札幌~釧路間からキハ283系が撤退~25年の歴史に幕
キハ283系 - 2022年03月13日 (日)
3月11日で札幌~釧路間の特急「おおぞら」からキハ283系が撤退しました。
1997年に営業運転を開始したので、25年もの間、札幌と釧路を結ぶ特急列車として任務を果たしてきました。
後に札幌~釧路間のみならず、札幌~函館間の「スーパー北斗」や、札幌~帯広間の「スーパーとかち」にも投入されました。札幌~帯広間や函館方面の定期運用は既に終了し、当初投入された札幌~釧路間のみ最後まで定期運用を持っていました。

130km./h運転を実施していた頃は、キハ261系などのハイスペック気動車がデビューしつつも、総合的な性能はやはりキハ283系の方が上でした。その後登場した特急気動車も出力こそ上回っていますが、最新の技術を惜しみなく投入したという点では、やはりキハ283系を上回るものはなかったです。
以前も紹介しましたが、管理者としては自動車に例えるならキハ283系はレーシングカーそのものです。
写真をみてもわかるとおり、屋根上に機器を搭載せず、全て床下に重量物をまとめたことで、キハ281系よりもさらに低重心化が図られています。車体傾斜角度についても、従来の振り子式車両の量産車は5°が基本ですが、キハ283系は6°まで傾きます。
そして、リンク式自己操舵台車を採用しています。これは、レール側面の摩耗の減少、キシリ音などを減少させるために、輪軸中心が曲線半径方向に向くように操舵する操舵機能を持つ台車です。これは主に、急曲線などの線路条件が悪くなる池田~白糠間のために装備されたようなものです。
最終増備車については車齢21年程度しか経過しておらず、営業運転から撤退するには早いです。しかし、報道でもあったとおり、車体の傷みが進行していたことで早期の撤退を余儀なくされたのです。
管理者としては、主に以下の2点が早期撤退を余儀なくされた理由と考えます。
【その1:車体の軽量化】
先に登場したキハ281系と比べて、リンク式自己操舵台車や変速機の多段化など、重量増となる要素がありますが、それに比べると、キハ281系との1両あたりの自重がさほど変わらないのです。
では、どこで軽くしているかといえば、車体しかありません。車体を軽くすることで、要は高い位置のものを軽くするわけですから、重心を下げる効果にも付与します。
なぜそこまで重心を下げることにこだわるかというと、曲線通過時の乗り心地を維持するためです。一定の速度向上を図りながら、乗り心地も維持するといった方がいいかもしれません。
列車がカーブに進入する際、車両の重心を起点にして外側に遠心力が発生しています。遠心力は重量が重い車や車両ほど大きくなります。そのために、車体を軽量化し、それを打ち消すために車体を最大6°まで傾斜させて高速でカーブに進入しながらも、一定の乗り心地を維持しています。
例えば、普通自動車で100km/hでカーブに進入した場合と、高速バスで100km/hでカーブに進入した場合、乗り心地や安定性の差は一目瞭然です。
また、車両の重心を起点にして外側に遠心力が発生するということは、軽量化だけしても重心が高ければ意味がありません。それも遠心力が多く働いてしまう理由になります。
では次に、本題の車体を軽量化したら一体どのような問題に直面するかというと、車体剛性を得ることが難しくなります。これは自動車開発においても永遠のテーマです。
主に自動車の分野でしか聞かない剛性の問題が、鉄道車両にどのような影響を与えるかというと、走行時や乗り心地の全てが影響していると言っても過言ではありません。よくキハ283系では「揺れが大きい」、「揺れが激しい」という意見を多く聞きますが、まさにボディ剛性が落ちている証拠となる証言です。
本来のメカニズム的には、走行中に揺れや衝撃を受け止め続けます。それを鉄道車両は台車などで主に吸収し続けるわけですが、中には吸収しきれないものもあり、それがボディにも伝わります。
この際にボディの剛性が落ちてしまっている場合、振動が大きくなってしまい、乗員に不快な印象を与えてしまいます。まさにキハ283系が起こっていることです。この振動については、脱線火災事故の際の問題点の1つとして取り上げられていたと記憶しています。
ボディ剛性が落ちてしまう要因としては、おそらく振り子式で車体が傾斜した際、ボディにねじれが生じてしまい、それが経年変化で徐々に車体に影響を与えていくことで、車体剛性が落ちてしまうと推測します。加えて、傾斜角度を増やすことで車体への負荷がかかることは正式に発表されているわけではありませんが、曲線通過時に台車にかかる力と車体にかかる力は異なり、キハ283系の場合、車体傾斜角度が6°で通常の振り子式車両よりも可動域が多くなっています。より力のねじれが生じて、これが車体の剛性を落としてしまった要因とも考えられます。
