【コラム】沼田町が提案する「鉄道ルネサンス構想」
コラム - 2023年01月12日 (木)
夜景が綺麗でも、週末なのに人が歩いていなければ、車が行き来している様子もあまり確認しなかったまち。

看板に「ほろしん温泉」と書いています。そうここは「沼田町」です。
留萌本線の石狩沼田〜留萌間が廃止されることに伴い、今後は留萌本線の終着になるのが石狩沼田駅であり、沼田町になります。かつては、札沼線ともつながっていました。
今回のコラム記事は、沼田町が提案する「鉄道ルネサンス構想」について。
参考URL:鉄道ルネサンス構想について
参考URL:鉄道ルネサンス構想 沼田町からの提案
実はあまりこの「鉄道ルネサンス構想」というのは知られていないと思います。管理者も初めて耳にしたときは、留萌本線だけで実施するものだと思っていましたが、留萌本線沿線の沼田町が提案しているというだけであって、取り組み自体はオール北海道で実施します。
鉄道ルネサンス構想とは、北海道全体の鉄路を守るため、「オール北海道」で道民が一丸となって、既存の制度にとらわれない新しい取組みを導入できないか、JR北海道などに対して実施している提案です。
そこで、「鉄道会員制度フリーダムパスポート」を導入するというもの。
仕組みは、日常的に自家用車を利用して移動している層を、新たな鉄道利用者として取り込み、既存の距離制の運賃制度に加えて鉄道会員制度を設けます。
鉄道を利用する際の運賃を定額制とすることで、鉄道を使えば使うほど、移動費を抑えることができるため、自家用車から鉄道への利用を促すというものです。
これはいわゆるサブスクというものです。
サブスクとは、「サブスクリプション(subscription)」の略です。意味は「予約購読」「定期購読」「会費」などを表します。 月額課金・定額制で契約する会員制の定額サービスです。一定期間利用できる「権利」に対して「定額制の料金」を支払う新しいビジネスモデルです。
実は鉄道業界でサブスクというのは、一部の鉄道会社で既に行なっています。月々定額制の料金を支払うことで、鉄道会社が運営する定額サービスをお得に利用できます。
JRだと、東日本と九州が代表例です。いずれも鉄道輸送に加えて、飲食サービスに月額制で料金を支払うことで、毎日コーヒーが1杯無料だったり、一定の額以下のパンなどが毎日1個無料だったり、トッピングが1品無料だったりと、毎日利用すればするほどお得になります。しかもこの飲食サービスのサブスクは、値段を安く抑えられることが魅力で、たとえ毎日行かなくても、4〜5回程度で月額料金分の元が取れてしまいます。なので、利用する側の損失感というものも少なく、鉄道会社が実施するサブスクで代表例として上がるのも納得がいきます。
また、鉄道ルネサンス構想が目指すサブスクとして参考としてほしいのが、小田急電鉄、東急です。
まず小田急電鉄は、MaaSアプリ「EMot」において、駅を利用する際に便利な飲食・物販の新たなチケット「EMotパスポート」を発売しています。
「EMotパスポート」は、小田急線のターミナル駅を中心に選定した、そば、おむすび、ベーカリー、カフェ飲食、フラワーショップで買い物に利用できる30日間の定額制チケットです。
この「EMotパスポート」も初回7,800円、継続2回目が7,500円、継続3回目以降は7,200円と月額料金が下がってきます。ただし、30日ごとの自動更新課金制度としており、解約する際は、利用停止の操作が必要になります。
また、小田急電鉄の看板列車といえば特急ロマンスカー。同列車のサブスクリプションサービス「EMot特急パスポート」を2023年3月31日までの期間限定で発売しました。
「EMot特急パスポート」は、小田急線内の特急ロマンスカーに1日2列車まで乗車できるお得なチケットサービスです。大人用のみの設定で、MaaSアプリ「EMot」限定で販売します。
代金は乗車距離に応じて、35キロまでが3,500円、50キロまでが4,500円、75キロまでが5,000円、全区間が6,000円の4種類を設定しています。各チケットサービスとも4往復(8乗車)の利用で元が取れます。
