【コラム】9年前の大事故を忘れてはならない
コラム - 2020年05月29日 (金)
正式には2日経過してしまいましたが、9年前のあの事故を忘れてはなりません。



「石勝線列車脱線火災事故」ですよね。
9年前の5月27日21時55分頃に、特急「スーパーおおぞら14号」が石勝線の新夕張~占冠間の清風山信号場付近を走行中に脱線し、第1ニニウトンネル内に停止後、列車から火災が発生しました。
乗務員は避難誘導ができず、利用客自身でドアを開けて降車し、徒歩でトンネル内から脱出しました。この事故によって、死者こそ出さなかったものの、利用客78名と乗務員1名が負傷されました。
原因として、JR北海道では次のように説明しています。
【車輪の表面が急ブレーキ等により部分的に摩耗し、円形形状が不整となったため、振動により4両目の減速機を支える吊りピンが脱落。これにより4両目の減速機と推進軸が脱落し後部台車2軸が脱落、脱落した減速機の「かさ歯車」が衝撃したことにより、6両目の燃料タンクが破損。漏れ出した経由が飛散し、発電機付近で出火したものと考えられます。】
この大事故をきっかけに、事故後の対策として、現地の判断を最優先とする「緊急時のお客様避難誘導マニュアル」の策定や、トンネル設備の改善、車両に避難はしごや懐中電灯を設置しています。
そのほか、さまざまな検査基準の見直しや、車両メンテナンスに必要な時間を十分に確保すべく、減速運転による車両への負荷軽減や、減便による予備車両確保に努めています。
また、避難誘導訓練も実施しており、教育や訓練の充実を図っています。
この脱線火災事故こそ、昨今のJR北海道につながる初めの出来事でした。これ以降、車両トラブルが相次いだり、軌道検査データの改ざんなどの不祥事にも見舞われるようになります。これらの問題を1つ1つ解決していく一方で、次は経営がひっ迫し、これまで後回しにされてきたローカル輸送を中心とした経営改善に踏み切ることになります。
事故後に廃止された路線は、江差線の木古内~江差間、留萌本線の留萌~増毛間、夕張支線の新夕張~夕張間、そして先日廃止された札沼線の北海道医療大学~新十津川間です。江差線については、五稜郭~木古内間の第三セクター化によって孤立するという車両繰り等の理由もありますが、不採算路線であったことは変わりませんでした。
そして、来年3月のダイヤ改正では、不採算路線の存廃については見送られるものの、極端に利用の少ない旅客駅を廃止する方針で調整しています。国鉄時代、旧旭川鉄道管理局(現在のJR北海道旭川支社)の下で設けられた仮乗降場の数が道内でも圧倒的に多く、その多くが国鉄分割民営化とともに正式に旅客駅へと昇格しています。営業キロを正式に設けることで正式な運賃計算が可能になることや、時刻表への記載がされることが主な理由だと思います。
元々駅を設けるほどの利用はないが、無視できないエリアに設置された仮乗降場ですから、設置から長い年月が設置した昨今では、周囲の人口がゼロになり、当然使用されていない駅も出てきました。来年3月のダイヤ改正ではついにそこにメスが入ります。
たとえ利用がない駅でも、存続しているだけでお金がかかります。北海道の場合だと、極端な例で除雪費用です。特に旧旭川鉄道管理局管内となると、豪雪地帯になりますから、除雪作業は必須となります。そこに人手が少なからずかかりますから、たとえ1両程度のホームしかない簡素な駅でも構造や設置場所によって年間数十万円の除雪費用がかかります。駅単体でみれば、利用者がほぼゼロで、除雪費用がかかりますから、単純に赤字という計算です。
これらの駅を廃止しただけでも、大幅なコスト削減につながりますから、今回はココにメスが入り、後回しにされていたローカル輸送がさらに改善されていきます。
昨今の新型コロナウィルスのJR北海道の対応について、皆さんはどのような印象・見解を持ちましたか?管理者としては、さまざまな公共交通の中でもいち早く対応していたと思います。こうした緊急時における対応の迅速さについては、これまで幾度となく発生してきた緊急時における実際の現場での経験やその積み重ねが反映されていたと思います。決して今回だけではありません。車両不具合の際も遅延を最小限に抑えたり、別の車両を手配して折り返しとなる列車への影響等を少なくしています。
