【コラム】存廃に揺れる留萌本線
コラム - 2021年02月07日 (日)
2016年12月に留萌本線の留萌~増毛間が廃止されました。これによって、日本の在来線において最短の本線となってしまいました。
本線とは、重要な路線あるいは、支線を束ねる路線のことを指します。
一時終息したかに見えた留萌本線の存廃問題ですが、昨今になって再び問題として取り上げられ、残存している深川~留萌間の全線を廃止するか、深川~石狩沼田間で存続するかで議論が並行線を辿っています。
協議には留萌市も加わっていましたが、留萌市だけは廃止は容認済みで、今後は深川市、秩父別町、沼田町とJR北海道で話し合いを継続していきます。
2018年度における1日の輸送密度は218人。これは、留萌本線にまだ優等列車が走っていた1970年代初頭と比べて1/10以下になっています。この数字は北海道でも大赤字路線として取り上げられていた深名線や、オホーツク海に沿って敷設された湧網線よりも下回っている状況です。
輸送密度が3倍にあたる天北線ですら廃止され、しかも長大4線として一時期廃止を見送った時期もありました。国鉄時代なら間違いなく即切り捨てられるレベルです。
基本的に、路線の存廃問題になる際、利用状況をみて残すか、残さないかで判断しますが、北海道の場合、根本的にほとんどの鉄道路線で本州のように敷設された経緯が異なるケースが大半です。それに加え、鉄道とは大量輸送を実施してこそ威力を発揮することを理解しなければなりません。
これらを踏まえたうえで、存廃問題に踏み込む必要があります。
まず、留萌本線とは、良港として栄えた留萌港への石炭や木材、海産物等の輸送のため、北海道鉄道敷設法に規定する予定線として建設されました。まず第一に、留萌本線が生まれた経緯として、昨今のように通学などの人の移動を主目的とするのではなく、あくまで物資輸送を主目的として計画された路線だということを押さえておく必要があります。
日本海側の拠点として栄えたかつての留萌市。そして、石炭を含めた物資輸送などで1970年代あたりまでは留萌本線は活気に満ち溢れていたと思います。一方、炭鉱の閉山、物資輸送もコストがかからないトラックが主体となり、輸送量が減少し、やがて貨物列車も廃止されます。この時点で、敷設された当初の役目は終えていたのです。
ですが、産業が衰退したとしても沿線住民の足としての役割があったことで昨今まで存続してきました。
昨今の存廃問題では、現在の途中までの区間でも残すべきという声があります。理由は学生の足を確保することがねらいですが、これまでの報道内容や市民団体の活動を踏まえると、肝心の学生の声が聞こえてこないんですよね。
これは北海道あるあるで、日高本線にしても、昨年廃止された札沼線末端区間についても、肝心の利用者の声が全く聞こえてきませんでした。確かに、「残してほしい」や「鉄道がなかったら困る」という声はありました。しかし、それを発言している人間が日頃列車を利用しているかと言われれば、利用していないんですよね。それは発表されていた数字をみても明らかでした。
特にこの問題が顕著に表れたのが日高本線で、存廃問題に揺れ始めた当初、地元の報道機関を鵜呑みにし、世間はJR北海道を強く非難しました。
しかし、実際に全国放送で日高本線の利用実態が報道されると、学生利用は少なく、理由はバスの方が通学に便利という理由から、そもそも鉄道の必要性が少なかった点について触れられ、そこから一気に世論が変わりました。要は沿線の首長が廃止に反対していただけで、大事な沿線住民の声を無視し続けていたのです。
北海道では、利用僅少という理由から、鉄道路線の廃止が進められていますが、今まで沿線住民に対して鉄道が必要かどうかのアンケート等を実施したことはほとんどないはずです。理由は沿線住民の声に耳を傾けると、沿線自治体側が負けるからです。