乗車距離に応じた範囲内で自由に発着駅を選択できます。有効期間はこちらも購入時に指定する利用開始日から30日間で、平日の日中(9時~17時59分)に発車する列車のみに乗車できます。利用する列車と座席の指定は、乗車日当日の午前4時以降に可能となります。
そして、大規模なサブスクリプションサービスを展開していたのが東急グループ。実証実験の意味合いもあり、現在は実施されていないようですが、2020年から2021年まで実施されていました。日本初となる交通、映画、食事が一体となったサブスクリプションを展開していたことでも有名です。
東急のサブスクは、東急グループ(東急株式会社、東急電鉄株式会社、東急バス株式会社、株式会社東急グルメフロントなど)の東急線沿線で交通、映画、食事が一体となった「東急線・東急バス サブスクパス」、モバイルバッテリーが使い放題の「TuyTuy(ツイツイ)」、ホテルに泊まり放題、定額制回遊型住み替えサービス「tsugi tsugi(ツギツギ)」などがあります。この中で、「tsugi tsugi(ツギツギ)」だけサービスが継続して実施されています。
東急沿線の利用を軸とし、ターゲットも20代や30代というから、北海道で実施するのであれば目指す形はコレですよね。
「TuyTuy(ツイツイ)」は、東急線区間を含むパスモ定期券利用者が対象です。名前の由来が「ついつい利用したくなるサービス」ということで、その名のとおりです。
提携サービスとして、モバイル充電サービスの「充レン」、街中のポートに置いてある電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」、全国のパン屋さんから、食パン・食事パンを届ける「パンスク」などがあります。
「東急線・東急バスのサブスクパス」の値段は高めです。例えば、「電車&バス+109シネマズ」で30,000円、「電車&バス+電動アシスト自転車+109シネマズ」で33,000円、「電車&バス+電動アシスト自転車」で23,000円、「電車+アシスト電動自転車」で18,000円です。
一部のみ抜粋しています。ほかにしぶそばを含めたサービスがあります。こちらは1日1回食べることができます。
1か月単位で東急線全線、東急バス全線の乗り放題乗車券を基本とし、「109シネマズ」の映画観放題パス、東急線沿線の駅構内にあるそば屋「しぶそば」の定額パスを追加サービスとしていずれか1つ以上を選択し、好きな組み合わせで利用できるセット販売形式です。
料金が高い分、1ヶ月間東急線は乗り放題、東急バスも一部を除いて対象路線1カ月間乗り放題、109シネマズ1カ月間映画観放題、電動自転車&駐輪場も1ヶ月間レンタル可能です。公共交通のみならず、東急の鉄道、バスの沿線に特化したサブスクを展開しています。
しかし、上記のとおり、一部は実証実験の意味合いもあり、既に終了しています。人気がなかったのか、ユーザーの大半が1回限りの利用で終えてしまったのか。この公共交通のサブスクは全国的に展開している例が調べた限りでは少なく、それほど実施するにしても難しい問題があるのだと思います。
その背景には、例えば東急のサブスクのように、魅力的なサービスを受けられる反面、コストに見合う利用がユーザー側が可能かどうかということです。おそらくほぼ毎日サービスを利用しないと金額分の元は取れないでしょう。時間に余裕がなければ厳しい点もあります。
これは「鉄道ルネサンス構想」にも言えることです。年会費とあるので管理者のイメージとしては、「HOKKAIDO LOVE!6日間周遊パス」や「北海道フリーパス」の年間版、1年版だと思っていますが、もちろんオール北海道で全路線で乗り放題としてしまえば、その分料金も跳ね上がります。この中に会員費も含まれてきます。実際に「鉄道会員制度フリーダムパスポート」を利用する場合、どの程度鉄道を使ったら元が取れるのかが非常に重要になってきます。
さまざまなジャンルのサブスクが昨今展開されていますが、利用者側にとって元が取れる、またはそれ以上の価値のあるサービスとしなければ意味ありません。ただの損ですよね。