実際に先日コメントをいただきましたが、実際に構体のねじれによる影響は出ているようで、ねじれによって構体に亀裂が入り、修繕しては亀裂が入るの繰り返しのようです。予備車両が少ないキロ282形などは必然的に運用に入る機会も多くなり、その傾向が特に出るそうです。
管理者は当記事の前半でキハ283系はレーシングカーそのものと記載しました。では、実際にレーシングカーは、20数年にわたって性能をフルに発揮して使い続けるものでしょうか??基本的にはワンシーズン、長くても数年に一度取り替えられます。いくらレーシングカーといえど、20数年にわたって特に更新することもなく、同じ性能を維持できるわけではないのです。
逆にそれがキハ283系で起こっていると考えたら、納得いただけるでしょう。
【その2:特殊装備ゆえの維持困難】
これは振り子式車両全般に該当しますが、高速化に大きく貢献できる反面、車両のメンテナンスが通常の車両よりも過大となります。その中でも台車の構造が複雑と言われます。車体傾斜装置で車体を傾ける車両というのは、通常の車両と台車構造をほぼ変えることなく運行できるのです。このあたりも、保守整備を考えた場合、振り子式車両よりも車体傾斜装置つきの車両が普及するというのも納得です。
そのため、特殊な装備ゆえ、部品数も多く、保守整備においても、整備時間がほかの車両よりも時間を要し、加えて年数が経過していることで故障時における修理の部品の確保や保守費用の増大を招きます。車体のねじれによって亀裂が入ることもこれに一部該当するでしょう。
JR北海道も社員数は減少の一途を辿り、分割民営化時の半分以下になりました。キハ283系の脱線火災事故を知らない社員、言い方を変えれば、それ以降に入社した社員が半数以上となっています。即戦力となる人材を求めている以上、キハ283系のような構造が複雑な車両を維持していくことは、もはやデメリットでしかないのです。
言い換えれば、もう維持し続けることが難しいレベルにまで達しているといっても過言ではないでしょう。
今後のキハ283系について、苗穂運転所(札ナホ)に出入りしている様子が確認され、一部では石北特急への転用説もあるそうですが、報道で「キハ283系引退」と取り上げられ、車体の傷みが進行している等の内容で紹介されていることから、管理者個人的には、現時点で石北特急に転用される可能性はないと思っています。
中期経営計画においても、キハ183系、キハ281系、キハ283系は来年度までに老朽取替の予定としていることから、この計画どおりに進められると思います。
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1997年に営業運転を開始したので、25年もの間、札幌と釧路を結ぶ特急列車として任務を果たしてきました。
後に札幌~釧路間のみならず、札幌~函館間の「スーパー北斗」や、札幌~帯広間の「スーパーとかち」にも投入されました。札幌~帯広間や函館方面の定期運用は既に終了し、当初投入された札幌~釧路間のみ最後まで定期運用を持っていました。

130km./h運転を実施していた頃は、キハ261系などのハイスペック気動車がデビューしつつも、総合的な性能はやはりキハ283系の方が上でした。その後登場した特急気動車も出力こそ上回っていますが、最新の技術を惜しみなく投入したという点では、やはりキハ283系を上回るものはなかったです。
以前も紹介しましたが、管理者としては自動車に例えるならキハ283系はレーシングカーそのものです。
写真をみてもわかるとおり、屋根上に機器を搭載せず、全て床下に重量物をまとめたことで、キハ281系よりもさらに低重心化が図られています。車体傾斜角度についても、従来の振り子式車両の量産車は5°が基本ですが、キハ283系は6°まで傾きます。
そして、リンク式自己操舵台車を採用しています。これは、レール側面の摩耗の減少、キシリ音などを減少させるために、輪軸中心が曲線半径方向に向くように操舵する操舵機能を持つ台車です。これは主に、急曲線などの線路条件が悪くなる池田~白糠間のために装備されたようなものです。
最終増備車については車齢21年程度しか経過しておらず、営業運転から撤退するには早いです。しかし、報道でもあったとおり、車体の傷みが進行していたことで早期の撤退を余儀なくされたのです。
管理者としては、主に以下の2点が早期撤退を余儀なくされた理由と考えます。
【その1:車体の軽量化】
先に登場したキハ281系と比べて、リンク式自己操舵台車や変速機の多段化など、重量増となる要素がありますが、それに比べると、キハ281系との1両あたりの自重がさほど変わらないのです。
では、どこで軽くしているかといえば、車体しかありません。車体を軽くすることで、要は高い位置のものを軽くするわけですから、重心を下げる効果にも付与します。
なぜそこまで重心を下げることにこだわるかというと、曲線通過時の乗り心地を維持するためです。一定の速度向上を図りながら、乗り心地も維持するといった方がいいかもしれません。
