【コラム】JR北海道とカーボンニュートラル
コラム - 2022年05月14日 (土)
久々のコラム記事です。
今年の2月9日のJR北海道のニュースリリースに、『長期環境目標「JR北海道グループ カーボンニュートラル2050」の策定について』という資料が発表されました。
政府が「2050年カーボンニュートラル」、北海道が「ゼロカーボン北海道」を宣言したことで、JR北海道としても長期環境目標として「JR北海道グループ カーボンニュートラル2050」を策定するに至りました。

そのニュースリリースの資料の最後ですが、JR北海道では2030年度までに、消費電力低減を目的に721系の置き換え、社用車をガソリン車やディーゼル車から電気自動車への切り替え、LED化の推進によってCO2の排出量を大幅に低減する計画です。
そしてその20年後の2050年には、CO2排出量を実質ゼロとし、持続可能な社会の実現に向けて社会的責任を果たす企業として進んでいきます。
ここ最近になって耳にするようになった「カーボンニュートラル」ですが、意味としては、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させてることを意味します。
先日、この内容でコメントをいただき、その方は少し勘違いをしていましたが、決してCO2の排出をゼロにするわけではなく、それを達成しなかった場合の罰則もありません。
いくら技術が進歩しても、例えば車両を製造するにしても、大量のCO2が排出されてしまいます。ここはもう排出を抑えることはできませんから、代わりに、上記のように高効率なエネルギーに変えて、それが例えば新しい電車への置き換えだったり、電気自動車や燃料電池車投入の推進だったりするのです。
誤った考え方と共通していることは、いずれにしても、今後は気動車などでCO2の排出量の大幅な削減は余儀なくされます。排出量と森や緑によるCO2の吸収量及び除去量を均衡させることで、排出量を実質ゼロとすることです。
今のところ、カーボンニュートラルについては、あくまで目標の1つであり、達成されなかった場合や取り組みを実施しない場合の罰則についてはないはずです。ですが、いずれより環境問題の取り組みが重要になってくるようになれば、そうした罰則や法律が整備されるのではないでしょうか?
なぜ、この問題に取り組むかというと、全ては地球温暖化問題とそれに関連する気候変動の問題です。管理者は専門家でもなければ、天候の仕組みについて全くの無知ですが、報道などで話を聞いている限りだと、近年の異常気象も地球温暖化が原因の1つと言われています。
異常気象は、ときには我々人間の命の脅威になります。このまま毎年のように日本のどこかで、世界のどこかで、異常気象が続けば、これまでの世界の均衡が崩れ、我々は生きていくことすら困難になります。
その対策として、CO2などを含めた温室効果ガスの排出量を減らし、吸収量と同じとすることで、これ以上の地球温暖化の進行を食い止めなければならないのです。
但し、このカーボンニュートラルを実施することで、環境問題が格段に良くなるというわけではなく、あくまで現状の環境を維持するという意味合いが強いでしょう。吸収量を上回ればそれは凄いことですが、均衡させること自体が非常に難しい問題なのに対し、それを実施するには、またさらなる課題にぶち当たるでしょう。

JR北海道のカーボンニュートラルの資料で紹介されていたH100形デクモ。
従来の気動車のように、ディーゼルエンジンを搭載していることに変わりありませんが、そのエンジンが発電用であり、モーターを介して走る仕組みに変わっています。従来の気動車に比べてCO2の排出量、燃費など、どれほど数値的に向上しているのか不明ですが、従来の動力伝達方式から大幅に刷新された新時代の気動車です。
どちらかというと、環境問題を重視したというよりは、従来の気動車のように、シャフトを介して動力を伝えるわけではないので、部品数を削減することができるという利点があります。結果、車両のメンテナンスの向上が図られます。投入の真の狙いはこちらにあり、投入に際しての資料にも環境問題について特に大きく触れられていませんでした。
気動車大国である北海道で環境問題を重視した車両は、現時点ではH100形のような車両が限界です。2050年までに目標達成を掲げるも、大きな課題があるのです。
それは、非電化区間が多く、路線距離が長いうえ、電気で走る車両や燃料電池車の投入が現時点で難しいことです。