現時点で「鉄道ルネサンス構想」という提案がよいかというと難しいです。この案を見る限りだと、まだ鉄道を残そうという意思が強すぎて、それ以外の点がよく見えていません。それ以外の点とは、目的地まで鉄道を利用するのはよいが、目的地に着いてから一体どうするのか?ということです。
北海道を周遊したい!観光したい!という目的で会員になったとしても、そもそも鉄道はある程度の拠点(駅)までしか輸送できず、そこからは別の移動手段が必要になります。観光地が全部が全部駅前にあるわけではありません。
それはテレビ東京で年に何回か放送している「ローカル路線バス VS 鉄道乗り継ぎ対決旅」を見ればわかることです。一見鉄道の方が有利に見えますが、ある程度の拠点までしか行かないため、そこから有名箇所や観光地へは距離があります。その点、路線バスは近くまで行くことができる利点があります。
札幌近郊ならまだしも、北海道で地方に行けば、公共交通が希薄なエリアがほとんどです。鉄道だけに特化するのではなく、そこからの移動手段も含めた内容で検討する必要があります。
駅からの移動手段としては、路線バス、タクシー、レンタカーが主な候補として上げられます。オール北海道で・・・と資料に記載されているのですから、鉄道だけにこだわる必要はありません。鉄道に加えて路線バス、タクシー、レンタカーなど、小回りの利く移動手段を含めて、新たな移動手段のあり方、サービスのあり方を検討すべきです。
ここまでの規模とすれば、特にJR北海道の沿線の自治体を巻き込んで展開してもよいでしょう。例えば会員証を見せることで、何らかのサービスが無料になる、割引になるという特典をつければ、ある程度協力は得られると思います。
また、他の事例の鉄道サブスクを上げたとおり、鉄道輸送だけではなく、それに飲食だったり、バスだったりを加えてサブスク化、月額料金制を導入しています。上記のとおり、鉄道輸送だけでサブスク化というのは難しく、設定料金に対して、元を取るために必要な時間が足りなくなるケースも出てくるはずです。せっかく北海道でこうした提案をするのであれば、新鮮な食材の宝庫である北海道を大いに発揮できる飲食、移動費を抑えられるバス、昨今観光には欠かせない存在となったタクシーやレンタカーなどと一体となったサブスクとした方が利用者側も選択肢、移動の幅が広がります。
例えば、飲食は指定された、あるいは加盟店であれば割引制などを導入してもいいでしょう。そして各バス会社、タクシー会社、レンタカー会社とも提携する方法もよいでしょう。ある程度拠点まで鉄道を使い、そこからバスなり、タクシーなり、レンタカーなどといった小回りの利く乗り物と合わせて使うという制約があればなお望ましく、バスやタクシー、レンタカーと合わせて、セットプランで提案した方が現実的だと思っています。
この「鉄道ルネサンス構想」は、資料で読む限りでは年会費制で提案していますが、管理者としては、道民のためのサブスクというよりも、観光客向けのサブスクとした方が効果が得られるのではないかと思っています。
年会費制としていますが、これを5日〜7日程度の設定にして、訪日外国人などの観光客向けとし、それぞれ複数のプランで料金を設定。会員として登録した方が鉄道にしても、バスにしてもタクシーにしても、レンタカーにしても通常利用する料金よりも安い料金プランとすれば、移動費も抑えることができ、上記のように会員証提示で飲食店における割引サービス、土産物の割引サービスを受けられるのであれば、ある程度集客を見込めるのではないかと思っています。
ここまでの規模になると、やはり各自治体の協力も必要になるでしょう。「北海道フリーダムパスポート」のような感じで、オール北海道で取り組めば、観光という点に着目した集客をする上ではいいと思います。
では、道民に着目する点はダメかというと、管理者としては1つ気になる点があります。それが、今まで鉄道を利用していない者が利用することで、モーダルシフトを推進し、脱炭素社会(ゼロカーボン)やSDGsに寄与することに着目していることです。
これは難しい問題です。我々人間というのは、自分たちに有利な展開にならなければ目を向かないという根本的な問題があります。
