【コラム】利用状況を巡って存廃問題が再燃している函館本線山線
コラム - 2023年09月18日 (月)
昨年3月までに沿線自治体から存続することは難しいとして既に廃止が決定している函館本線山線(小樽〜長万部間)。昨今再び存廃問題が再燃していることはご存知でしょうか?
なぜかというと、SNSで余市駅の利用状況が紹介されているのです。朝は3両編成の普通列車が満杯になり、それ以外の時間帯の列車も全てではないにしても駅ホームに行列ができるほど利用者がいるというものです。
大量輸送こそ鉄道としての使命です。これまで廃止されてきた路線や区間をみると、残念ながら小規模な輸送に留まり、残念ながら大量輸送で威力を発揮する鉄道は、既に鉄道としての使命を終えていたのです。
例えば、紹介されている内容が事実であれば、仮に廃止されたとして路線バス1台で輸送することは無理です。紹介内容の範囲では、鉄道は必要とされるべきと言えるでしょう。
加えて、この問題の発端となった出来事が、実は同区間を廃止に持っていったのはいいものの、代替手段となるバスの人員の確保が見込めず、現時点で廃止後が不透明な状況になっているのです。廃止後の代替手段がわからない以上、当然鉄オタというのは騒ぐわけで、それで存廃問題が再燃しているのです。
結論から言うと、金があれば代替手段を考慮する必要がなく、この問題は秒で解決できるでしょう。しかし、その金、いわゆる財源が拠出できないから鉄道路線を廃止し、バス転換せざるを得ないのです。
この函館本線山線は、2030年以降、北海道新幹線札幌延伸に伴い、並行在来線としてJR北海道から経営分離される区間です。当初は沿線自治体を中心とした第三セクターへの転換が予定されていましたが、財源拠出の見通しが立たない等を理由として廃止を選択しました。
新幹線開業で並行在来線が廃止されるケースは、1997年に北陸新幹線が長野駅まで部分開業した際、信越本線の横川〜軽井沢間が廃止になったぐらいで、これ以降は第三セクターへの転換等で生き残っています。
小樽~余市間を鉄道として存続する場合、最初の30年で赤字額は206億円、バス転換の場合は18億円とされています。
SNS等の媒体で実際に利用者が多い列車もあるということは我々は把握しました。ただし、余市駅しか焦点が当てておらず、実際に函館本線山線全てを存続させたいのか、小樽〜余市間だけを存続させたいのかもわかりません。また、問題はそこからで・・・
①これだけ利用者が多いのに、なぜ赤字なのか?
②どの時間帯、どの列車も混雑しているのか?
③余市駅だけでなく、塩谷駅や蘭島駅の利用実態はどうなのか?
色々とツッコミたくなるわけですが、まず目先の利用状況だけ報告されても意味ないわけで、大事なのは存続を目指すのであれば、それに向けて考えを出してもらわないと意味がないわけです。
管理者としては、方向性は違うにしても、過去の事例から2つほど函館本線山線の存続へ向けての可能性を提示したいと思います。
【その1:クラウドファンディング】
これは北海道で花咲線(釧路〜根室間)で実施しました。地球探索鉄道花咲線プロジェクトとして、2020年度に5000万円以上、それ以降も寄付を継続し、1300万円以上の支援がありました。それ以前に2018年度にも根室市が3億円以上、2万人以上の方から寄付されており、沿線自治体とともに維持存続の活動を行なっています。
この活動を実施する背景としては、やはり沿線人口の過疎化によって利用者が減少していることです。現在までに花咲線の区間において、利用僅少な駅の廃止も進めました。それでも数字的に依然として苦しい状況が続いていますが、JR北海道が輸送密度200人以上2,000人未満の線区における調査・実証事業の1つとして、9月30日まで一部列車で指定席を導入し、さらに車両は北海道の恵みシリーズや球探索鉄道花咲線ラッピングトレインといった車両で運行します。
そして、一部列車では花咲線の見どころでもある車窓からの眺めを楽しんでもらうために、一部区間において減速運転を実施したりと、不採算路線でありながら、路線を維持存続に向けた活動は活発です。クラウドファンディングでの支援で花咲線のPR活動費として主に拠出し、ラッピング列車の運行にも力を注いでいます。H100形にもラッピング車が登場していますが、今のところ、定期列車として同線で使用されていません。