今回の存廃問題で焦点になっている通学利用についても同様で、通学利用があることは確かです。ですが、実際にどこからどこまでの区間でどれほどの利用があるかまで詳細な利用実態が明らかにされていないんです。おそらくこの利用実態が明かされれば沿線自治体側は負けになるはずです。ただでさえ、ある程度の利用実態は数字として出されていますからね。
留萌本線の深川~留萌間の営業係数をみると、昨年度は1,821でした。100円の収入を得るのに1,821円も要してしまうのです。これは、北海道でバスによる代行輸送を実施している路線を除く、鉄道路線として残っている中ではワーストです。ワースト順位で2番目で、1番は東鹿越~新得間でバスによる代行輸送を実施している根室本線の富良野~新得間の2,825です。
留萌本線もそこまで長い路線距離を有しているわけではありません。全体で50kmほどの路線で、駅数も12しかありません。それでも、営業係数1,821を叩きだすということは、おそらく日頃の利用実態が酷いと言わざるを得ません。国鉄時代でも営業係数が1,000を超える路線はほとんどないはずで、それまでに特定地方交通線に指定されて廃止された例がほとんどです。
例えば、北海道の鉄道を国有化させるべきという意見もありますが、そうなれば、こうした不採算路線は今以上のハイペースで切られていくことが予想されます。高速化にひた走り、不採算路線や利用のない駅の整理を疎かにしてきたからこそ、不採算路線の問題が山積みになっています。なのでそうした路線が残り続けていること自体、ある意味で奇跡なんですよ。
昨今の留萌本線の利用実態は不明ですが、2018年度と比べて営業係数が+20になっているので、鉄道愛好者らの利用もほとんどないのが、あくまで数字から見える実態です。管理者もいつか利用実態は確認してみたいです。報道内容と合致しているかどうか。
加えて、今回の留萌本線の件について、JR北海道も一部存続を難しい方針を示しています。これまでとは違うJR北海道の姿勢にも驚きますが、列車を運行するうえで除雪など以外にも大きな負担になっていることも事実です。
実は、留萌本線内では車両の夜間滞泊を実施しておらず、早朝と深夜で列車の運行前と運行終了後は車両を旭川まで回送させています。中には留萌駅を朝6時前に出発する列車もありますから、留萌本線をなくすことで、車両の整備にしても、乗務員にしても負担を軽減させることができるわけです。本州ではこうした運用を組むこと自体ほぼあり得ないと思いますが、北海道においては、冬季における車輪の凍結などに備えて、ある程度起点の場所まで車両を回送させなければなりません。
もちろん途中の駅などでの夜間滞泊はありますが、深川駅や留萌駅などでは実施していません。留萌行きの最終列車が留萌駅到着後、そのまま運用を終了して翌朝の始発に充当するわけでなく、車両は旭川まで回送しなければならないため、その日はもうひと踏ん張りするのです。
また、JR北海道側としても、留萌本線を廃止にしなければ示しがつかない点もあるのです。それは、留萌本線よりも営業係数が良かった札沼線の北海道医療大学~新十津川間が昨年廃止され、日高本線の鵡川~様似間も廃止は決まっています。そのような中で、それら路線よりも悪い数字の路線が残ることは、沿線各自治体と存廃問題について協議してきたJR北海道としては示しがつかないわけです。
なぜ、我々(日高本線や札沼線)よりも数字の悪い路線を残しているのか、と。
基本的に存廃問題を協議する場合、これまで複数の路線を掛け持ちすることはあまりなかったので、留萌本線が自治体の手によって残るまたは廃止で何らかの形で決着がつけば、次はワースト1位の根室本線の富良野~新得間に切り込んでいくのではないかとみています。
今回の存廃問題について、利点として上げられるのが深川市が参加していることです。深川市はかつて深名線廃止時も沿線自治体のうちの1つに加わっていたはずですから、鉄道路線廃止に伴う対応やその後の展開について参考になる点もたくさんあるはずです。鉄道路線廃止後の実態についても少なからず把握しているはずですから、深名線の事例を参考にしつつ、廃止するのか、残すのか、いずれにしても良い展開になることを期待しています。
