【コラム】旭川駅特急乗継体系開始から3年~運用の制約と沿線自治体が望む札幌直通
コラム - 2020年03月28日 (土)
3年前の3月4日のダイヤ改正は、道北方面の輸送が大きく変わったダイヤ改正でした。
それから3年。運行時刻を大きく変更することなく、3年間ほぼ同じダイヤで運行してきました。
2017年3月4日を機に、札幌~稚内間の特急列車は3往復設定されていましたが、そのうち2往復が旭川~稚内間の運転になりました。札幌~網走間の特急列車についても、4往復中2往復が旭川~網走間の運転となりました。
これら一部特急列車の運行区間縮小は、利用客の減少ではありません。苗穂運転所(札ナホ)に所属していたキハ183系の老朽・劣化でした。
当時、苗穂運転所にはまだキハ183系のうち、車齢の高い0番台が在籍しており、老朽・劣化状況が激しい状態でした。それは2016年4月のニュースリリースでも我々一般人に向けて公表されていますね。


この老朽・劣化によって車両数が確保できなくなりました。もちろん、車齢が低かったマイナーチェンジ版のキハ183系も一部で在籍していましたが、当時は0番台の車両数が多く、それらの車両を淘汰した場合、それまでの運用を全て受け持つことはできない状況でした。現に運行縮小前は老朽・劣化を起因する編成変更が相次ぎ、所定の運行でも全ての運用で所定の編成が組めなくなるほどの異常事態に陥りました。
そこで考え出されたのが、一部特急列車を旭川駅発着とすることで本数を確保しつつ、運用を減らす方法です。
網走方面にキハ183系を捻出しなければならないため、札幌~稚内間の特急を再編しました。3往復中2往復を旭川駅発着とし、名称を「サロベツ」としました。1往復は札幌駅発着のまま残され、「宗谷」になりました。車両は「宗谷」と「サロベツ」ともに「スーパー宗谷」として使用していたキハ261系0番台が充当されるようになります。
これによって、老朽・劣化の激しいキハ183系の一部を淘汰しつつ、札幌・旭川~網走間の特急用車両も一定数確保することが可能になりました。それでも、4往復中2往復が旭川駅発着となり、愛称も新たに「大雪」として運行されるようになります。


3枚目と4枚目の写真は旭川駅での乗継シーンです。旭川駅で接続を図る列車は10分程度で同一ホームで接続が図られます。原則3番線と4番線を使用しますが、ほかの列車の発着で混雑している夕方以降の「サロベツ」2本については、5番線・6番線での接続となります。
旭川駅発着列車の新設に伴い、札幌~旭川間については、電車特急による代替となりました。
789系0番台道央圏転用に伴い、「ライラック」として一部列車については、網走・稚内方面の特急列車との接続が図られるようになりました。これにより、2017年3月当時のダイヤ改正資料では電車特急を1往復増発する内容を大々的に告知していましたが、実際は「オホーツク」2往復と「スーパー宗谷」1往復、「サロベツ」1往復の計4往復分が減便になっているので、札幌~旭川間は実質3往復の減便となりました。
実際に網走・稚内方面との特急列車との接続のために新たに設けられた列車は、特急「ライラック25号」と特急「ライラック18号」の1往復のみで、それ以外の列車については、既存のダイヤを「ライラック」化して従来の「スーパーカムイ」との機能を集約した形になりました。5両編成から6両編成に増強されていますが、輸送力不足に陥っている様子はないため、これは網走・稚内方面から(へ)の利用も減少していることにほかなりません。
運用数を削減できたことで、全体的な車両の保有数も減らすことができ、且つ特急列車の本数も維持することができましたが、逆に運用数削減に伴い、設定時間帯を大きく変更せざるを得なくなったのも事実で、加えて、「ライラック」との接続も関係していることから、ダイヤ上・運行上の制約が生まれていることも事実です。
ダイヤ上・運行上の制約とは、運用数が限られているため、その分ダイヤを極限まで切り詰めて設定しなければなりません。その例として終着駅に到着しても折り返し時間が確保されない列車が多く、遅延が発生した場合は、折り返す列車にも遅延が生じてしまう場合もあります。さらに、稚内方面については、燃料の問題もあり、運用の途中で給油タイムを設けないといけなくなりました。これにより、どちらの運用も次の充当列車まで3時間以上時間が開く運用があり、特に稚内方面と札幌方面の最終特急列車については、運行時刻を繰り下げなくてはならなくなり、従来よりも利便性が悪いダイヤになってしまいました。
また、旭川駅発着列車について、札幌~旭川間は「ライラック」で代替している列車もあるので、運行時刻を変更しようにもすることができず、運行体系の再編から3年もの間、札幌~旭川間を含めて大きくダイヤを変更することはありませんでした。
さまざまな運行の制約を抱えながら、またそれが絡み合いながら完成したのが現行ダイヤです。簡単にダイヤの見直しはできないというのが実情です。
別に789系0番台を接続列車として重宝する必要はないのです。789系1000番台にもその機能を担うことができるかもしれません。例えば、編成の向きを変えたらどうでしょう?uシートをグリーン車にしたらどうでしょう?グリーン車ではなくても、グリーン車に代わるサービスを導入したらどうでしょう?