列車がカーブに進入する際、車両の重心を起点にして外側に遠心力が発生しています。遠心力は重量が重い車や車両ほど大きくなります。そのために、車体を軽量化し、それを打ち消すために車体を最大6°まで傾斜させて高速でカーブに進入しながらも、一定の乗り心地を維持しています。
例えば、普通自動車で100km/hでカーブに進入した場合と、高速バスで100km/hでカーブに進入した場合、乗り心地や安定性の差は一目瞭然です。
また、車両の重心を起点にして外側に遠心力が発生するということは、軽量化だけしても重心が高ければ意味がありません。それも遠心力が多く働いてしまう理由になります。
では次に、本題の車体を軽量化したら一体どのような問題に直面するかというと、車体剛性を得ることが難しくなります。これは自動車開発においても永遠のテーマです。
主に自動車の分野でしか聞かない剛性の問題が、鉄道車両にどのような影響を与えるかというと、走行時や乗り心地の全てが影響していると言っても過言ではありません。よくキハ283系では「揺れが大きい」、「揺れが激しい」という意見を多く聞きますが、まさにボディ剛性が落ちている証拠となる証言です。
本来のメカニズム的には、走行中に揺れや衝撃を受け止め続けます。それを鉄道車両は台車などで主に吸収し続けるわけですが、中には吸収しきれないものもあり、それがボディにも伝わります。
この際にボディの剛性が落ちてしまっている場合、振動が大きくなってしまい、乗員に不快な印象を与えてしまいます。まさにキハ283系が起こっていることです。この振動については、脱線火災事故の際の問題点の1つとして取り上げられていたと記憶しています。
ボディ剛性が落ちてしまう要因としては、おそらく振り子式で車体が傾斜した際、ボディにねじれが生じてしまい、それが経年変化で徐々に車体に影響を与えていくことで、車体剛性が落ちてしまうと推測します。加えて、傾斜角度を増やすことで車体への負荷がかかることは正式に発表されているわけではありませんが、曲線通過時に台車にかかる力と車体にかかる力は異なり、キハ283系の場合、車体傾斜角度が6°で通常の振り子式車両よりも可動域が多くなっています。より力のねじれが生じて、これが車体の剛性を落としてしまった要因とも考えられます。
実際に先日コメントをいただきましたが、実際に構体のねじれによる影響は出ているようで、ねじれによって構体に亀裂が入り、修繕しては亀裂が入るの繰り返しのようです。予備車両が少ないキロ282形などは必然的に運用に入る機会も多くなり、その傾向が特に出るそうです。
管理者は当記事の前半でキハ283系はレーシングカーそのものと記載しました。では、実際にレーシングカーは、20数年にわたって性能をフルに発揮して使い続けるものでしょうか??基本的にはワンシーズン、長くても数年に一度取り替えられます。いくらレーシングカーといえど、20数年にわたって特に更新することもなく、同じ性能を維持できるわけではないのです。
逆にそれがキハ283系で起こっていると考えたら、納得いただけるでしょう。
【その2:特殊装備ゆえの維持困難】
これは振り子式車両全般に該当しますが、高速化に大きく貢献できる反面、車両のメンテナンスが通常の車両よりも過大となります。その中でも台車の構造が複雑と言われます。車体傾斜装置で車体を傾ける車両というのは、通常の車両と台車構造をほぼ変えることなく運行できるのです。このあたりも、保守整備を考えた場合、振り子式車両よりも車体傾斜装置つきの車両が普及するというのも納得です。
そのため、特殊な装備ゆえ、部品数も多く、保守整備においても、整備時間がほかの車両よりも時間を要し、加えて年数が経過していることで故障時における修理の部品の確保や保守費用の増大を招きます。車体のねじれによって亀裂が入ることもこれに一部該当するでしょう。
JR北海道も社員数は減少の一途を辿り、分割民営化時の半分以下になりました。キハ283系の脱線火災事故を知らない社員、言い方を変えれば、それ以降に入社した社員が半数以上となっています。即戦力となる人材を求めている以上、キハ283系のような構造が複雑な車両を維持していくことは、もはやデメリットでしかないのです。
言い換えれば、もう維持し続けることが難しいレベルにまで達しているといっても過言ではないでしょう。
今後のキハ283系について、苗穂運転所(札ナホ)に出入りしている様子が確認され、一部では石北特急への転用説もあるそうですが、報道で「キハ283系引退」と取り上げられ、車体の傷みが進行している等の内容で紹介されていることから、管理者個人的には、現時点で石北特急に転用される可能性はないと思っています。
中期経営計画においても、キハ183系、キハ281系、キハ283系は来年度までに老朽取替の予定としていることから、この計画どおりに進められると思います。
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