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本線とは、重要な路線あるいは、支線を束ねる路線のことを指します。
一時終息したかに見えた留萌本線の存廃問題ですが、昨今になって再び問題として取り上げられ、残存している深川~留萌間の全線を廃止するか、深川~石狩沼田間で存続するかで議論が並行線を辿っています。
協議には留萌市も加わっていましたが、留萌市だけは廃止は容認済みで、今後は深川市、秩父別町、沼田町とJR北海道で話し合いを継続していきます。
2018年度における1日の輸送密度は218人。これは、留萌本線にまだ優等列車が走っていた1970年代初頭と比べて1/10以下になっています。この数字は北海道でも大赤字路線として取り上げられていた深名線や、オホーツク海に沿って敷設された湧網線よりも下回っている状況です。
輸送密度が3倍にあたる天北線ですら廃止され、しかも長大4線として一時期廃止を見送った時期もありました。国鉄時代なら間違いなく即切り捨てられるレベルです。
基本的に、路線の存廃問題になる際、利用状況をみて残すか、残さないかで判断しますが、北海道の場合、根本的にほとんどの鉄道路線で本州のように敷設された経緯が異なるケースが大半です。それに加え、鉄道とは大量輸送を実施してこそ威力を発揮することを理解しなければなりません。
これらを踏まえたうえで、存廃問題に踏み込む必要があります。
まず、留萌本線とは、良港として栄えた留萌港への石炭や木材、海産物等の輸送のため、北海道鉄道敷設法に規定する予定線として建設されました。まず第一に、留萌本線が生まれた経緯として、昨今のように通学などの人の移動を主目的とするのではなく、あくまで物資輸送を主目的として計画された路線だということを押さえておく必要があります。
日本海側の拠点として栄えたかつての留萌市。そして、石炭を含めた物資輸送などで1970年代あたりまでは留萌本線は活気に満ち溢れていたと思います。一方、炭鉱の閉山、物資輸送もコストがかからないトラックが主体となり、輸送量が減少し、やがて貨物列車も廃止されます。この時点で、敷設された当初の役目は終えていたのです。
ですが、産業が衰退したとしても沿線住民の足としての役割があったことで昨今まで存続してきました。
昨今の存廃問題では、現在の途中までの区間でも残すべきという声があります。理由は学生の足を確保することがねらいですが、これまでの報道内容や市民団体の活動を踏まえると、肝心の学生の声が聞こえてこないんですよね。
これは北海道あるあるで、日高本線にしても、昨年廃止された札沼線末端区間についても、肝心の利用者の声が全く聞こえてきませんでした。確かに、「残してほしい」や「鉄道がなかったら困る」という声はありました。しかし、それを発言している人間が日頃列車を利用しているかと言われれば、利用していないんですよね。それは発表されていた数字をみても明らかでした。
特にこの問題が顕著に表れたのが日高本線で、存廃問題に揺れ始めた当初、地元の報道機関を鵜呑みにし、世間はJR北海道を強く非難しました。
しかし、実際に全国放送で日高本線の利用実態が報道されると、学生利用は少なく、理由はバスの方が通学に便利という理由から、そもそも鉄道の必要性が少なかった点について触れられ、そこから一気に世論が変わりました。要は沿線の首長が廃止に反対していただけで、大事な沿線住民の声を無視し続けていたのです。
北海道では、利用僅少という理由から、鉄道路線の廃止が進められていますが、今まで沿線住民に対して鉄道が必要かどうかのアンケート等を実施したことはほとんどないはずです。理由は沿線住民の声に耳を傾けると、沿線自治体側が負けるからです。
今回の存廃問題で焦点になっている通学利用についても同様で、通学利用があることは確かです。ですが、実際にどこからどこまでの区間でどれほどの利用があるかまで詳細な利用実態が明らかにされていないんです。おそらくこの利用実態が明かされれば沿線自治体側は負けになるはずです。ただでさえ、ある程度の利用実態は数字として出されていますからね。