例えば、脱炭素社会(ゼロカーボン)やSDGsの推進(車から鉄道へのモーダルシフト)したからといって一体誰が得をするのでしょうか?これに達成基準を設け、その分補助金が出るといった見返りがあれば話は別ですが、環境問題に貢献したからといって利用者も自治体も現時点で誰も得をしないのです。
車から鉄道へのモーダルシフトを考えた場合、この「鉄道ルネサンス構想」が必要とされるのは数十年後ではないでしょうか?そのヒントが先日報道されていた政府による走行距離税の検討です。
1回の移動が大きい北海道では、公共交通のほかに、各家庭で自家用車は必須です。これに走行距離税が課税されると道民の負担は大きくなってしまいます。そこでその負担を減らす目的ということであれば、利用者側も課税負担を減らすことができるので、鉄道を含めた公共交通を利用した方が利用者側は得をするケースも出てくるでしょう。どの程度課税されるかにもよりますが、最低でもこうした理由がなければ、公共交通利用に流れをつくることは難しいです。
管理者も経験がありますが、自動車の運転免許を取得した頃、車に乗れる、運転できるという楽しさもあって、車に依存した時期がありました。現在は脱していますが、自家用車の使用を日常生活に取り入れてしまうと、なかなか公共交通への利用へ持っていくことは難しいのです。なぜなら、自家用車を利用していると、時間をより有効に使うことができるからです。
資料では簡単に書いていますが、日頃から自家用車で移動している人間を、公共交通利用へ持っていくことは大変難しいことです。燃料代のさらなる高騰や走行距離税などの投入で、自家用車の利用が不利になる方向へ持って行かない限り、北海道で公共交通を推進していくのは難しいと思います。
このあたりをどのように解決していくのか気になります。
ただ「鉄道ルネサンス構想」というのは、観光客に着目せず、道民の利用を軸とした展開をするという点では素晴らしいです。管理者も以前から指摘しているとおり、観光頼みの集客方法では、季節の変動によって不安定で固定した収入が得られにくいです。たとえ人数が少なくても定期利用者を確保しておけば安定した収益につながります。これがないから、特に収益の少ない不採算路線は存続が危うくなっているのです。
鉄道における不採算路線の利用を向上させたり、収益を上げたり、北海道経済を、日本経済を発展させていくためには、少子高齢化の問題を解決するしかないのです。
日本では、15歳以上65歳未満を生産年齢人口としていますが、長年にわたって、政策でこの「生産」を疎かにしてきたのですから、少子高齢化になって当たり前なのです。
異次元の少子化対策・・・なんて発言がありましたが、それが鉄道を含めて公共交通でその効果が出始めるまで少なくとも15年はかかります。それまではさらに減少し続ける一方なのです。生産を疎かにしてきた結果がこうなっています。
逆に定期利用者がある程度確保され、鉄道として存続が可能な領域であれば、「鉄道ルネサンス構想」も検討する必要もないのです。地方では過疎化が進む一方、報道の映像を確認した限りでは、沼田町は通学利用者もある程度確認できました。一方で鉄道路線を存続していくようなレベルの輸送状況ではなく、鉄道を維持していくための資金を自治体も拠出することができません。
これまで廃止されてきた路線や区間は、この流れで鉄道は役目を終え、バス転換という流れになっています。
今回もそうした曖昧な立ち位置に立たされている沼田町だからこそ出た案だと思います。
最後に管理者の見解としては、道民のための「鉄道ルネサンス構想」というよりは、北海道観光の一手段としての役割の方が大いに期待できると思います。道民における鉄道利用増進という目的で展開していくのであれば、やはり根本的に人口を増やして定期的な利用者を獲得していくほかないです。
上記で公共交通の利用増進まで15年経過すると記載しました。ですが、移住者獲得となれば、15年も必要ありません。あとは住みやすい政策、住んでもらえる体制を各自治体が整備していくだけです。
案としてはとても面白いので、コロナがある程度終息したら、料金次第でこの年パスを購入し、鉄道の旅を存分に楽しみたいです。
↓ブログランキングにご協力お願いします↓

にほんブログ村

