動物との衝突事故防止のために列車の減速運転を実施
その他あれこれ - 2022年12月07日 (水)
野生動物との衝突事故防止のため、道東方面の一部の列車で減速運転を今週から実施しています。


該当列車は花咲線の夕方以降の列車と釧網本線の釧路発の最終の摩周行きです。

減速運転を実施している理由は、釧路支社管内で列車の運行中に鹿との衝突が急増しているためです。3年前と比べて2.5倍、昨年度と比べて1.5倍です。今年度はまだ終わっていませんから、今後冬にかけてさらに発生するでしょう。
野生動物と衝突すると、車両が使えなくなる場合もあるのです。車体が凹むことはほぼありませんが、急に動物が飛び出してきた際に急ブレーキをかけて車輪がロックしてしまい、これが原因で車輪に傷をつくってしまい、修繕を余儀なくされてしまうのです。
この影響で、車輪の修繕が間に合わず、今年の10月から11月にかけて車両の運用調整のため、一部列車を運休した上で乗り切りました。
花咲線と釧網本線で車両が1日に9両必要ですが、車輪修繕のピーク時は全保有数の14両中8両が使えない状況となり、定期列車をまともに運行できない事態になりました。
ここで、車輪に傷をつくってしまうとどうしてダメなのかについてですが、車輪踏面にフラット等の損傷がある場合、通常とは異なる振動が発生してしまい、部品の脱落などのさらなる不具合の原因になる場合があるからです。これは安全運行に支障をきたすことにつながりますから、原則として乗客を乗せて列車を走らせることができなくなります。
このために車輪削正を実施し、安全運行に支障をきたさないように列車を運行するのです。
車輪を削正するための機械の1つが「在姿車輪旋盤装置」です。北海道では、函館運輸所(函ハコ)に1台、札幌運転所(札サウ)に2台、釧路運輸車両所(釧クシ)に1台あります。作業は1両あたり4〜5時間を要し、1日に作業ができて最大2両か3両です。基本的には運用に復帰するまで数日かかる場合もあります。機械が2台ある札幌運転所(札サウ)では、1日に最大で6両実施できると過去に資料で記載されていました。
例えば、よく車輪によく傷をつくる宗谷線特急の場合、車輪を削正するための機械「在姿車輪旋盤装置」が苗穂ではなく、手稲区の札幌運転所(札サウ)にあるため、翌日か2日後に同運転所へ向けて回送され、2日後に戻ってきます。そこからさらに1日空いて最低でも5日程度見積もってようやく復帰できるぐらいです。釧路の場合はその場に「在姿車輪旋盤装置」があるので、運用復帰まではここまで日数を必要としないでしょう。
急ブレーキによって車輪に傷をつくって運行ができなくなります。今回は減速運転を実施してそれを予防することになりますが、いくら減速運転を実施しても急ブレーキをかけてしまえば、傷が必ずしもできないとは言い切れません。なので、急ブレーキをかけないようにすることがポイントになってきます。
例えば、野生動物と衝突した際に急ブレーキをかけて急いで列車を止める必要があるのでしょうか?その傷ができやすい手前で抑えることはできないのでしょうか?
JR東海では、動物との衝突の影響を抑えるため、キハ85系の先頭部分に衝撃緩和材を設けています。身延線でも一部の区間で列車の通過前から忌避音を出し、この結果、導入区間で衝突事故の発生はゼロというから、一定の効果はありそうです。
この減速運転を実施しても、おそらく大きな効果は期待できず、ただ減速運転の影響が出てしまうだけです。それよりも、急ブレーキをかけない方法を考えなくてはならないと思います。
実際に野生動物と衝突した際に、あるいは発見した際に急ブレーキをかける必要があるのかどうか、という点に着目したら、現状では車体側に大きな影響が出る可能性、動物が列車の床下に巻き込む可能性もあるため、それをせざるを得ません。
では、例えば、キハ85系のように車体全面に衝撃緩和材を設ける案はどうでしょう?ただし、同じような形状ではなく、形状を単線ラッセルヘッドのように尖った形状とし、これをキハ85系のように車体の幅に合わせるのではなく、車体の幅を超えて設置する方法。おそらくこれだと車両の建築限界に引っかかる可能性もあって実現できないと思いますが、この方法だと、正面にいる野生動物は確実左右どちらかに飛ばすことができ、車体の下へ巻き込むこともないです。
ただ、最後尾で走るようになると、走行中の空気の抵抗、風雪時にその箇所に雪が溜まりやすくなったりと、色々と新たな課題は出てきますが、いずれにしても衝撃緩和材を設置し、衝突して停車するにしても、急ブレーキをかけずに停車して安全確認を行い、運行に復帰するという方法が最良ではないかと思います。
それ以前に鹿の増えすぎ問題があり、まずはこちらをどうにかしなければなりません。野生動物保護など、言っている場合ではないのです。もはや均衡が保たれていませんよね。
今回は特急列車での実施は見送られました。特急列車だと、減速運転を実施すれば折り返し列車にも影響が出る場合がほとんどで、宗谷本線のように交換場所が少ない路線で実施してしまうと、他の列車にも影響を受けやすくなります。
この野生動物との衝突は、今後北海道では雪対策とともに向き合わなければならない重要な問題です。まだまだ試験段階だと思いますが、時間をかけて最善の方法をとってほしいと思います。
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該当列車は花咲線の夕方以降の列車と釧網本線の釧路発の最終の摩周行きです。