やはり、石勝線の脱線火災事故をきっかけに、安全運行という重要な基盤とともに、緊急時において迅速に対応できるようになりました。そして、それが教育・訓練という形で若手へと受け継がれていきます。この効果はすぐに出るわけではありませんが、例えば、その教育・訓練を受けた若手社員が後々会社を引っ張っていく存在になった際、どんな状況下でも対応できるJR北海道になっている可能性だってあるのです。
事故が起きてよかったわけではありませんが、事故をきっかけにより良い方向へ向かっていることは事実です。まだまだ長い年月がかかりそうですが、その効果は後々大きく評価されることは言うまでもありません。

火災事故で焼失したキハ283系の6両編成は、車体を切断したうえで現地からトラックで運ばれたことを耳にしていますが、一部車両は今も残されています。あくまでカットボディですが、JR函館本線の稲穂駅前に新たに設けられた社員研修センター内に「安全研修館」を設置しています。
一連の事故・事象・事業改善命令・監督命令を受けた会社の現状を振り返るとともに、安全についての考え方を理解し、安全意識及びコンプライアンス意識を醸成することを目的とした第Ⅱ期安全研修のために設置された施設です。
事故に関連する実物の展示をはじめ、大型グラフィック、事故当時の新聞記事、事故を経験した社員・関係者が語る体験談により、事故当時の状況、事故・事象の重大さについて身をもって体得してもらう施設となっています。
安全意識を継続して高め、安全風土を構築するとともに、鉄道人として鉄路を守る「仕事への誇り」・「使命感」を培うことができる安全研修施設を目指しているようです。
石勝線列車脱線火災事故は、JR北海道が変わるきっかけになった最初の出来事として、忘れてはならない出来事です。事故発生から長い年月が経過しましたが、こうして度々取り上げることで、改めて考えさせられることはたくさんあります。昨今は新型コロナウィルスの影響で大きく利用が落ち込んでいますが、JR北海道は事故発生から9年もの間、何度も危機的状況を乗り越えてきました。今回のコロナウィルスに関しても、必ずや乗り越えてくれるものと期待しています。
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「石勝線列車脱線火災事故」ですよね。
9年前の5月27日21時55分頃に、特急「スーパーおおぞら14号」が石勝線の新夕張~占冠間の清風山信号場付近を走行中に脱線し、第1ニニウトンネル内に停止後、列車から火災が発生しました。
乗務員は避難誘導ができず、利用客自身でドアを開けて降車し、徒歩でトンネル内から脱出しました。この事故によって、死者こそ出さなかったものの、利用客78名と乗務員1名が負傷されました。
原因として、JR北海道では次のように説明しています。
【車輪の表面が急ブレーキ等により部分的に摩耗し、円形形状が不整となったため、振動により4両目の減速機を支える吊りピンが脱落。これにより4両目の減速機と推進軸が脱落し後部台車2軸が脱落、脱落した減速機の「かさ歯車」が衝撃したことにより、6両目の燃料タンクが破損。漏れ出した経由が飛散し、発電機付近で出火したものと考えられます。】
この大事故をきっかけに、事故後の対策として、現地の判断を最優先とする「緊急時のお客様避難誘導マニュアル」の策定や、トンネル設備の改善、車両に避難はしごや懐中電灯を設置しています。
そのほか、さまざまな検査基準の見直しや、車両メンテナンスに必要な時間を十分に確保すべく、減速運転による車両への負荷軽減や、減便による予備車両確保に努めています。
また、避難誘導訓練も実施しており、教育や訓練の充実を図っています。
この脱線火災事故こそ、昨今のJR北海道につながる初めの出来事でした。これ以降、車両トラブルが相次いだり、軌道検査データの改ざんなどの不祥事にも見舞われるようになります。これらの問題を1つ1つ解決していく一方で、次は経営がひっ迫し、これまで後回しにされてきたローカル輸送を中心とした経営改善に踏み切ることになります。
事故後に廃止された路線は、江差線の木古内~江差間、留萌本線の留萌~増毛間、夕張支線の新夕張~夕張間、そして先日廃止された札沼線の北海道医療大学~新十津川間です。江差線については、五稜郭~木古内間の第三セクター化によって孤立するという車両繰り等の理由もありますが、不採算路線であったことは変わりませんでした。
