函館本線の長万部~余市間の廃止決定で活躍の場を追われるキハ201系
気動車 - 2022年02月16日 (水)
今回はキハ201系について。

写真右の赤ラインの列車なら札幌圏で腐るほど見かけると思いますが、左側のように青ラインの車両もあるのです。


しかもパンタグラフのない気動車です。特定の列車しか入らないので、狙わないとほぼほぼ乗れない車両です。
この車両は函館本線山線から札幌直通の所要時分短縮を目的に投入されましたが、山線区間の長万部~余市間の廃止が決まってしまい、キハ201系の活躍の場がなくなってしまいそうなのです。
現時点で小樽~余市間の廃止は決まっていませんが、小樽市としては、バス転換を推進する構えで、こちらが万が一廃止が決定してしまえば、キハ201系は投入当初の目的が完全に失われてしまうことになります。
元々は函館本線山線(倶知安方面)から札幌へ直通する際に所要時分短縮を目的に開発された車両です。投入前までは快速列車として運行していたようですが、各駅停車に変更したにも関わらず、所要時間短縮を果たしました。また、過密ダイヤとなる札幌圏での走行も視野に入れ、赤いラインの731系との動力協調運転を行い、単独で運行する際も札幌圏の近郊形電車と同等のダイヤで走行することができます。

もう5年ほど前に撮影した写真になりますが、動力協調運転時の写真です。先頭の3両はパンタグラフを有する電車で、後方3両が今回紹介している気動車です。パンタグラフがありません。同等の動力性能を有するので、協調運転ができます。
現在は朝の函館本線の小樽から札幌まで1本のみ実施されています。機器の稼働停止を防ぎ、定期的に稼働させるために実施しているようなものでしょう。以前は朝を中心に数本ありましたが、いずれも廃止されています。
電車と気動車による動力協調運転は、1989年~1992年までJR九州の485系(有明)+キハ183系1000番台(オランダ村特急)が日本で初めて営業列車として実施されました。
1992年3月にハウステンボスが開園されたのに伴い、特急「ハウステンボス」が運行を開始するとともに「オランダ村特急」の運転が終了したため、電車と気動車による協調運転は3年で終了しました。その後5年の空白期間を経て、今度は北海道で731系+キハ201系で動力協調運転が実現しました。
また、動力性能も凄く、外装は普通列車と変わりませんが、中身は特急気動車、それ以上のモンスターなのです。特急「宗谷」や特急「北斗」などで使用するキハ261系の普通列車版と思ってください。
全国的に特急気動車も年々進化してきて、従来のシャフトを介してエンジンから車輪へ動力を伝達する方式の車両も450ps級のエンジンを2基搭載し、高性能な電車の加速とほぼ負けない動力性能を手に入れました。それらさらなる高性能気動車の先駆けとなったのがキハ201系です。
搭載エンジンは、現在は重要機器取替工事施工に際し、N-DMF13HZL型(定格出力460 PS / 2100 rpm)に変わっています。1両に2基搭載しています。このエンジンはキハ261系1000番台の5次車(2015年度以降に増備)以降の車両と同型のエンジンです。
そして、このエンジンのパワーを引き立たせる軽い車体。キハ261系1000番台では1両あたり自重40t以上、最新のJR四国の2700系では自重50t程度ありますが、このキハ201系では中間車で自重35t程度しかなかったはずです。圧倒的な軽さによって、実はキハ261系や2700系などをはるかに上回る性能を秘めているのです。
理屈は簡単で、出力と自重の関係で1tあたりにどれぐらいの出力換算が可能かと計算したときに、車体が軽い方がその出力を得られるからです。
このように、外装は近郊形電車と変わらないですが、意外と凄い車両だったりするのです。
しかし、赤いラインの731系が大量に製造されたとは違い、青いラインのキハ201系は3両編成×4本しかありません。1997年に登場しましたが、当時としては製造費もバカ高の1両あたり4億円で、これが理由でその後増備されなかったという背景があります。インテリアやエクステリアは731系とほぼ共通ですが、動力協調設備や現在使われていない車体傾斜装置など、当時の最新設備も備わった車両なので、そこでおそらくコストがかけられているのでしょう。
この1両4億円というのは、実は新幹線1両あたりの製造費よりも高いのです。今でこそ「はやぶさ」で使用するE5系/H5系は1両あたり4.5億円ですが、北陸新幹線や上越新幹線で使用するE7系/W7系は2.7億円、今でも東海道新幹線などで活躍するN700Aで3億円です。