看板に「ほろしん温泉」と書いています。そうここは「沼田町」です。
留萌本線の石狩沼田〜留萌間が廃止されることに伴い、今後は留萌本線の終着になるのが石狩沼田駅であり、沼田町になります。かつては、札沼線ともつながっていました。
今回のコラム記事は、沼田町が提案する「鉄道ルネサンス構想」について。
参考URL:鉄道ルネサンス構想について
参考URL:鉄道ルネサンス構想 沼田町からの提案
実はあまりこの「鉄道ルネサンス構想」というのは知られていないと思います。管理者も初めて耳にしたときは、留萌本線だけで実施するものだと思っていましたが、留萌本線沿線の沼田町が提案しているというだけであって、取り組み自体はオール北海道で実施します。
鉄道ルネサンス構想とは、北海道全体の鉄路を守るため、「オール北海道」で道民が一丸となって、既存の制度にとらわれない新しい取組みを導入できないか、JR北海道などに対して実施している提案です。
そこで、「鉄道会員制度フリーダムパスポート」を導入するというもの。
仕組みは、日常的に自家用車を利用して移動している層を、新たな鉄道利用者として取り込み、既存の距離制の運賃制度に加えて鉄道会員制度を設けます。
鉄道を利用する際の運賃を定額制とすることで、鉄道を使えば使うほど、移動費を抑えることができるため、自家用車から鉄道への利用を促すというものです。
これはいわゆるサブスクというものです。
サブスクとは、「サブスクリプション(subscription)」の略です。意味は「予約購読」「定期購読」「会費」などを表します。 月額課金・定額制で契約する会員制の定額サービスです。一定期間利用できる「権利」に対して「定額制の料金」を支払う新しいビジネスモデルです。
実は鉄道業界でサブスクというのは、一部の鉄道会社で既に行なっています。月々定額制の料金を支払うことで、鉄道会社が運営する定額サービスをお得に利用できます。
JRだと、東日本と九州が代表例です。いずれも鉄道輸送に加えて、飲食サービスに月額制で料金を支払うことで、毎日コーヒーが1杯無料だったり、一定の額以下のパンなどが毎日1個無料だったり、トッピングが1品無料だったりと、毎日利用すればするほどお得になります。しかもこの飲食サービスのサブスクは、値段を安く抑えられることが魅力で、たとえ毎日行かなくても、4〜5回程度で月額料金分の元が取れてしまいます。なので、利用する側の損失感というものも少なく、鉄道会社が実施するサブスクで代表例として上がるのも納得がいきます。
また、鉄道ルネサンス構想が目指すサブスクとして参考としてほしいのが、小田急電鉄、東急です。
まず小田急電鉄は、MaaSアプリ「EMot」において、駅を利用する際に便利な飲食・物販の新たなチケット「EMotパスポート」を発売しています。
「EMotパスポート」は、小田急線のターミナル駅を中心に選定した、そば、おむすび、ベーカリー、カフェ飲食、フラワーショップで買い物に利用できる30日間の定額制チケットです。
この「EMotパスポート」も初回7,800円、継続2回目が7,500円、継続3回目以降は7,200円と月額料金が下がってきます。ただし、30日ごとの自動更新課金制度としており、解約する際は、利用停止の操作が必要になります。
また、小田急電鉄の看板列車といえば特急ロマンスカー。同列車のサブスクリプションサービス「EMot特急パスポート」を2023年3月31日までの期間限定で発売しました。
「EMot特急パスポート」は、小田急線内の特急ロマンスカーに1日2列車まで乗車できるお得なチケットサービスです。大人用のみの設定で、MaaSアプリ「EMot」限定で販売します。
代金は乗車距離に応じて、35キロまでが3,500円、50キロまでが4,500円、75キロまでが5,000円、全区間が6,000円の4種類を設定しています。各チケットサービスとも4往復(8乗車)の利用で元が取れます。
乗車距離に応じた範囲内で自由に発着駅を選択できます。有効期間はこちらも購入時に指定する利用開始日から30日間で、平日の日中(9時~17時59分)に発車する列車のみに乗車できます。利用する列車と座席の指定は、乗車日当日の午前4時以降に可能となります。