お金、財源が拠出できないのであれば、クラウドファンディングなどで支援を募るという方法もあります。そこでネットやSNSでの発信内容を世間に評価してもらうのもいいでしょう。ただし、花咲線とは違い、路線を維持するための財源として直接使用するには莫大な支援は必須であり、すぐに支援が尽きてしまいます。だからといってこれを何度も何度も実施していては、ただただ支援者から支援という名で金をむしり取っているようなものですから、複数回にわたって何度も何度も実施することはできません。
【その2:西九州新幹線開業に伴う並行在来線の事例】
開業からまもなく1年を迎える西九州新幹線。長崎本線の一部区間では運行体系に大きな変化がありました。並行在来線となる長崎本線では、経営分離等はされず、JR九州は江北〜諫早間において、第二種鉄道事業者として上下分離方式で営業を行なっています。
ただし、JR九州による並行在来線の運行は、新幹線開業後の20年間とし、21年目以降については、再び佐賀県、長崎県、JR九州による三者協議を実施します。また、博多〜肥前鹿島間において、一部列車を除いて特急「かささぎ」が設定されていますが、運行開始から3年は本数を維持しますが、それ以降は利用状況に合わせて本数を見直していきます。
このように、JR九州の手から完全に離れてはいないものの、将来性を見越して期間を設け、列車についてもそれに応じて見直していくというルールを設けているのです。
従来は特急「かもめ」として運行されていましたが、特急列車が存続したとはいえ、本数は維持されず、利用が見込める時間帯において維持した形となりました。こうしてみると、特急「かもめ」も利用者のメインは博多から佐賀あるいは長崎であり、途中の肥前鹿島は停車はするものの、多くの利用者にとってはあくまで通過点に過ぎない状況が伺えます。
管理者は、この肥前鹿島が余市と印象が似ていると思います。おそらく余市も新幹線建設ルートに入ったいた場合、駅が設置されていたでしょう。そして、小樽を江北とした場合、やはり近距離にある余市をどうするか?という話になってきます。
函館本線山線の全てを残すことは難しく、理由は倶知安駅の従来の在来線ホームの場所に新幹線の高架が新たに設けられ、この関係で在来線が残存したままだと工事の支障になってしまい、駅前の再開発の進ちょくに影響が出る場合があるからです。
そのため、廃止時期を北海道新幹線の札幌延伸時に合わせるのではなく、前倒し検討を行っていることについて、過去に記事で記載しました。現在どのような方向で話が進められているのかは不明ですが、いずれにしても倶知安駅まで残すことは難しく、少なくとも小樽側で利用が見込めると現時点で判断でき、小樽〜倶知安間における次の拠点といえば余市しかありません。
なので管理者としても、函館本線山線を残す場合、小樽〜余市間のみを存続するのが妥当だと考えています。
ただし、長崎本線の江北〜諫早間のように、上下分離方式とするなど、JRだけに維持管理を負担する必要はなく、小樽市、余市町、JR北海道で三者協議を行う必要があります。
また、途中の塩谷駅にしても蘭島駅にしても交換設備を有しています。仮に余市駅まで残した場合、距離に対しての交換設備が過剰であり、どちらの駅か、またどちらも棒線化して現在の留萌本線や日高本線のように原則1つの列車しか運行できなくするか、存続を選ぶのであれば、そうしたランニングコストを削減したり、運行上の制約は必須になるでしょう。
やはり、鉄道が好きだから等の理由で鉄道を残すという選択肢はダメで、管理者も鉄道が好きですが、あくまで日頃の利用者が優先であり、管理者としても函館本線山線が廃止されるからといって、廃止されることは自体は残念ですが、日常生活への支障はゼロであり、財源が拠出できず維持することが難しいのであれば廃止にするしかありません。こうした冷静な判断力を失うことなく、ブログ等でも発信していきたいです。
稀に災害時における代替ルートの話もこの函館本線山線と廃止が決まっている根室本線の一部区間で出てきますが、2000年の有珠山噴火時の迂回貨物にしても、全体の1割、2割程度の輸送で済みました。あれから20年以上が経過し、トラックドライバー不足などの問題はありますが、2018年の北海道胆振東部地震においても、物資輸送において深刻な事態には陥らなかったので、管理者としては代替ルートの必要性については特にありません。あくまで万が一に過ぎないのです。
あとは、このまま廃止されるのか、廃止が撤回されるのか不明ですが、一番重要なのは日頃の鉄道利用者であり、それが仮に廃止されても極力利便を確保することです。これを忘れず第一に引き続き話を進めてほしいと思います。