減速運転を実施している理由は、釧路支社管内で列車の運行中に鹿との衝突が急増しているためです。3年前と比べて2.5倍、昨年度と比べて1.5倍です。今年度はまだ終わっていませんから、今後冬にかけてさらに発生するでしょう。
野生動物と衝突すると、車両が使えなくなる場合もあるのです。車体が凹むことはほぼありませんが、急に動物が飛び出してきた際に急ブレーキをかけて車輪がロックしてしまい、これが原因で車輪に傷をつくってしまい、修繕を余儀なくされてしまうのです。
この影響で、車輪の修繕が間に合わず、今年の10月から11月にかけて車両の運用調整のため、一部列車を運休した上で乗り切りました。
花咲線と釧網本線で車両が1日に9両必要ですが、車輪修繕のピーク時は全保有数の14両中8両が使えない状況となり、定期列車をまともに運行できない事態になりました。
ここで、車輪に傷をつくってしまうとどうしてダメなのかについてですが、車輪踏面にフラット等の損傷がある場合、通常とは異なる振動が発生してしまい、部品の脱落などのさらなる不具合の原因になる場合があるからです。これは安全運行に支障をきたすことにつながりますから、原則として乗客を乗せて列車を走らせることができなくなります。
このために車輪削正を実施し、安全運行に支障をきたさないように列車を運行するのです。
車輪を削正するための機械の1つが「在姿車輪旋盤装置」です。北海道では、函館運輸所(函ハコ)に1台、札幌運転所(札サウ)に2台、釧路運輸車両所(釧クシ)に1台あります。作業は1両あたり4〜5時間を要し、1日に作業ができて最大2両か3両です。基本的には運用に復帰するまで数日かかる場合もあります。機械が2台ある札幌運転所(札サウ)では、1日に最大で6両実施できると過去に資料で記載されていました。
例えば、よく車輪によく傷をつくる宗谷線特急の場合、車輪を削正するための機械「在姿車輪旋盤装置」が苗穂ではなく、手稲区の札幌運転所(札サウ)にあるため、翌日か2日後に同運転所へ向けて回送され、2日後に戻ってきます。そこからさらに1日空いて最低でも5日程度見積もってようやく復帰できるぐらいです。釧路の場合はその場に「在姿車輪旋盤装置」があるので、運用復帰まではここまで日数を必要としないでしょう。
急ブレーキによって車輪に傷をつくって運行ができなくなります。今回は減速運転を実施してそれを予防することになりますが、いくら減速運転を実施しても急ブレーキをかけてしまえば、傷が必ずしもできないとは言い切れません。なので、急ブレーキをかけないようにすることがポイントになってきます。
例えば、野生動物と衝突した際に急ブレーキをかけて急いで列車を止める必要があるのでしょうか?その傷ができやすい手前で抑えることはできないのでしょうか?
JR東海では、動物との衝突の影響を抑えるため、キハ85系の先頭部分に衝撃緩和材を設けています。身延線でも一部の区間で列車の通過前から忌避音を出し、この結果、導入区間で衝突事故の発生はゼロというから、一定の効果はありそうです。
この減速運転を実施しても、おそらく大きな効果は期待できず、ただ減速運転の影響が出てしまうだけです。それよりも、急ブレーキをかけない方法を考えなくてはならないと思います。
実際に野生動物と衝突した際に、あるいは発見した際に急ブレーキをかける必要があるのかどうか、という点に着目したら、現状では車体側に大きな影響が出る可能性、動物が列車の床下に巻き込む可能性もあるため、それをせざるを得ません。
では、例えば、キハ85系のように車体全面に衝撃緩和材を設ける案はどうでしょう?ただし、同じような形状ではなく、形状を単線ラッセルヘッドのように尖った形状とし、これをキハ85系のように車体の幅に合わせるのではなく、車体の幅を超えて設置する方法。おそらくこれだと車両の建築限界に引っかかる可能性もあって実現できないと思いますが、この方法だと、正面にいる野生動物は確実左右どちらかに飛ばすことができ、車体の下へ巻き込むこともないです。
ただ、最後尾で走るようになると、走行中の空気の抵抗、風雪時にその箇所に雪が溜まりやすくなったりと、色々と新たな課題は出てきますが、いずれにしても衝撃緩和材を設置し、衝突して停車するにしても、急ブレーキをかけずに停車して安全確認を行い、運行に復帰するという方法が最良ではないかと思います。
それ以前に鹿の増えすぎ問題があり、まずはこちらをどうにかしなければなりません。野生動物保護など、言っている場合ではないのです。もはや均衡が保たれていませんよね。
今回は特急列車での実施は見送られました。特急列車だと、減速運転を実施すれば折り返し列車にも影響が出る場合がほとんどで、宗谷本線のように交換場所が少ない路線で実施してしまうと、他の列車にも影響を受けやすくなります。
この野生動物との衝突は、今後北海道では雪対策とともに向き合わなければならない重要な問題です。まだまだ試験段階だと思いますが、時間をかけて最善の方法をとってほしいと思います。
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