そして、大規模なサブスクリプションサービスを展開していたのが東急グループ。実証実験の意味合いもあり、現在は実施されていないようですが、2020年から2021年まで実施されていました。日本初となる交通、映画、食事が一体となったサブスクリプションを展開していたことでも有名です。
東急のサブスクは、東急グループ(東急株式会社、東急電鉄株式会社、東急バス株式会社、株式会社東急グルメフロントなど)の東急線沿線で交通、映画、食事が一体となった「東急線・東急バス サブスクパス」、モバイルバッテリーが使い放題の「TuyTuy(ツイツイ)」、ホテルに泊まり放題、定額制回遊型住み替えサービス「tsugi tsugi(ツギツギ)」などがあります。この中で、「tsugi tsugi(ツギツギ)」だけサービスが継続して実施されています。
東急沿線の利用を軸とし、ターゲットも20代や30代というから、北海道で実施するのであれば目指す形はコレですよね。
「TuyTuy(ツイツイ)」は、東急線区間を含むパスモ定期券利用者が対象です。名前の由来が「ついつい利用したくなるサービス」ということで、その名のとおりです。
提携サービスとして、モバイル充電サービスの「充レン」、街中のポートに置いてある電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」、全国のパン屋さんから、食パン・食事パンを届ける「パンスク」などがあります。
「東急線・東急バスのサブスクパス」の値段は高めです。例えば、「電車&バス+109シネマズ」で30,000円、「電車&バス+電動アシスト自転車+109シネマズ」で33,000円、「電車&バス+電動アシスト自転車」で23,000円、「電車+アシスト電動自転車」で18,000円です。
一部のみ抜粋しています。ほかにしぶそばを含めたサービスがあります。こちらは1日1回食べることができます。
1か月単位で東急線全線、東急バス全線の乗り放題乗車券を基本とし、「109シネマズ」の映画観放題パス、東急線沿線の駅構内にあるそば屋「しぶそば」の定額パスを追加サービスとしていずれか1つ以上を選択し、好きな組み合わせで利用できるセット販売形式です。
料金が高い分、1ヶ月間東急線は乗り放題、東急バスも一部を除いて対象路線1カ月間乗り放題、109シネマズ1カ月間映画観放題、電動自転車&駐輪場も1ヶ月間レンタル可能です。公共交通のみならず、東急の鉄道、バスの沿線に特化したサブスクを展開しています。
しかし、上記のとおり、一部は実証実験の意味合いもあり、既に終了しています。人気がなかったのか、ユーザーの大半が1回限りの利用で終えてしまったのか。この公共交通のサブスクは全国的に展開している例が調べた限りでは少なく、それほど実施するにしても難しい問題があるのだと思います。
その背景には、例えば東急のサブスクのように、魅力的なサービスを受けられる反面、コストに見合う利用がユーザー側が可能かどうかということです。おそらくほぼ毎日サービスを利用しないと金額分の元は取れないでしょう。時間に余裕がなければ厳しい点もあります。
これは「鉄道ルネサンス構想」にも言えることです。年会費とあるので管理者のイメージとしては、「HOKKAIDO LOVE!6日間周遊パス」や「北海道フリーパス」の年間版、1年版だと思っていますが、もちろんオール北海道で全路線で乗り放題としてしまえば、その分料金も跳ね上がります。この中に会員費も含まれてきます。実際に「鉄道会員制度フリーダムパスポート」を利用する場合、どの程度鉄道を使ったら元が取れるのかが非常に重要になってきます。
さまざまなジャンルのサブスクが昨今展開されていますが、利用者側にとって元が取れる、またはそれ以上の価値のあるサービスとしなければ意味ありません。ただの損ですよね。
現時点で「鉄道ルネサンス構想」という提案がよいかというと難しいです。この案を見る限りだと、まだ鉄道を残そうという意思が強すぎて、それ以外の点がよく見えていません。それ以外の点とは、目的地まで鉄道を利用するのはよいが、目的地に着いてから一体どうするのか?ということです。
