鉄道事故の中では、上位に入るほどの大事故です。トンネル内で全焼したことで翌日以降にトンネルから出された車体は大きく歪み、原形をとどめない姿でした。全国ニュースにもなり、ここから最強気動車の地位そのものが揺らぎ始めます。
これを機に、キハ283系では車両トラブルが連続して発生するようになります。加えて、JR北海道の相次ぐ不祥事もあり、連日バッシング対象に。極めつけとなる出来事が、2013年7月に特急「スーパーおおぞら3号」走行中に発生した配電盤出火事故や特急「北斗14号」走行中に発生したスライジングブロック破損(エンジンブロー)による床下からの出火です。
これを機に、通常運行する車両の手配すらつかなくなり、定期営業列車の一部を運休せざるを得なくなりました。繁忙期は可能な限り動かせる車両で対応するものの、輸送力が圧倒的に足りず、途中駅や出発駅での積み残しが相次ぎました。その対応の悪さに、さらにバッシングを喰らい、その様子を伝えようと連日報道の嵐となり、加えて利用者の不平・不満も日に日に多くなっていくという最悪の無限ループに陥りました。
とりあえず、車両メンテナンス時間を確保すべく、同年11月から特急列車の減速・減便ダイヤを開始します。「スーパーおおぞら」はそれまでの2本減便で、最高運転速度が110km/hまで落とされ、所要時間は最速3時間35分から3時間59分となりました。1本を除いてこれまで守り抜いてきた3時間台を死守できなくなりました。
依然として函館方面では混乱は続きましたが、「スーパー北斗」減便でその車両を「スーパーおおぞら」に回したことで、減速・減便ダイヤ施行以降は運休は発生せず、先日のダイヤ改正まで6往復で運行してきました。
高速道路の延伸や高速バスの台頭もあり、依然として苦しい状況が続いていますが、訪日外国人観光客が急増していることで、冬季にトマム方面への需要が増加していることで、「スーパーおおぞら」も南千歳~トマム間で訪日外国人利用が多くなっており、新たな需要拡大に向けて引き続き活躍を期待したいです。
デビューから23年をまとめるとこのような感じです。キハ283系は最強気動車で、出力という点を除けば、日本一の性能を秘めています。いまだに同車の性能を超える特急気動車は登場していません。
昨日、函館に一部車両が回送されたようです。おそらく、キハ261系投入に伴う余剰廃車と思われ、先に登場したキハ281系よりも先に引退するという逆転現象が生まれています。
今年の2月にコラムで一度記事にしましたが、もう一度キハ283系について以下に同じ内容で記載しておきます。
先に引退する理由の前に、まず、なぜキハ283系だけ最高運転速度が一気に110km/hまで落とされたのでしょうか?この問題を解決しなければいけません。
これには、キハ283系だけが該当するさまざまな問題があります。
まず、110km/hまで落としている理由としては、車体強度(剛性)が他の車両と比較して不足しており、高速走行時において振動が他の車両よりも多く発生してしまうからです。利用者に対しては、さらに乗り心地も考慮しなければなりません。その振動が発生する許容範囲のレベルが最高運転速度110km/hになるわけです。
車体剛性が不足している理由としては、車体が軽量であることが上げられます。
自動車の領域でもそうですが、車体の剛性を上げ、且つ軽量化することは難しい項目でもあります。軽量化するということは、部品を減らしたり、ボディの板厚を少なくしたりすることが一般的です。本当にお金をかけて実施するのであれば、部品のアルミ化やミリグラム単位で部品を設計・開発を行い、それはレース活動を通じて行われるでしょう。
昨今ではスポーツタイプの自動車のみならず、普段の生活に使うレベルの自動車までもボディ剛性を重視する時代になりました。理由は、乗り心地や操縦安定性を高めるためです。ボディ剛性が不足すると、走行中に不快な揺れが発生したり、例えば一般道でマンホールや段差を踏んだ際にも不快な揺れや不安定になることがあります。特に高速道路でその違いがわかるでしょう。速度が高い状態で走っていると、少しの段差の衝撃でハンドルが取られるような症状が見られれば、ボディ剛性が不足している証拠です。