H100形ですら、燃料を動力源としてモーターを介して車両を動かしているわけですが、カーボンニュートラルを取り組んでいくうえで、排出量と吸収量を実質ゼロにするためには、そうした燃料の消費などによるCO2の排出量を極限まで抑えなければなりません。
その代替として注目されているのが燃料電池を搭載した車両や、蓄電池を搭載した車両です。両者の違いは、前者が電力を自ら発電できるのに対し、蓄電池は発電する機能はありません。蓄電池を搭載した車両については、日本では営業列車として東日本でEV–E801系や九州のBEC819系が先に投入されています。
自ら発電する機能を有しませんが、走行区間において電化区間が含まれる場合、パンタグラフを搭載していることで、蓄電池の充電率が低い場合は架線からの電気で蓄電池への充電が実施されます。現状での課題は、充電が切れると走れなくなり、いずれの投入線区にしても、短距離で運行できる列車でしか営業運転に投入されていません。
北海道の場合、非電化という現状でCO2を大量に排出せざるを得ないエリアが大半を占め、加えて、列車の始終着となる拠点の駅と拠点の駅との距離が長いこと、さらに、ときには−20℃にもなる極寒地において燃料電池車や蓄電池車が通用するのか等、北海道において2050年にCO2の排出量を実質ゼロにするにはさまざまな課題があります。
蓄電池車両や将来的に営業列車として投入されるであろう燃料電池車の航続可能距離が伸びれば、北海道としてもある程度可能性が見えてきますが、現状では非常に厳しいと判断せざるを得ないです。
それ以前に、公共交通や移動手段が多種多様化する中で、在来線の機能としての限界も見えてきました。2050年の北海道では、札幌圏や新幹線を除いて、鉄道が生きているかどうかさえわからない状況です。仮に非電化区間のほぼ全てを抹消したら、カーボンニュートラルの取り組みは、目標が達成しやすくなるでしょう。
管理者は鉄道のほかに自動車も好きなので、カーボンニュートラルの取り組みについては凄く興味があります。保有している車も全て旧車ばかりで、燃費も悪く、カーボンニュートラルとは程遠い車です。いずれ規制や法律ができ、走ることができなくなるような社会にだけはなって欲しくないというのが正直なところです。
一見難しい問題に見えますが、調べてみると、けっこうすんなり入るカーボンニュートラル。今後の身近な問題として我々は把握しておかなければなりませんね。
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今年の2月9日のJR北海道のニュースリリースに、『長期環境目標「JR北海道グループ カーボンニュートラル2050」の策定について』という資料が発表されました。
政府が「2050年カーボンニュートラル」、北海道が「ゼロカーボン北海道」を宣言したことで、JR北海道としても長期環境目標として「JR北海道グループ カーボンニュートラル2050」を策定するに至りました。

そのニュースリリースの資料の最後ですが、JR北海道では2030年度までに、消費電力低減を目的に721系の置き換え、社用車をガソリン車やディーゼル車から電気自動車への切り替え、LED化の推進によってCO2の排出量を大幅に低減する計画です。
そしてその20年後の2050年には、CO2排出量を実質ゼロとし、持続可能な社会の実現に向けて社会的責任を果たす企業として進んでいきます。
ここ最近になって耳にするようになった「カーボンニュートラル」ですが、意味としては、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させてることを意味します。
先日、この内容でコメントをいただき、その方は少し勘違いをしていましたが、決してCO2の排出をゼロにするわけではなく、それを達成しなかった場合の罰則もありません。
いくら技術が進歩しても、例えば車両を製造するにしても、大量のCO2が排出されてしまいます。ここはもう排出を抑えることはできませんから、代わりに、上記のように高効率なエネルギーに変えて、それが例えば新しい電車への置き換えだったり、電気自動車や燃料電池車投入の推進だったりするのです。
誤った考え方と共通していることは、いずれにしても、今後は気動車などでCO2の排出量の大幅な削減は余儀なくされます。排出量と森や緑によるCO2の吸収量及び除去量を均衡させることで、排出量を実質ゼロとすることです。
今のところ、カーボンニュートラルについては、あくまで目標の1つであり、達成されなかった場合や取り組みを実施しない場合の罰則についてはないはずです。ですが、いずれより環境問題の取り組みが重要になってくるようになれば、そうした罰則や法律が整備されるのではないでしょうか?