そして、来年3月のダイヤ改正では、不採算路線の存廃については見送られるものの、極端に利用の少ない旅客駅を廃止する方針で調整しています。国鉄時代、旧旭川鉄道管理局(現在のJR北海道旭川支社)の下で設けられた仮乗降場の数が道内でも圧倒的に多く、その多くが国鉄分割民営化とともに正式に旅客駅へと昇格しています。営業キロを正式に設けることで正式な運賃計算が可能になることや、時刻表への記載がされることが主な理由だと思います。
元々駅を設けるほどの利用はないが、無視できないエリアに設置された仮乗降場ですから、設置から長い年月が設置した昨今では、周囲の人口がゼロになり、当然使用されていない駅も出てきました。来年3月のダイヤ改正ではついにそこにメスが入ります。
たとえ利用がない駅でも、存続しているだけでお金がかかります。北海道の場合だと、極端な例で除雪費用です。特に旧旭川鉄道管理局管内となると、豪雪地帯になりますから、除雪作業は必須となります。そこに人手が少なからずかかりますから、たとえ1両程度のホームしかない簡素な駅でも構造や設置場所によって年間数十万円の除雪費用がかかります。駅単体でみれば、利用者がほぼゼロで、除雪費用がかかりますから、単純に赤字という計算です。
これらの駅を廃止しただけでも、大幅なコスト削減につながりますから、今回はココにメスが入り、後回しにされていたローカル輸送がさらに改善されていきます。
昨今の新型コロナウィルスのJR北海道の対応について、皆さんはどのような印象・見解を持ちましたか?管理者としては、さまざまな公共交通の中でもいち早く対応していたと思います。こうした緊急時における対応の迅速さについては、これまで幾度となく発生してきた緊急時における実際の現場での経験やその積み重ねが反映されていたと思います。決して今回だけではありません。車両不具合の際も遅延を最小限に抑えたり、別の車両を手配して折り返しとなる列車への影響等を少なくしています。
やはり、石勝線の脱線火災事故をきっかけに、安全運行という重要な基盤とともに、緊急時において迅速に対応できるようになりました。そして、それが教育・訓練という形で若手へと受け継がれていきます。この効果はすぐに出るわけではありませんが、例えば、その教育・訓練を受けた若手社員が後々会社を引っ張っていく存在になった際、どんな状況下でも対応できるJR北海道になっている可能性だってあるのです。
事故が起きてよかったわけではありませんが、事故をきっかけにより良い方向へ向かっていることは事実です。まだまだ長い年月がかかりそうですが、その効果は後々大きく評価されることは言うまでもありません。

火災事故で焼失したキハ283系の6両編成は、車体を切断したうえで現地からトラックで運ばれたことを耳にしていますが、一部車両は今も残されています。あくまでカットボディですが、JR函館本線の稲穂駅前に新たに設けられた社員研修センター内に「安全研修館」を設置しています。
一連の事故・事象・事業改善命令・監督命令を受けた会社の現状を振り返るとともに、安全についての考え方を理解し、安全意識及びコンプライアンス意識を醸成することを目的とした第Ⅱ期安全研修のために設置された施設です。
事故に関連する実物の展示をはじめ、大型グラフィック、事故当時の新聞記事、事故を経験した社員・関係者が語る体験談により、事故当時の状況、事故・事象の重大さについて身をもって体得してもらう施設となっています。
安全意識を継続して高め、安全風土を構築するとともに、鉄道人として鉄路を守る「仕事への誇り」・「使命感」を培うことができる安全研修施設を目指しているようです。
石勝線列車脱線火災事故は、JR北海道が変わるきっかけになった最初の出来事として、忘れてはならない出来事です。事故発生から長い年月が経過しましたが、こうして度々取り上げることで、改めて考えさせられることはたくさんあります。昨今は新型コロナウィルスの影響で大きく利用が落ち込んでいますが、JR北海道は事故発生から9年もの間、何度も危機的状況を乗り越えてきました。今回のコロナウィルスに関しても、必ずや乗り越えてくれるものと期待しています。
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