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なぜかというと、SNSで余市駅の利用状況が紹介されているのです。朝は3両編成の普通列車が満杯になり、それ以外の時間帯の列車も全てではないにしても駅ホームに行列ができるほど利用者がいるというものです。
大量輸送こそ鉄道としての使命です。これまで廃止されてきた路線や区間をみると、残念ながら小規模な輸送に留まり、残念ながら大量輸送で威力を発揮する鉄道は、既に鉄道としての使命を終えていたのです。
例えば、紹介されている内容が事実であれば、仮に廃止されたとして路線バス1台で輸送することは無理です。紹介内容の範囲では、鉄道は必要とされるべきと言えるでしょう。
加えて、この問題の発端となった出来事が、実は同区間を廃止に持っていったのはいいものの、代替手段となるバスの人員の確保が見込めず、現時点で廃止後が不透明な状況になっているのです。廃止後の代替手段がわからない以上、当然鉄オタというのは騒ぐわけで、それで存廃問題が再燃しているのです。
結論から言うと、金があれば代替手段を考慮する必要がなく、この問題は秒で解決できるでしょう。しかし、その金、いわゆる財源が拠出できないから鉄道路線を廃止し、バス転換せざるを得ないのです。
この函館本線山線は、2030年以降、北海道新幹線札幌延伸に伴い、並行在来線としてJR北海道から経営分離される区間です。当初は沿線自治体を中心とした第三セクターへの転換が予定されていましたが、財源拠出の見通しが立たない等を理由として廃止を選択しました。
新幹線開業で並行在来線が廃止されるケースは、1997年に北陸新幹線が長野駅まで部分開業した際、信越本線の横川〜軽井沢間が廃止になったぐらいで、これ以降は第三セクターへの転換等で生き残っています。
小樽~余市間を鉄道として存続する場合、最初の30年で赤字額は206億円、バス転換の場合は18億円とされています。
SNS等の媒体で実際に利用者が多い列車もあるということは我々は把握しました。ただし、余市駅しか焦点が当てておらず、実際に函館本線山線全てを存続させたいのか、小樽〜余市間だけを存続させたいのかもわかりません。また、問題はそこからで・・・
①これだけ利用者が多いのに、なぜ赤字なのか?
②どの時間帯、どの列車も混雑しているのか?
③余市駅だけでなく、塩谷駅や蘭島駅の利用実態はどうなのか?
色々とツッコミたくなるわけですが、まず目先の利用状況だけ報告されても意味ないわけで、大事なのは存続を目指すのであれば、それに向けて考えを出してもらわないと意味がないわけです。
管理者としては、方向性は違うにしても、過去の事例から2つほど函館本線山線の存続へ向けての可能性を提示したいと思います。
【その1:クラウドファンディング】
これは北海道で花咲線(釧路〜根室間)で実施しました。地球探索鉄道花咲線プロジェクトとして、2020年度に5000万円以上、それ以降も寄付を継続し、1300万円以上の支援がありました。それ以前に2018年度にも根室市が3億円以上、2万人以上の方から寄付されており、沿線自治体とともに維持存続の活動を行なっています。
この活動を実施する背景としては、やはり沿線人口の過疎化によって利用者が減少していることです。現在までに花咲線の区間において、利用僅少な駅の廃止も進めました。それでも数字的に依然として苦しい状況が続いていますが、JR北海道が輸送密度200人以上2,000人未満の線区における調査・実証事業の1つとして、9月30日まで一部列車で指定席を導入し、さらに車両は北海道の恵みシリーズや球探索鉄道花咲線ラッピングトレインといった車両で運行します。
そして、一部列車では花咲線の見どころでもある車窓からの眺めを楽しんでもらうために、一部区間において減速運転を実施したりと、不採算路線でありながら、路線を維持存続に向けた活動は活発です。クラウドファンディングでの支援で花咲線のPR活動費として主に拠出し、ラッピング列車の運行にも力を注いでいます。H100形にもラッピング車が登場していますが、今のところ、定期列車として同線で使用されていません。
お金、財源が拠出できないのであれば、クラウドファンディングなどで支援を募るという方法もあります。そこでネットやSNSでの発信内容を世間に評価してもらうのもいいでしょう。ただし、花咲線とは違い、路線を維持するための財源として直接使用するには莫大な支援は必須であり、すぐに支援が尽きてしまいます。だからといってこれを何度も何度も実施していては、ただただ支援者から支援という名で金をむしり取っているようなものですから、複数回にわたって何度も何度も実施することはできません。