留萌本線の深川~留萌間の営業係数をみると、昨年度は1,821でした。100円の収入を得るのに1,821円も要してしまうのです。これは、北海道でバスによる代行輸送を実施している路線を除く、鉄道路線として残っている中ではワーストです。ワースト順位で2番目で、1番は東鹿越~新得間でバスによる代行輸送を実施している根室本線の富良野~新得間の2,825です。
留萌本線もそこまで長い路線距離を有しているわけではありません。全体で50kmほどの路線で、駅数も12しかありません。それでも、営業係数1,821を叩きだすということは、おそらく日頃の利用実態が酷いと言わざるを得ません。国鉄時代でも営業係数が1,000を超える路線はほとんどないはずで、それまでに特定地方交通線に指定されて廃止された例がほとんどです。
例えば、北海道の鉄道を国有化させるべきという意見もありますが、そうなれば、こうした不採算路線は今以上のハイペースで切られていくことが予想されます。高速化にひた走り、不採算路線や利用のない駅の整理を疎かにしてきたからこそ、不採算路線の問題が山積みになっています。なのでそうした路線が残り続けていること自体、ある意味で奇跡なんですよ。
昨今の留萌本線の利用実態は不明ですが、2018年度と比べて営業係数が+20になっているので、鉄道愛好者らの利用もほとんどないのが、あくまで数字から見える実態です。管理者もいつか利用実態は確認してみたいです。報道内容と合致しているかどうか。
加えて、今回の留萌本線の件について、JR北海道も一部存続を難しい方針を示しています。これまでとは違うJR北海道の姿勢にも驚きますが、列車を運行するうえで除雪など以外にも大きな負担になっていることも事実です。
実は、留萌本線内では車両の夜間滞泊を実施しておらず、早朝と深夜で列車の運行前と運行終了後は車両を旭川まで回送させています。中には留萌駅を朝6時前に出発する列車もありますから、留萌本線をなくすことで、車両の整備にしても、乗務員にしても負担を軽減させることができるわけです。本州ではこうした運用を組むこと自体ほぼあり得ないと思いますが、北海道においては、冬季における車輪の凍結などに備えて、ある程度起点の場所まで車両を回送させなければなりません。
もちろん途中の駅などでの夜間滞泊はありますが、深川駅や留萌駅などでは実施していません。留萌行きの最終列車が留萌駅到着後、そのまま運用を終了して翌朝の始発に充当するわけでなく、車両は旭川まで回送しなければならないため、その日はもうひと踏ん張りするのです。
また、JR北海道側としても、留萌本線を廃止にしなければ示しがつかない点もあるのです。それは、留萌本線よりも営業係数が良かった札沼線の北海道医療大学~新十津川間が昨年廃止され、日高本線の鵡川~様似間も廃止は決まっています。そのような中で、それら路線よりも悪い数字の路線が残ることは、沿線各自治体と存廃問題について協議してきたJR北海道としては示しがつかないわけです。
なぜ、我々(日高本線や札沼線)よりも数字の悪い路線を残しているのか、と。
基本的に存廃問題を協議する場合、これまで複数の路線を掛け持ちすることはあまりなかったので、留萌本線が自治体の手によって残るまたは廃止で何らかの形で決着がつけば、次はワースト1位の根室本線の富良野~新得間に切り込んでいくのではないかとみています。
今回の存廃問題について、利点として上げられるのが深川市が参加していることです。深川市はかつて深名線廃止時も沿線自治体のうちの1つに加わっていたはずですから、鉄道路線廃止に伴う対応やその後の展開について参考になる点もたくさんあるはずです。鉄道路線廃止後の実態についても少なからず把握しているはずですから、深名線の事例を参考にしつつ、廃止するのか、残すのか、いずれにしても良い展開になることを期待しています。
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