編成ごと方向転換したら実はキハ183系の「オホーツク」・「大雪」と似たような編成になります。編成まるごと方向転換してuシートを何らかの形でグリーン車を代替するようなサービスに変えてしまえば、新たに「大雪」の接続列車として機能することができるかもしれないのです。2編成だけ残っている785系についても同じです。
なぜこのような考えが出てくるかというと、789系0番台の冬季における故障が多いからです。冬季に故障が多くなるということはおそらく雪害による可能性が高く、そうなれば、雪が少ない道南方面で運行する「すずらん」に回し、「ライラック」は運用上の都合を含めて最低限の本数だけ運行すればよいと思います。ここで「ライラック」として機能を果たすべきは「サロベツ」との接続であり、おそらく編成が2本あれば十分足りるでしょう。
いろいろと考え方によっては改善策なんてたくさんあります。一方で沿線自治体では、やはり札幌直通の特急列車を望んでいるようです。先日も豊富町?幌延町?あたりでそのような要望がありましたね。
しかし、キハ261系を製造するには1両あたり3億円必要です。既存の編成に合わせると12億円必要です。とてもすぐにOKが出せるような金額ではありませんよね。
このように、接続改善を実施するよりも沿線自治体は札幌直通列車を望んでいるようです。宗谷本線では、既存のローカル駅の整理とともに、いまだに特急の札幌直通の要望が出ているのです。とても難しい問題です。
とりあえず、3年前の旭川駅発着の特急列車誕生とその事情、管理者なりの輸送改善方法、札幌直通を望む声をそれぞれ紹介しました。まだまだ北海道の鉄道における諸問題を全て解決するには、時間がかかりそうです。
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それから3年。運行時刻を大きく変更することなく、3年間ほぼ同じダイヤで運行してきました。
2017年3月4日を機に、札幌~稚内間の特急列車は3往復設定されていましたが、そのうち2往復が旭川~稚内間の運転になりました。札幌~網走間の特急列車についても、4往復中2往復が旭川~網走間の運転となりました。
これら一部特急列車の運行区間縮小は、利用客の減少ではありません。苗穂運転所(札ナホ)に所属していたキハ183系の老朽・劣化でした。
当時、苗穂運転所にはまだキハ183系のうち、車齢の高い0番台が在籍しており、老朽・劣化状況が激しい状態でした。それは2016年4月のニュースリリースでも我々一般人に向けて公表されていますね。


この老朽・劣化によって車両数が確保できなくなりました。もちろん、車齢が低かったマイナーチェンジ版のキハ183系も一部で在籍していましたが、当時は0番台の車両数が多く、それらの車両を淘汰した場合、それまでの運用を全て受け持つことはできない状況でした。現に運行縮小前は老朽・劣化を起因する編成変更が相次ぎ、所定の運行でも全ての運用で所定の編成が組めなくなるほどの異常事態に陥りました。
そこで考え出されたのが、一部特急列車を旭川駅発着とすることで本数を確保しつつ、運用を減らす方法です。
網走方面にキハ183系を捻出しなければならないため、札幌~稚内間の特急を再編しました。3往復中2往復を旭川駅発着とし、名称を「サロベツ」としました。1往復は札幌駅発着のまま残され、「宗谷」になりました。車両は「宗谷」と「サロベツ」ともに「スーパー宗谷」として使用していたキハ261系0番台が充当されるようになります。
これによって、老朽・劣化の激しいキハ183系の一部を淘汰しつつ、札幌・旭川~網走間の特急用車両も一定数確保することが可能になりました。それでも、4往復中2往復が旭川駅発着となり、愛称も新たに「大雪」として運行されるようになります。


3枚目と4枚目の写真は旭川駅での乗継シーンです。旭川駅で接続を図る列車は10分程度で同一ホームで接続が図られます。原則3番線と4番線を使用しますが、ほかの列車の発着で混雑している夕方以降の「サロベツ」2本については、5番線・6番線での接続となります。
旭川駅発着列車の新設に伴い、札幌~旭川間については、電車特急による代替となりました。