なぜ、この問題に取り組むかというと、全ては地球温暖化問題とそれに関連する気候変動の問題です。管理者は専門家でもなければ、天候の仕組みについて全くの無知ですが、報道などで話を聞いている限りだと、近年の異常気象も地球温暖化が原因の1つと言われています。
異常気象は、ときには我々人間の命の脅威になります。このまま毎年のように日本のどこかで、世界のどこかで、異常気象が続けば、これまでの世界の均衡が崩れ、我々は生きていくことすら困難になります。
その対策として、CO2などを含めた温室効果ガスの排出量を減らし、吸収量と同じとすることで、これ以上の地球温暖化の進行を食い止めなければならないのです。
但し、このカーボンニュートラルを実施することで、環境問題が格段に良くなるというわけではなく、あくまで現状の環境を維持するという意味合いが強いでしょう。吸収量を上回ればそれは凄いことですが、均衡させること自体が非常に難しい問題なのに対し、それを実施するには、またさらなる課題にぶち当たるでしょう。

JR北海道のカーボンニュートラルの資料で紹介されていたH100形デクモ。
従来の気動車のように、ディーゼルエンジンを搭載していることに変わりありませんが、そのエンジンが発電用であり、モーターを介して走る仕組みに変わっています。従来の気動車に比べてCO2の排出量、燃費など、どれほど数値的に向上しているのか不明ですが、従来の動力伝達方式から大幅に刷新された新時代の気動車です。
どちらかというと、環境問題を重視したというよりは、従来の気動車のように、シャフトを介して動力を伝えるわけではないので、部品数を削減することができるという利点があります。結果、車両のメンテナンスの向上が図られます。投入の真の狙いはこちらにあり、投入に際しての資料にも環境問題について特に大きく触れられていませんでした。
気動車大国である北海道で環境問題を重視した車両は、現時点ではH100形のような車両が限界です。2050年までに目標達成を掲げるも、大きな課題があるのです。
それは、非電化区間が多く、路線距離が長いうえ、電気で走る車両や燃料電池車の投入が現時点で難しいことです。
H100形ですら、燃料を動力源としてモーターを介して車両を動かしているわけですが、カーボンニュートラルを取り組んでいくうえで、排出量と吸収量を実質ゼロにするためには、そうした燃料の消費などによるCO2の排出量を極限まで抑えなければなりません。
その代替として注目されているのが燃料電池を搭載した車両や、蓄電池を搭載した車両です。両者の違いは、前者が電力を自ら発電できるのに対し、蓄電池は発電する機能はありません。蓄電池を搭載した車両については、日本では営業列車として東日本でEV–E801系や九州のBEC819系が先に投入されています。
自ら発電する機能を有しませんが、走行区間において電化区間が含まれる場合、パンタグラフを搭載していることで、蓄電池の充電率が低い場合は架線からの電気で蓄電池への充電が実施されます。現状での課題は、充電が切れると走れなくなり、いずれの投入線区にしても、短距離で運行できる列車でしか営業運転に投入されていません。
北海道の場合、非電化という現状でCO2を大量に排出せざるを得ないエリアが大半を占め、加えて、列車の始終着となる拠点の駅と拠点の駅との距離が長いこと、さらに、ときには−20℃にもなる極寒地において燃料電池車や蓄電池車が通用するのか等、北海道において2050年にCO2の排出量を実質ゼロにするにはさまざまな課題があります。
蓄電池車両や将来的に営業列車として投入されるであろう燃料電池車の航続可能距離が伸びれば、北海道としてもある程度可能性が見えてきますが、現状では非常に厳しいと判断せざるを得ないです。
それ以前に、公共交通や移動手段が多種多様化する中で、在来線の機能としての限界も見えてきました。2050年の北海道では、札幌圏や新幹線を除いて、鉄道が生きているかどうかさえわからない状況です。仮に非電化区間のほぼ全てを抹消したら、カーボンニュートラルの取り組みは、目標が達成しやすくなるでしょう。
管理者は鉄道のほかに自動車も好きなので、カーボンニュートラルの取り組みについては凄く興味があります。保有している車も全て旧車ばかりで、燃費も悪く、カーボンニュートラルとは程遠い車です。いずれ規制や法律ができ、走ることができなくなるような社会にだけはなって欲しくないというのが正直なところです。
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