北海道を周遊したい!観光したい!という目的で会員になったとしても、そもそも鉄道はある程度の拠点(駅)までしか輸送できず、そこからは別の移動手段が必要になります。観光地が全部が全部駅前にあるわけではありません。
それはテレビ東京で年に何回か放送している「ローカル路線バス VS 鉄道乗り継ぎ対決旅」を見ればわかることです。一見鉄道の方が有利に見えますが、ある程度の拠点までしか行かないため、そこから有名箇所や観光地へは距離があります。その点、路線バスは近くまで行くことができる利点があります。
札幌近郊ならまだしも、北海道で地方に行けば、公共交通が希薄なエリアがほとんどです。鉄道だけに特化するのではなく、そこからの移動手段も含めた内容で検討する必要があります。
駅からの移動手段としては、路線バス、タクシー、レンタカーが主な候補として上げられます。オール北海道で・・・と資料に記載されているのですから、鉄道だけにこだわる必要はありません。鉄道に加えて路線バス、タクシー、レンタカーなど、小回りの利く移動手段を含めて、新たな移動手段のあり方、サービスのあり方を検討すべきです。
ここまでの規模とすれば、特にJR北海道の沿線の自治体を巻き込んで展開してもよいでしょう。例えば会員証を見せることで、何らかのサービスが無料になる、割引になるという特典をつければ、ある程度協力は得られると思います。
また、他の事例の鉄道サブスクを上げたとおり、鉄道輸送だけではなく、それに飲食だったり、バスだったりを加えてサブスク化、月額料金制を導入しています。上記のとおり、鉄道輸送だけでサブスク化というのは難しく、設定料金に対して、元を取るために必要な時間が足りなくなるケースも出てくるはずです。せっかく北海道でこうした提案をするのであれば、新鮮な食材の宝庫である北海道を大いに発揮できる飲食、移動費を抑えられるバス、昨今観光には欠かせない存在となったタクシーやレンタカーなどと一体となったサブスクとした方が利用者側も選択肢、移動の幅が広がります。
例えば、飲食は指定された、あるいは加盟店であれば割引制などを導入してもいいでしょう。そして各バス会社、タクシー会社、レンタカー会社とも提携する方法もよいでしょう。ある程度拠点まで鉄道を使い、そこからバスなり、タクシーなり、レンタカーなどといった小回りの利く乗り物と合わせて使うという制約があればなお望ましく、バスやタクシー、レンタカーと合わせて、セットプランで提案した方が現実的だと思っています。
この「鉄道ルネサンス構想」は、資料で読む限りでは年会費制で提案していますが、管理者としては、道民のためのサブスクというよりも、観光客向けのサブスクとした方が効果が得られるのではないかと思っています。
年会費制としていますが、これを5日〜7日程度の設定にして、訪日外国人などの観光客向けとし、それぞれ複数のプランで料金を設定。会員として登録した方が鉄道にしても、バスにしてもタクシーにしても、レンタカーにしても通常利用する料金よりも安い料金プランとすれば、移動費も抑えることができ、上記のように会員証提示で飲食店における割引サービス、土産物の割引サービスを受けられるのであれば、ある程度集客を見込めるのではないかと思っています。
ここまでの規模になると、やはり各自治体の協力も必要になるでしょう。「北海道フリーダムパスポート」のような感じで、オール北海道で取り組めば、観光という点に着目した集客をする上ではいいと思います。
では、道民に着目する点はダメかというと、管理者としては1つ気になる点があります。それが、今まで鉄道を利用していない者が利用することで、モーダルシフトを推進し、脱炭素社会(ゼロカーボン)やSDGsに寄与することに着目していることです。
これは難しい問題です。我々人間というのは、自分たちに有利な展開にならなければ目を向かないという根本的な問題があります。
例えば、脱炭素社会(ゼロカーボン)やSDGsの推進(車から鉄道へのモーダルシフト)したからといって一体誰が得をするのでしょうか?これに達成基準を設け、その分補助金が出るといった見返りがあれば話は別ですが、環境問題に貢献したからといって利用者も自治体も現時点で誰も得をしないのです。