加えて、年々高まる衝突安全基準もクリアしなければならないため、年々自動車が進化するにつれ、車両の重量も重くなってしまいます。各メーカーは低重心化を図った最新のプラットフォームで乗り切っていますが、自動車の重量は増えるばかりです。
安全基準を高めたり、ボディ剛性を向上させれば、重量が増えるのが一般的です。良き例がJR西日本のキハ189系です。振り子式車両でもなく、北海道の特急気動車のように、先頭部分に鋼体の大きな固まりがあるわけでもないのに、自重が1両あたり50t弱あります。最新のキハ261系よりも自重が重いです。かつてJR西日本では、大規模な脱線事故を引き起こしており、運転士や乗客の安全性を最優先にするため、オフセット衝突対策や衝撃吸収構造を採用しています。おそらくこれが自重を増やしている一番の理由かと思いますが、最新の特急気動車らしく、且つボディ剛性も上げて徹底した乗り心地の改善が図られていると思いますよ。
キハ283系でも、以前から度々SNSなどで不快な揺れを体験するユーザーの投稿が見られました。おそらく、ボディ剛性が不足していると判断できる書き込みではないかと思います。
実際に車両の自重を調べてみると、先にデビューしたキハ281系と自重がほとんど変わらない車両・区分番台もあります。リンク式自己操舵台車の採用によって部品が増えたことや、液体式変速機の多段化・改良等、自重が重くなる要因があるにも関わらず、車両によってはほとんど差がなかったり、差が400kgしか増えていなかったりします。
では、どこでそれを軽くしているかというと、車体の可能性が非常に高くなるわけですね。


ボディ剛性が不足している影響からか、キハ283系の車体側面にはスポット溶接痕があります。このスポット溶接痕はキハ281系や789系といったほかの車両でも見られますが、ここまで露骨にスポット溶接痕が確認できるのはキハ283系だけです。
車体を確認していると、傾斜時に可動部分が多い車体下部でスポット溶接痕が多く見られます。おそらく、カーブ通過時にストレスが多くかかっている部分だと思います。そこに集中的にスポット溶接痕が見られますね。
乗り物でスポット溶接を実施する理由は、ボディ剛性の向上を図るためです。
同じ乗り物で例えるなら、スポーツタイプの自動車が途中でボディ剛性を上げるためにスポット溶接を実施したりします。ラリーやサーキットでは、ボディに大きな負荷がかかります。想定以上の負荷がボディにかかってしまうと、ボディがしなるように動いてしまい、結果的にサスペンションの効果を生かし切れなくなります。また、これによって、ボディが余計に動いてしまうため、上述のとおり、操縦性に影響が出たり、乗り心地も悪くなる原因にもなります。これを改善するためにスポット増しを実施することもあります。
ほかにも新車時で実施したりする例もあります。管理者の知っている範囲では、晩年のトヨタ・ヴィッツが該当します。今年からヤリスとして生まれ変わりますね。皆さんも知っている強面になった晩年のヴィッツです。
操縦性・乗り心地向上を図るため、従来のボディにスポット溶接の打ち増しを実施したことでボディ剛性を強化しました。その影響からか、販売数も従来よりも伸び、一般道で見かける機会が多くなっているのも事実です。台数が多く出ているということは、ユーザーから評価されている理由につながり、スポット増しによるボディ剛性向上が操縦性や乗り心地に大きく影響し、ユーザーを獲得した成功例と言えるでしょう。
話題は戻りますが、キハ283系の車体側面にここまでスポット溶接痕が確認されるということは、車体剛性が足りない証拠になり得るでしょう。
では次に、なぜ車体を軽量化しなければならなかったのか??