【その2:西九州新幹線開業に伴う並行在来線の事例】
開業からまもなく1年を迎える西九州新幹線。長崎本線の一部区間では運行体系に大きな変化がありました。並行在来線となる長崎本線では、経営分離等はされず、JR九州は江北〜諫早間において、第二種鉄道事業者として上下分離方式で営業を行なっています。
ただし、JR九州による並行在来線の運行は、新幹線開業後の20年間とし、21年目以降については、再び佐賀県、長崎県、JR九州による三者協議を実施します。また、博多〜肥前鹿島間において、一部列車を除いて特急「かささぎ」が設定されていますが、運行開始から3年は本数を維持しますが、それ以降は利用状況に合わせて本数を見直していきます。
このように、JR九州の手から完全に離れてはいないものの、将来性を見越して期間を設け、列車についてもそれに応じて見直していくというルールを設けているのです。
従来は特急「かもめ」として運行されていましたが、特急列車が存続したとはいえ、本数は維持されず、利用が見込める時間帯において維持した形となりました。こうしてみると、特急「かもめ」も利用者のメインは博多から佐賀あるいは長崎であり、途中の肥前鹿島は停車はするものの、多くの利用者にとってはあくまで通過点に過ぎない状況が伺えます。
管理者は、この肥前鹿島が余市と印象が似ていると思います。おそらく余市も新幹線建設ルートに入ったいた場合、駅が設置されていたでしょう。そして、小樽を江北とした場合、やはり近距離にある余市をどうするか?という話になってきます。
函館本線山線の全てを残すことは難しく、理由は倶知安駅の従来の在来線ホームの場所に新幹線の高架が新たに設けられ、この関係で在来線が残存したままだと工事の支障になってしまい、駅前の再開発の進ちょくに影響が出る場合があるからです。
そのため、廃止時期を北海道新幹線の札幌延伸時に合わせるのではなく、前倒し検討を行っていることについて、過去に記事で記載しました。現在どのような方向で話が進められているのかは不明ですが、いずれにしても倶知安駅まで残すことは難しく、少なくとも小樽側で利用が見込めると現時点で判断でき、小樽〜倶知安間における次の拠点といえば余市しかありません。
なので管理者としても、函館本線山線を残す場合、小樽〜余市間のみを存続するのが妥当だと考えています。
ただし、長崎本線の江北〜諫早間のように、上下分離方式とするなど、JRだけに維持管理を負担する必要はなく、小樽市、余市町、JR北海道で三者協議を行う必要があります。
また、途中の塩谷駅にしても蘭島駅にしても交換設備を有しています。仮に余市駅まで残した場合、距離に対しての交換設備が過剰であり、どちらの駅か、またどちらも棒線化して現在の留萌本線や日高本線のように原則1つの列車しか運行できなくするか、存続を選ぶのであれば、そうしたランニングコストを削減したり、運行上の制約は必須になるでしょう。
やはり、鉄道が好きだから等の理由で鉄道を残すという選択肢はダメで、管理者も鉄道が好きですが、あくまで日頃の利用者が優先であり、管理者としても函館本線山線が廃止されるからといって、廃止されることは自体は残念ですが、日常生活への支障はゼロであり、財源が拠出できず維持することが難しいのであれば廃止にするしかありません。こうした冷静な判断力を失うことなく、ブログ等でも発信していきたいです。
稀に災害時における代替ルートの話もこの函館本線山線と廃止が決まっている根室本線の一部区間で出てきますが、2000年の有珠山噴火時の迂回貨物にしても、全体の1割、2割程度の輸送で済みました。あれから20年以上が経過し、トラックドライバー不足などの問題はありますが、2018年の北海道胆振東部地震においても、物資輸送において深刻な事態には陥らなかったので、管理者としては代替ルートの必要性については特にありません。あくまで万が一に過ぎないのです。
あとは、このまま廃止されるのか、廃止が撤回されるのか不明ですが、一番重要なのは日頃の鉄道利用者であり、それが仮に廃止されても極力利便を確保することです。これを忘れず第一に引き続き話を進めてほしいと思います。

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