車から鉄道へのモーダルシフトを考えた場合、この「鉄道ルネサンス構想」が必要とされるのは数十年後ではないでしょうか?そのヒントが先日報道されていた政府による走行距離税の検討です。
1回の移動が大きい北海道では、公共交通のほかに、各家庭で自家用車は必須です。これに走行距離税が課税されると道民の負担は大きくなってしまいます。そこでその負担を減らす目的ということであれば、利用者側も課税負担を減らすことができるので、鉄道を含めた公共交通を利用した方が利用者側は得をするケースも出てくるでしょう。どの程度課税されるかにもよりますが、最低でもこうした理由がなければ、公共交通利用に流れをつくることは難しいです。
管理者も経験がありますが、自動車の運転免許を取得した頃、車に乗れる、運転できるという楽しさもあって、車に依存した時期がありました。現在は脱していますが、自家用車の使用を日常生活に取り入れてしまうと、なかなか公共交通への利用へ持っていくことは難しいのです。なぜなら、自家用車を利用していると、時間をより有効に使うことができるからです。
資料では簡単に書いていますが、日頃から自家用車で移動している人間を、公共交通利用へ持っていくことは大変難しいことです。燃料代のさらなる高騰や走行距離税などの投入で、自家用車の利用が不利になる方向へ持って行かない限り、北海道で公共交通を推進していくのは難しいと思います。
このあたりをどのように解決していくのか気になります。
ただ「鉄道ルネサンス構想」というのは、観光客に着目せず、道民の利用を軸とした展開をするという点では素晴らしいです。管理者も以前から指摘しているとおり、観光頼みの集客方法では、季節の変動によって不安定で固定した収入が得られにくいです。たとえ人数が少なくても定期利用者を確保しておけば安定した収益につながります。これがないから、特に収益の少ない不採算路線は存続が危うくなっているのです。
鉄道における不採算路線の利用を向上させたり、収益を上げたり、北海道経済を、日本経済を発展させていくためには、少子高齢化の問題を解決するしかないのです。
日本では、15歳以上65歳未満を生産年齢人口としていますが、長年にわたって、政策でこの「生産」を疎かにしてきたのですから、少子高齢化になって当たり前なのです。
異次元の少子化対策・・・なんて発言がありましたが、それが鉄道を含めて公共交通でその効果が出始めるまで少なくとも15年はかかります。それまではさらに減少し続ける一方なのです。生産を疎かにしてきた結果がこうなっています。
逆に定期利用者がある程度確保され、鉄道として存続が可能な領域であれば、「鉄道ルネサンス構想」も検討する必要もないのです。地方では過疎化が進む一方、報道の映像を確認した限りでは、沼田町は通学利用者もある程度確認できました。一方で鉄道路線を存続していくようなレベルの輸送状況ではなく、鉄道を維持していくための資金を自治体も拠出することができません。
これまで廃止されてきた路線や区間は、この流れで鉄道は役目を終え、バス転換という流れになっています。
今回もそうした曖昧な立ち位置に立たされている沼田町だからこそ出た案だと思います。
最後に管理者の見解としては、道民のための「鉄道ルネサンス構想」というよりは、北海道観光の一手段としての役割の方が大いに期待できると思います。道民における鉄道利用増進という目的で展開していくのであれば、やはり根本的に人口を増やして定期的な利用者を獲得していくほかないです。
上記で公共交通の利用増進まで15年経過すると記載しました。ですが、移住者獲得となれば、15年も必要ありません。あとは住みやすい政策、住んでもらえる体制を各自治体が整備していくだけです。
案としてはとても面白いので、コロナがある程度終息したら、料金次第でこの年パスを購入し、鉄道の旅を存分に楽しみたいです。
↓ブログランキングにご協力お願いします↓

にほんブログ村

- 関連記事
-
-
【コラム】振り子と車体傾斜 2023/02/25
-
【コラム】沼田町が提案する「鉄道ルネサンス構想」 2023/01/12
-
【コラム】JR北海道の車両のデザイン 2022/10/30
-