この問題を解決して、ようやくキハ283系の110km/h化が見えてくると思います。
その理由は、根室本線の特に池田~白糠間における急曲線に対応するために、重心を下げる必要があったと推測します。
なぜ重心を下げる必要があったかというと、急曲線時の乗り心地を維持するためです。一定の速度向上を図りながら、乗り心地も維持するといった方がいいかもしれませんね。
列車がカーブに進入する際、車両の重心を起点にして外側に遠心力が発生しています。遠心力は重量が重い車や車両ほど大きくなります。そのために、車体を軽量化し、それを打ち消すために車体を最大6°まで傾斜させて高速でカーブに進入しながらも、一定の乗り心地を維持しています。
例えば、普通自動車で100km/hでカーブに進入した場合と、高速バスで100km/hでカーブに進入した場合、乗り心地や安定性の差は一目瞭然ですよね。それと同じです。
また、車両の重心を起点にして外側に遠心力が発生するということは、軽量化だけしても重心が高ければ意味がないわけです。それも遠心力が多く働いてしまう理由になります。そこでキハ283系では・・・

1月の代走の4両編成の写真です。真上から撮影したものですが、本来屋根上に設置される機器も全て床下に搭載されているのがキハ283系の特徴です。既に廃車されたキハ285系も屋根には一切機器がありませんでしたね。
車両上部を軽量化することで重心は下がります。自動車の分野においては、ボンネットやルーフ、トランク素材をアルミやカーボンに変えて軽量化することで低重心化を図っているスポーツタイプの自動車も存在します。軽量且つ重心が低ければカーブを通過する際も遠心力が少なくなり、高速走行且つ乗り心地に貢献できるというわけです。これは自動車でも同じですね。
こうしてみると、キハ283系の場合は、レーシングカーの技術も入っていたりします。鉄道界のコーナリングマシンといったところでしょうか。実際に過去に発売された鉄道雑誌では、コーナリングマシンと記載されていたこともありましたね。
ただ、それもいずれは限界がきます。ボディ剛性が極限まで高くても、ボディに想定以上の負荷をかけ続ければ、いずれは自動車と同様に乗り心地が悪くなったりします。それでも早急に置き換えることが困難な状況から、最高速度を落として使用せざるを得ないのです。それが現在のキハ283系です。
また、リンク式自己操舵台車の採用により、台車の構造は従来の車両からより複雑化しました。これによって部品が多くなったり、可動する部分が多くなったことで、下回りの老朽・劣化が早まったことも事実であり、これも最高運転速度を落とさざるを得ない理由の1つだと推測しています。
一度は利用客から高評価を受け、性能も日本の特急気動車のトップまで君臨し、キハ283系、「スーパーおおぞら」にとって敵なし状態でしたが、それ以降は高速道路の延伸や過酷な使用環境の中で発生した仲間の焼失、車両不具合の連続、減速運転と波乱万丈の23年間だったと思います。一部車両はまだまだ現役ですが、キハ261系1000番台の置き換えが始まったとすれば、「スーパーおおぞら」として活躍したキハ283系もそう遠くないちかい将来、引退してしまうかもしれませんね。
愛称は「おおぞら」となってしまいましたが、所要時間はほぼ据え置かれています。確認できる機会は少なくなってしまいましたが、引き続き「おおぞら」として活躍を期待しましょう。
ちなみに・・・



「スーパーおおぞら」出発時に見られる行先表示器のイラストです。過去にキハ283系は「スーパー北斗」や「スーパーとかち」にも使用されていましたが、出発時はイラストは見られず、このイラストが見られるのは「スーパーおおぞら」運行時の特権でした。
数年前から一部車両のLEDが更新され、過去の「スーパー北斗」や「スーパーとかち」同様、発車時のこのイラストは見られなくなっています。LED未更新車については、ダイヤ改正を機に営業運転を外れるかと思いきや、一部車両は引き続き営業運転に入っており、名称が「おおぞら」になって以降も、このイラストが見られるようです。
このように、まだまだ「スーパーおおぞら」の名残りが残っている部分もあります。こうした記録は早めにしておいた方が良さそうです。
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