北海道で言えば、はまなす編成やラベンダー編成と製造費は同じ4億円です。
ただ、ここまで製造費をかけて投入したにも関わらず、次第に活躍の場が失われ、現在は電化区間での使用がメインとなっています。要はコストに見合った使用がされていないのです。
本来の目的の山線での使用は早朝と夕方以降しかありません。日中は予備で苗穂に待機している車両を含めて札幌圏で使用されます。2012年までは学園都市線の札幌~北海道医療大学間で一部の普通列車に充当されていましたが、同区間の列車が全て電車化されたことで営業運転から撤退しました。
一方、函館本線での運用が若干増え、日中は函館本線での使用に切り替わり、15時頃に札幌に戻ってきて苗穂に一旦入り、夕方以降、倶知安方面へ向かう準備をして出発していく流れです。運用から外れなければこれを繰り返します。
現在は予備車両確保の関係で日中稼働している編成は1編成のみとなりました。
仮に函館本線の山線が廃止されれば、早朝と深夜の運用がなくなってしまいます。その代替として函館本線などで使用してもいいですが、それでは完全に電化区間で使用することになり、今度は気動車の利点が生かされないのです。運用数も少なく、充当列車を考えれば、現状でもすぐに電車に置き換えられる状況です。実は函館本線山線の廃止で窮地に立たされる車両なのです。
営業運転開始から今年で25年が経過しました。そろそろ置き換えの時期だと思いますが、運用数が少ないことによる走行距離の関係や、上記のとおり、数年前に重要機器取替工事を施工したばかりでエンジンなどが新しいものに載せ替えられました。なので、函館本線山線の一部が廃止されたからといって、すぐに車両を廃車にはできない事情があります。
とはいえ、函館本線の山線は今後数年間は存続します。おそらく新幹線が札幌にやってくる前には廃止になりますが、それまでに転換されるバスの台数や乗務員の確保など、バス転換に向けた準備を実施する必要があるため、すぐに廃止とはなりません。廃止届を出すにも、営業を終了する1年前からと決められているのです。ですが、倶知安駅前とその周辺の再開発の関係で、そう長くは存続できないと予想し、節目となるのが2025年あたりになると思います。それまでは、キハ201系もかろうじて活躍の場が確保されます。
管理者としては、やはり他線区や他列車への転用が望ましく、以前から触れてきましたが、旭川~名寄間の快速「なよろ」への転用が車両を生かせられると思っています。ワンマン運転に対応していないため、車掌が乗務することになりますが、キハ261系が運行されていることで、転用に際してそこまで大きな変更なく対応可能だと思います。
そして、快速「なよろ」という列車の価値を高めることで、高速バスへの対抗、旭川駅において特急「ライラック」、特急「カムイ」との接続を図るようにすれば、キハ201系を最大限活用でき、尚且つ快速「なよろ」の列車としての価値も高めることができ、双方でメリットが得られると思います。
実際にこのようにはならず、おそらく札幌圏の電化区間で細々と使用されると思いますが、函館本線山線の廃止は、キハ201系にとっても大きな痛手になりそうです。そうなれば、特急気動車をも凌ぐ性能を誇るモンスターも1代限りで終わりそうです。
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写真右の赤ラインの列車なら札幌圏で腐るほど見かけると思いますが、左側のように青ラインの車両もあるのです。


しかもパンタグラフのない気動車です。特定の列車しか入らないので、狙わないとほぼほぼ乗れない車両です。
この車両は函館本線山線から札幌直通の所要時分短縮を目的に投入されましたが、山線区間の長万部~余市間の廃止が決まってしまい、キハ201系の活躍の場がなくなってしまいそうなのです。
現時点で小樽~余市間の廃止は決まっていませんが、小樽市としては、バス転換を推進する構えで、こちらが万が一廃止が決定してしまえば、キハ201系は投入当初の目的が完全に失われてしまうことになります。
元々は函館本線山線(倶知安方面)から札幌へ直通する際に所要時分短縮を目的に開発された車両です。投入前までは快速列車として運行していたようですが、各駅停車に変更したにも関わらず、所要時間短縮を果たしました。また、過密ダイヤとなる札幌圏での走行も視野に入れ、赤いラインの731系との動力協調運転を行い、単独で運行する際も札幌圏の近郊形電車と同等のダイヤで走行することができます。