789系0番台道央圏転用に伴い、「ライラック」として一部列車については、網走・稚内方面の特急列車との接続が図られるようになりました。これにより、2017年3月当時のダイヤ改正資料では電車特急を1往復増発する内容を大々的に告知していましたが、実際は「オホーツク」2往復と「スーパー宗谷」1往復、「サロベツ」1往復の計4往復分が減便になっているので、札幌~旭川間は実質3往復の減便となりました。
実際に網走・稚内方面との特急列車との接続のために新たに設けられた列車は、特急「ライラック25号」と特急「ライラック18号」の1往復のみで、それ以外の列車については、既存のダイヤを「ライラック」化して従来の「スーパーカムイ」との機能を集約した形になりました。5両編成から6両編成に増強されていますが、輸送力不足に陥っている様子はないため、これは網走・稚内方面から(へ)の利用も減少していることにほかなりません。
運用数を削減できたことで、全体的な車両の保有数も減らすことができ、且つ特急列車の本数も維持することができましたが、逆に運用数削減に伴い、設定時間帯を大きく変更せざるを得なくなったのも事実で、加えて、「ライラック」との接続も関係していることから、ダイヤ上・運行上の制約が生まれていることも事実です。
ダイヤ上・運行上の制約とは、運用数が限られているため、その分ダイヤを極限まで切り詰めて設定しなければなりません。その例として終着駅に到着しても折り返し時間が確保されない列車が多く、遅延が発生した場合は、折り返す列車にも遅延が生じてしまう場合もあります。さらに、稚内方面については、燃料の問題もあり、運用の途中で給油タイムを設けないといけなくなりました。これにより、どちらの運用も次の充当列車まで3時間以上時間が開く運用があり、特に稚内方面と札幌方面の最終特急列車については、運行時刻を繰り下げなくてはならなくなり、従来よりも利便性が悪いダイヤになってしまいました。
また、旭川駅発着列車について、札幌~旭川間は「ライラック」で代替している列車もあるので、運行時刻を変更しようにもすることができず、運行体系の再編から3年もの間、札幌~旭川間を含めて大きくダイヤを変更することはありませんでした。
さまざまな運行の制約を抱えながら、またそれが絡み合いながら完成したのが現行ダイヤです。簡単にダイヤの見直しはできないというのが実情です。
別に789系0番台を接続列車として重宝する必要はないのです。789系1000番台にもその機能を担うことができるかもしれません。例えば、編成の向きを変えたらどうでしょう?uシートをグリーン車にしたらどうでしょう?グリーン車ではなくても、グリーン車に代わるサービスを導入したらどうでしょう?
編成ごと方向転換したら実はキハ183系の「オホーツク」・「大雪」と似たような編成になります。編成まるごと方向転換してuシートを何らかの形でグリーン車を代替するようなサービスに変えてしまえば、新たに「大雪」の接続列車として機能することができるかもしれないのです。2編成だけ残っている785系についても同じです。
なぜこのような考えが出てくるかというと、789系0番台の冬季における故障が多いからです。冬季に故障が多くなるということはおそらく雪害による可能性が高く、そうなれば、雪が少ない道南方面で運行する「すずらん」に回し、「ライラック」は運用上の都合を含めて最低限の本数だけ運行すればよいと思います。ここで「ライラック」として機能を果たすべきは「サロベツ」との接続であり、おそらく編成が2本あれば十分足りるでしょう。
いろいろと考え方によっては改善策なんてたくさんあります。一方で沿線自治体では、やはり札幌直通の特急列車を望んでいるようです。先日も豊富町?幌延町?あたりでそのような要望がありましたね。
しかし、キハ261系を製造するには1両あたり3億円必要です。既存の編成に合わせると12億円必要です。とてもすぐにOKが出せるような金額ではありませんよね。
このように、接続改善を実施するよりも沿線自治体は札幌直通列車を望んでいるようです。宗谷本線では、既存のローカル駅の整理とともに、いまだに特急の札幌直通の要望が出ているのです。とても難しい問題です。
とりあえず、3年前の旭川駅発着の特急列車誕生とその事情、管理者なりの輸送改善方法、札幌直通を望む声をそれぞれ紹介しました。まだまだ北海道の鉄道における諸問題を全て解決するには、時間がかかりそうです。
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