もう5年ほど前に撮影した写真になりますが、動力協調運転時の写真です。先頭の3両はパンタグラフを有する電車で、後方3両が今回紹介している気動車です。パンタグラフがありません。同等の動力性能を有するので、協調運転ができます。
現在は朝の函館本線の小樽から札幌まで1本のみ実施されています。機器の稼働停止を防ぎ、定期的に稼働させるために実施しているようなものでしょう。以前は朝を中心に数本ありましたが、いずれも廃止されています。
電車と気動車による動力協調運転は、1989年~1992年までJR九州の485系(有明)+キハ183系1000番台(オランダ村特急)が日本で初めて営業列車として実施されました。
1992年3月にハウステンボスが開園されたのに伴い、特急「ハウステンボス」が運行を開始するとともに「オランダ村特急」の運転が終了したため、電車と気動車による協調運転は3年で終了しました。その後5年の空白期間を経て、今度は北海道で731系+キハ201系で動力協調運転が実現しました。
また、動力性能も凄く、外装は普通列車と変わりませんが、中身は特急気動車、それ以上のモンスターなのです。特急「宗谷」や特急「北斗」などで使用するキハ261系の普通列車版と思ってください。
全国的に特急気動車も年々進化してきて、従来のシャフトを介してエンジンから車輪へ動力を伝達する方式の車両も450ps級のエンジンを2基搭載し、高性能な電車の加速とほぼ負けない動力性能を手に入れました。それらさらなる高性能気動車の先駆けとなったのがキハ201系です。
搭載エンジンは、現在は重要機器取替工事施工に際し、N-DMF13HZL型(定格出力460 PS / 2100 rpm)に変わっています。1両に2基搭載しています。このエンジンはキハ261系1000番台の5次車(2015年度以降に増備)以降の車両と同型のエンジンです。
そして、このエンジンのパワーを引き立たせる軽い車体。キハ261系1000番台では1両あたり自重40t以上、最新のJR四国の2700系では自重50t程度ありますが、このキハ201系では中間車で自重35t程度しかなかったはずです。圧倒的な軽さによって、実はキハ261系や2700系などをはるかに上回る性能を秘めているのです。
理屈は簡単で、出力と自重の関係で1tあたりにどれぐらいの出力換算が可能かと計算したときに、車体が軽い方がその出力を得られるからです。
このように、外装は近郊形電車と変わらないですが、意外と凄い車両だったりするのです。
しかし、赤いラインの731系が大量に製造されたとは違い、青いラインのキハ201系は3両編成×4本しかありません。1997年に登場しましたが、当時としては製造費もバカ高の1両あたり4億円で、これが理由でその後増備されなかったという背景があります。インテリアやエクステリアは731系とほぼ共通ですが、動力協調設備や現在使われていない車体傾斜装置など、当時の最新設備も備わった車両なので、そこでおそらくコストがかけられているのでしょう。
この1両4億円というのは、実は新幹線1両あたりの製造費よりも高いのです。今でこそ「はやぶさ」で使用するE5系/H5系は1両あたり4.5億円ですが、北陸新幹線や上越新幹線で使用するE7系/W7系は2.7億円、今でも東海道新幹線などで活躍するN700Aで3億円です。

北海道で言えば、はまなす編成やラベンダー編成と製造費は同じ4億円です。
ただ、ここまで製造費をかけて投入したにも関わらず、次第に活躍の場が失われ、現在は電化区間での使用がメインとなっています。要はコストに見合った使用がされていないのです。
本来の目的の山線での使用は早朝と夕方以降しかありません。日中は予備で苗穂に待機している車両を含めて札幌圏で使用されます。2012年までは学園都市線の札幌~北海道医療大学間で一部の普通列車に充当されていましたが、同区間の列車が全て電車化されたことで営業運転から撤退しました。
一方、函館本線での運用が若干増え、日中は函館本線での使用に切り替わり、15時頃に札幌に戻ってきて苗穂に一旦入り、夕方以降、倶知安方面へ向かう準備をして出発していく流れです。運用から外れなければこれを繰り返します。
現在は予備車両確保の関係で日中稼働している編成は1編成のみとなりました。
仮に函館本線の山線が廃止されれば、早朝と深夜の運用がなくなってしまいます。その代替として函館本線などで使用してもいいですが、それでは完全に電化区間で使用することになり、今度は気動車の利点が生かされないのです。運用数も少なく、充当列車を考えれば、現状でもすぐに電車に置き換えられる状況です。実は函館本線山線の廃止で窮地に立たされる車両なのです。
営業運転開始から今年で25年が経過しました。そろそろ置き換えの時期だと思いますが、運用数が少ないことによる走行距離の関係や、上記のとおり、数年前に重要機器取替工事を施工したばかりでエンジンなどが新しいものに載せ替えられました。なので、函館本線山線の一部が廃止されたからといって、すぐに車両を廃車にはできない事情があります。
とはいえ、函館本線の山線は今後数年間は存続します。おそらく新幹線が札幌にやってくる前には廃止になりますが、それまでに転換されるバスの台数や乗務員の確保など、バス転換に向けた準備を実施する必要があるため、すぐに廃止とはなりません。廃止届を出すにも、営業を終了する1年前からと決められているのです。ですが、倶知安駅前とその周辺の再開発の関係で、そう長くは存続できないと予想し、節目となるのが2025年あたりになると思います。それまでは、キハ201系もかろうじて活躍の場が確保されます。
管理者としては、やはり他線区や他列車への転用が望ましく、以前から触れてきましたが、旭川~名寄間の快速「なよろ」への転用が車両を生かせられると思っています。ワンマン運転に対応していないため、車掌が乗務することになりますが、キハ261系が運行されていることで、転用に際してそこまで大きな変更なく対応可能だと思います。
そして、快速「なよろ」という列車の価値を高めることで、高速バスへの対抗、旭川駅において特急「ライラック」、特急「カムイ」との接続を図るようにすれば、キハ201系を最大限活用でき、尚且つ快速「なよろ」の列車としての価値も高めることができ、双方でメリットが得られると思います。
実際にこのようにはならず、おそらく札幌圏の電化区間で細々と使用されると思いますが、函館本線山線の廃止は、キハ201系にとっても大きな痛手になりそうです。そうなれば、特急気動車をも凌ぐ性能を誇るモンスターも1代限りで終わりそうです。
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